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言葉は、たった1人に刺さればいいのである。

「誰かの代わりに、ラブレターを書く仕事をしませんか?」

そんな求人があったら、思わず応募したくなるだろうか。そう思える方は、コピーライターに向いているのかもしれない。夏休みの終わりに読みたくなるような、ミステリー小説でも始まってしまいそうなタイトルだけど、本日の話題は極めてリアル。ビジネス現場からのお話。

僕はギフトという会社の代表で、ブランディングディレクター/コピーライターをさせてもらっている。ひらたく言うと、ブランドを形(言葉)にして、届けていく、まさに誰かの代わりにラブレターを書くような仕事。

今日はそんな自分が経験からつい呟きたくなった「ブランディングにおいて大事な考え方」兼「コピーライターにおいて大事な考え方」を雑記のようにまとめた。

テーマは、
「言葉は、たった1人に刺さればいいのである。」
とさせてもらっているけれど、むしろ1人にすら届かない言葉には1ミリの価値も無い。という逆説でもある話。おーこわ。となるかもしれないけれど、結構大事な話だと思う。


実は1人に刺されば、100人に刺さる。

僕は企画を考える時、提案書をつくる時、言葉を考える時、なるべくたった一人を思い浮かべ、その人に刺さればと思って考えるようにしている。

特に提案書なんかは、プレゼンする相手が明確なのでイメージをしやすい。コピーを書くときもそうで、「相手は知り合いのあの人」くらいに具体的にイメージできるまで絞り込んで考えるイメージ。

よく、若手のコピーライターに話をする。100人いたとして、全員に向けて「みんなー、大好き!」と言っても誰も振り向かないよね。1人に向けて「そこのあなた!あなたのことが大好きです」と言ったほうが振り向くのは間違いない。

どちらがいいかと聞かれたら誰でもわかる。取るに足らない話のように聞こえるけれど、仕事となると、100人への話しかけをやっている人がほんとに多い。

たとえば、ターゲットを「30代女性」とかゆるく設定して、なんとなくありそうなライフスタイルをペルソナに設定したりすると、どこかで聞いたことのあるような、雑誌に出てきそうな汎用的人物像が出来上がる。けれど、現実にそんな人は居ませんでしたというオチ。

そうなると、メッセージの話しかけがどうしても「みんなー!」になってしまう。結果、当然誰にも届くことはない。これではウンウン唸ってひねり出された挙げ句、日の目を見ることがなかった言葉たちも成仏できないというものだ。

逆に、顔が浮かぶほどターゲットが鮮明になればなるほど、メッセージの話しかけは「そこのあなた!」になる。そうなると、たった1人の心を刺しにいった言葉が、結果100人の心を捉えたりするから不思議なものだ。これは、実感値だけど、結構正しい感覚だと思っている。

ちなみに、ブランドのメッセージを考えるときも、この視点は大切。みんなに愛されようとした下心は見透かされ(というか見向きもされず)、たとえ少しばかりの流行に乗っかって小銭を生み出したとしても、歴史の1ページには残ることもなく、記憶からも記録からも消え去っていくことだろう。

合掌。


キャッチボールのつもりで、コミュニケーションしているか。

さて、考えてもみれば人間はコミュニケーションをする時、いつも自分と眼の前に人が居る。対面じゃなく、メッセージや電話だとしてもやっぱりその先端と先端には人が居る。お互いの人格を意識し、思いやりあう中で生まれるのがキャッチボール。

人は「キャッチボール」が前提の生き物なのに、仕事の現場になったら、なぜ急にストラックアウトになってしまうのだろうか。コミュニケーションは響いた!響かなかった!の的当てゲームじゃないんだ。

僕は誰かに何かを届けようと思う時の基本は1対1だと思っている。その相対する人のことがまだわからないから、もっと知りたい。何が嬉しいのか、何が悲しいと感じる人なのかを考えて、伝わることを決めていきたい。その思考に時間を使うことは、とても価値があることだ。

けれど、どうやって伝えようかな。どの言葉選びがいいのかな。ここばかりを考えているうちは、言葉遊びをしているだけで、届くことは永遠にない。

なので、コピーライターになりたい人たちによく言うのは「人に興味を持ちましょう」なのだ。

たまに、「人の気持ちは全然気にしません」「内省大好き、自己完結人間です」といったタイプの人がコピーライターを志望してくるという不可解な現象が起きることがある。しかしその場合は、その人が志望しているのはコピーライターではないと思うことにしている。

「文章を書くのが好き、もしくは得意」で「しゃべることがあまり好きじゃない」
から、書いて食っていくことを仕事にしたい、程度の話なのでは?と。そういうことであれば、自分の考えていることを発信する物書きで食べていく職もいくらでもあるので、そちらをおすすめしている。

コピーライターは、誰かの代わりに、誰かに向けてラブレターを書く仕事なのだから、人の想いに至ることが、すべてのスタートとなる仕事なのだ。

逆に、自分は文章が上手くないと自覚している人はたくさんいるが、そういう人に限って、とてもコピーライターに向いているよ、と声をかけてしまうことも珍しくない。SNSを見ていても、この人は向いているな、と思うことはよくあることだ。

なにもコピーライターになれよと焚きつけたいわけではないが、その相手視点があれば、どんな仕事もだいたいうまくいくよ、といった褒め言葉の意味で使うことが多い。

なので、僕が「コピーライターに向いているよ」と言う時は「仕事ができるね」と同義ということで、シンプルに喜んでもらえるとうれしい(笑)。

というわけで、どえらい長い前置きの末に結局求人かよというツッコミが聞こえてきそうですが、、、
・人の想いに心を寄せて
・その人の代わりにラブレターを書く仕事
なんですが、文章が書ける人も、書けない人も。
興味のある方はご一報ください!

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