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スタートアップ企業のマネージャー1年目の歩き方

ITスタートアップに転職し、デザインマネージャーになり1年ちょっとが過ぎました。

試行錯誤しながら自分のマネジメント指針のようなものがぼんやり見えてきたので、言語化しておこうと思います。

いざマネージャーの任を受けたものの「何したらいいのか」見当がつかずお悩みの方や、これからマネジメントスキルを身につけようと考えている方の一助になると幸いです。

所属する組織の業態やカルチャーによってマネージャーに求められることは異なるかも知れませんが、概ねベースは一致しているのではと思います。

ちなみにチーム構成は下記です。

マネージャー 1人(私)
デザイナー 4人
映像クリエイター 1人

マネジメントは別の職能

マネジメント研修を受けて、初日に認識を変えたのが「マネジメントはプレーヤーとして成果を上げた職能の延長線上にはなく、全く別の職能である」ということ。

「セールスとエンジニア」くらいに別の職能・スキルだと説明を受けて、実際に1年ちょっとマネジメントを行ってきた今もそう思います。

まず意識を変える。そして、今まで鍛錬を重ねてきたスキルのように「新たにマネジメントというスキルを学ぶ。マネジメントはスキルなので身につけられる」という認識をすることが何よりも先ず重要でした。

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「人を動かし成果をあげる」がマネージャーの役割

マネージャーの仕事と聞いて「勤怠管理」や「工数管理」など管理することを思い浮かべるかもしれませんが、それらは主務ではなく「人を動かし成果をあげること」がマネージャーに求められている役割だと考えています。そのために色んなコトを管理するイメージです。

ちなみに、manageを辞書で引くと「管理する」よりも先に「なんとかする」といった意味が出てくるかと思います。

「人を動かし成果をあげる」という目的意識を持ったことで、本当に優先して時間をかけなければいけないことが見えてきました。

この1年を経て特に優先順位が高いと感じた、スタートアップ企業のマネージャーがやるべきことは下記の5点です。

①チームとして「やること・やらないこと」を決める(戦略)

②チームの生産性を最大化する配員

③メンバーのパフォーマンスを底上げする型作り・仕組み化

④メンバーをモチベートする「目的・期待値・フィードバック」

⑤意思決定する覚悟を持つ

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チームとして「やること・やらないこと」を決める(戦略)

プレーヤーであるときとマネージャーであるときとの役割で、いちばん大きな違いがこの点だと感じています。

チームとして「やること・やらないこと」を決める。すなわち戦略です。

1プレーヤーであっても、自身のリソースを何に優先して使えば事業の成長に貢献できるのかを考える必要は大いにありますが、マネージャーの場合はその責任範囲がチーム全体に広がります。

たとえば、SaaS企業のデザインチームのマネジメントをしているとして、メンバー3人のリソースをすべて「営業資料づくり」に投じているとします。理由は各商品のセールスチームから「商談に必要で、なる早でほしい」という依頼が定常的にあるから。

もちろん、営業資料をわかりやすくして商品のバリューを十二分にプレゼンで伝えられるようにすることは成約数を伸ばす上で重要な要素のひとつです。

しかし、事業のファネル全体を見渡したとき、そもそも商談の数が少ないことが成約数のボトルネックだとしたら、本来はリードを獲得するためのWeb広告バナー作成やランディングページ作成に1人ずつ配員したほうが事業全体で成長の可能性が高まるかもしれません。

チャーンレートが高く、その原因の1つにサービスの使いにくさがあるのならUXUI改善を行って使いやすさを向上した方が効果的かもしれません。

上記のように、事業全体でどこにどのくらいチームのリソースを投じれば、リターンを最大化できるのか、いちばんレバレッジが効くのかを考えてプロアクティブに配員を行うことが「人を動かし成果をあげる」ために一番重要とも言えるマネージャーの仕事だと考えています。

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チームの生産性を最大化する配員

次いで重要なのが配員です。

「やること・やらないこと」を決めて「どこに何人分リソースを投じたいか」まで計画をしても、実際にその業務を期待値レベルで遂行できるようにメンバーを的確に配員しなければ戦略は機能しません。

この項は「ひとくちに同じ職能のメンバーでも、得意なこと不得意なことは十人十色であることを忘れてはいけない」という自戒でもあります。

前項で挙げた例をベースにすると、

Aさん: Web広告バナー作成
Bさん: LP作成

という配員を行うこともできますが、メンバー2人が経験もスキルも十分な中堅デザイナーであれば

Aさん: Web広告バナー作成 〜 LP作成
Bさん: Web広告バナー作成 〜 LP作成

という配員で取り組んだ方が、各広告で訴求したい内容などのインプットコストが下がり、目的にあったアウトプットをよりスピーディーに行うことができるかもしれません。

あるいは、Aさんが情報設計・構成が得意な中堅デザイナー、Bさんがスタイリングスキルが高いデザイナーだとしたら

Aさん:  Web広告バナーとLPの情報設計・構成
Bさん:  Web広告バナーとLPのスタイリング

という配員にして、最終アウトプットのクオリティとスピードを最適化できるかもしれません。

もちろん、スキルベースで考えた際に配員のパズルが組み合わさらない場合、足りないピースをマネージャー自らがプレーヤーとして補うという手段もあります。

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メンバーのパフォーマンスを底上げする型作り・仕組み化

適切な配員によってチームレベルで生産性を最大化した上で、メンバーのパフォーマンスを高めるために必要なことが「型作り・仕組み化」

具体的には、ルーティーン系業務の雛形やフォーマットづくり、場合によってはSaaSの導入やアウトソースなどが挙げられます。

実際に私がチームと一緒にやったこと・取り組んでいることの例が下記です。

・デザイン依頼時のテンプレート作成でヒアリングコミュニケーションコスト削減

・デザインプロセス(ヒアリング→構成→スタイリング)の構築と実行で出戻りコストの削減

・デザインデータチェック項目のリスト作成で確認作業の効率化&リスク削減

・広告バナーやセミナーアイキャッチ画像の雛形作成で効率化

・資料や広告などのグラフィックデザインのガイドライン策定で効率化&ベースクオリティの担保→広告バナー作成のアウトソースも可能に

・UIデザインガイドラインの策定でデザインと開発効率向上

などなど

「型や仕組み」があることで、業務を0からスタートする必要がなくなり、その分スピードアップが期待できます。

それだけでなく、その業務において課題の「より本質的なこと」を考えたり、細かな部分まで気を回すことができるなど「業務の質の向上」も期待できます。

裏を返せば、その「型や仕組み」をつくり実行することによって「スピードと質」どちらも向上するのか?を、考える必要があります。

そして、もちろんその「型や仕組み」は使われるほどにトータルで受けられる恩恵が大きくなっていくので「どのくらいの頻度でその業務が行われるか?」も必須で考慮すべき点になります。

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メンバーをモチベートする「目的・期待値・フィードバック」

どれだけ戦略を考え、仕組み作りをしても「人が動かなければ」ないも同然。最後は人です。

そこで重要になってくるのがメンバーとのコミュニケーション。

たとえば下記のようなコミュニケーションはNGケースだと考えています。

 NGケース
・依頼したい仕事の作業内容だけ伝える
・アウトプットや結果に対してOKかどうかだけ伝える
・これをこうしてほしいという指示だけを伝える

なぜNGなのかというと、上記のコミュニケーションではその仕事において「メンバーの視野を狭め、指示待ちの状況」を作り出してしまうから。それは、チームとしてスピード低下とメンバーの成長ストップにつながります。

また、「期待値」の設定・すり合わせが行われていないと「マネージャーが期待している業務範囲」と「メンバーが認識している自分の業務範囲」にギャップが生まれて、いつまでも仕事が完遂されず、モチベーション低下も招きます。

メンバーをモチベートし、スピード感とオーナーシップをもって業務に取り組んでもらうために、コミュニケーションで意識しなければならないポイントが下記です。

Goodケース
・依頼したい仕事がなぜ必要なのか(目的)と、どんな状態がゴールなのか(期待値)を伝える
・アウトプットや結果が期待値に達しているのかどうか、達していない場合どこにどのくらいのギャップがあるのか伝える(フィードバック)

よく話に挙げられる、レンガ積みの仕事で2種類のコミュニケーションを例えると下記のようなイメージだと思います。

NG例
・ここにレンガを積んでくださいと依頼する
・積み上がったレンガがNGとだけ伝える
・きれいに積み直してほしいと指示を出す

Good例
・村に新たな住人を誘致するために、魅力的で頑丈な家をつくりたい(目的)。そのためにレンガを隙間なく(期待値)積んでほしいと依頼する。
・積み上がったレンガに2箇所隙間があったためNGと伝える(フィードバック)
・隙間がなくなるよう該当箇所を積み直してほしいと指示を出す

Good例のように「目的」をしっかりと伝えることのメリットは何よりもメンバーがオーナーシップを持ちやすくなる(自分ごと化しやすくなる)点。

オーナーシップを持つことで「魅力的で頑丈な家」を作るためには、隙間なくレンガを積むだけでなく「目立つ場所には表面のキレイなレンガを選ぼう」や「隙間を埋めるセメントは、はみ出さないように盛ろう」など、依頼した内容以上に目的を達成するために効果的であろう工夫や配慮などをメンバー自身で考え判断し、実行できます。

粒度の大きなメインタスク以外に考慮したいすべての項目をあらかじめ予想し、伝えようとするには長い調査・準備の時間を要します。マネージャーがそれを行うことはキャパシティとスピードの観点で現実的ではありません。

複数メンバーに対して、こと細かな部分までの指示出し(マイクロマネジメント)を行っていては、マネージャー自身の時間のキャパシティが業務を推進する上でボトルネックとなってしまいます。

複数メンバー、すなわちチームを動かし成果をあげるために「目的・期待値・フィードバック」は必須のコミュニケーション要素だと考えています。

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意思決定する覚悟を持つ

今まで上げてきた内容すべてには「意思決定」が伴います。

そして、その意思決定を行うのはマネージャーの重要な役割です。

とくにスタートアップ企業は、市場から成長スピードを求められるため、事業や組織が目まぐるしく変化していき、ほぼ毎日くらいの頻度で意思決定が必要な場面が訪れます。

そういった中、戦略や配員の意思決定をしないままでいると、事業や会社全体の成長機会を損失し、チーム全体でアンハッピーになる可能性もあります。意思決定を行わないことがリスクなのです。

意思決定の際は、その判断で後にどのようなことが起こるのか、メリットデメリットとその大きさを可能な限り挙げて検討しますが、それでも判断が難しい事象も多々発生します。

そういった事象は、どんな情報があれば決められるのか。決めるための判断材料を伝えて用意してもらう。といったアクションで、決めないまま先延ばしにせず意思決定につなげていくことが重要です。

自分のチームの意思決定を他者に委ねずに、覚悟を持って意思決定を行い「人を動かし成果をあげる」

マネージャーの役割の中でコアとなる要素です。

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まとめ

私が現在、マネジメントを行なっていく上で重要だと感じ、意識している5点。

①チームとして「やること・やらないこと」を決める(戦略)

②チームの生産性を最大化する配員

③メンバーのパフォーマンスを底上げする型作り・仕組み化

④メンバーをモチベートする「目的・期待値・フィードバック」

⑤意思決定する覚悟を持つ

抽象度が高く書ききれなかった項目や要素は、今後、別の記事で言語化していこうと思います。




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