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読書:『最終戦争論』石原莞爾

①紹介

陸軍軍人の石原莞爾による『最終戦争論』(中公文庫BIBLIO20世紀、2001年)を紹介します。近い将来、世界規模の最終戦争が起こり、のちに恒久平和が訪れる。彼の思想は長年の戦争史研究と熱烈な日蓮信仰に基づき、太平洋を舞台に繰り広げられる日米両国の最終戦争を予見するものでした。

②考察

「戦争発達の極限に達するこの次の決戦戦争で戦争が無くなるのです」
➢ 「この」は第二次欧州戦争を指す。ちなみに本書の原版が世に出たのは1940年。石原が「次の戦争」と呼ぶのは太平洋戦争のことである。彼は第二次世界大戦を、原版の出版年を境に、各国の戦局を注視したうえで前半と後半とに分けて考察しているのだろう。それはさておき、今日の世界から戦争がなくならないのは、やはりアメリカの存在が大きいからか。

「日本を中心として世界に未曾有の大戦争が必ず起る。そのときに本化上行が再び世の中に出て来られ、本門の戒壇を日本国に建て、日本の国体を中心とする世界統一が実現するのだ」
➢ 石原はこれを日蓮が遺した重大な予言として紹介。どの国の為政者も軍人も戦争という差し迫った状況に直面すると、政治に宗教を持ち出して語りがちだ。そもそも本来、宗教的性格を異にするはずの仏教思想と国体とが何故こうも簡単に癒着してしまうのか。

「昭和維新の大目的を達成するために、この大きな時代の精神を一日も速やかに全日本国民と全東亜民族に了解させることが、私たちの最も大事な仕事であると確信するものであります」
➢ あまりの荒唐無稽ぶりに閉口せざるを得ない。この主張が日蓮信仰によるものならば尚更だ。日本国民が軍の決定に了解するほかなかったのはやむを得ないが、当時の銃後の戦争に対する考えや論理、そして軍拡と米軍迎撃を目的とした「大東亜共栄圏」については再考の余地が大きい。

③総合

日蓮が生きた鎌倉時代も、石原が生きた昭和も共に争いや災いの絶えない時代であった。国内外の情勢が不安定な現代にその後継者が現れる可能性は十分にある。否、すでに現れているだろう。ナショナリズム極まる世界でいかに生きていくかは自分の信念と行動次第だ。

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