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最果て、野付半島(道東4)

根室3日目

根室から90km、車で1時間半かけて野付半島に到着した。
地図で見ると目と鼻の先なのに、実際は距離がある北海道。

かねてから訪れてみたかった野付半島。

野付半島は、根室半島と知床半島の間に位置する半島である。
砂が嘴(くちばし)のような形状に堆積した「砂嘴(さし)」という地形である。

「手首を曲げて〜!砂嘴〜!」

地図上右端に映る陸地は、北方領土・国後島である。
国後島と野付半島の間の根室海峡は荒れやすい。

ね。ご覧の通り。

対して、写真右の海は、砂嘴に守られているため、つまらないほど穏やかである。

くちばしの真ん中に、野付半島ネイチャーセンターという、半島内の自然を紹介する施設がある。
そちらのガイドツアーに申し込み、野付を案内していただいた。

餅は餅屋。

ガイドさんに連れられ、車に乗り込む。

「あ、鹿がいますね」と、ガイドさん。

え、どこ...?

辺りを見回すと、真下でエゾシカが平然とした顔で座っていた。

どうしてこんな最果てに住もうと思ったのか。
「そんなこと知ったこっちゃないっすよ」って顔でこちらを見ていた。
(どうせなら奈良とかに住めばいいのに)

その後も次々にエゾシカや、野生動物を発見していくガイドさん。
細かい名称も空で出てくる。

我々は舌を巻いた。

荒波の向こうに国後島。
今にも手が届きそうだ。
この半島は、本土で最も島に近い場所らしい。

四島出身の方が、今でもこの近辺にお住まいだそうだ。

「あそこ、カモメがいますよ」

オオセグロカモメとシロカモメの群れだ。
まるで信号が青になったかのように、一斉に飛び立った。

根室海峡を越え、国後島方面へも自由に飛んでいく。

彼らにとって、ヒトの引いた「境界」など関係ない。
しかし、彼らには彼らなりの秩序があるようだ。

見えるだろうか、オジロワシ。
同行人のTが個人的に思い入れのある野鳥なようだ。

この近辺は今も昔も船舶が通過するため、灯台とお地蔵さんがいる。

現在でも漁業の基地となっているため、作業小屋やボート、その関連の廃品が転がっている。

ハクチョウも束の間の休憩。

オオワシだ。

半島の先端までやってきた。

向こうに鵜(う)やワシがいるようだったが、望遠が効かないためカメラには収められなかった。

かつてこのあたりに、野付運行屋という海運の施設が置かれていたらしい。
遺構も発掘されているようだ。

根室周辺は千島航路の中継地、内海を持った野付半島も例にもれなかったのだろう。

ただし驚くほど平ら。障害物がない。

風が常に吹き付ける。
冬は内海が凍る。

人の居住には適さない地域なのだろう。

ツアーを終え、半島をあとにする。
海の時化模様が悪くなっており、このままだと物理的に道路が塞がれてしまうとのこと。

うわ...。

我々が通過した直後、半島への道路が通行禁止となった。

これが、「最果て」である。

日本のイデオロギーの周縁部、
人間の秩序の通用しない場所、
「最果て」は私たちを謙虚にしてくれた気がした。

まだこんな場所が残っててくれて良かった。

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