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書評:『帝国主義』レーニン

①紹介

ロシアの革命家レーニンによる『帝国主義』(宇高基輔訳、岩波文庫、1956年)を紹介します。内容は、前回紹介したマルクスとエンゲルスの共著『共産党宣言』と概ね似ていますが、それを総論、本書を各論と捉えて読むと全体像が掴めるでしょう。

②考察

・「帝国主義はプロレタリアートの社会革命の前夜である」
→レーニンによれば、帝国主義は資本主義の発展形である。マルクスは、資本主義体制が自由競争→集積→独占という過程を経て成るものだと指摘し、レーニンは彼の理論に沿って、「独占」を帝国主義体制の礎と考えた。社会革命の効果は絶大だろうが、それが暴力を伴うものならば実行は容易ではない。後にM.ヴェーバーが言ったように、暴力は国家の独占物だから。

・「われわれの目の前にあるものは、(略)独占者による絞殺である」
→「絞殺」はレーニンにとって決して大袈裟な表現ではないだろう。資本家の「独占」によって生じる皺寄せを被るのはたいてい周縁の労働者で、実は私たち消費者は皮肉にも、その「絞殺」に間接的に加担している。だからと言って、その典型例であるファストファッションやファストフードにお金を落とすことは否定しないが、できるだけ欲に駆られずグッと抑えるときはしっかり抑える必要があろう。

・「搾取と大衆的殺害の資本主義世界に、諸民族の平和と友好のプロレタリア的世界を対置せよ!」
→『共産党宣言』の最後にもこれと似たような文言がある。表面だけ見ているとすぐに「プロレタリア=善、資本主義=悪」という二項対立の思考に陥ってしまうので、注意が要るだろう。確かに共産主義の方が希望に満ちているが、これについては歴史を通して学ばなければならず、もし必要性を訴えるならば本気で時間をかけて議論や考証に臨み、世代を超えて多くの者と話題を共有することが求められるに違いない。

③総合

帝国主義と聞くと戦争をイメージする人が少なくないが、気候変動や食糧不足、そして共同体の分裂が危惧される現代にも通ずる問題である。その恐ろしさは100年前にレーニンの手により証明されており、行動の取り方や態度が違うだけで、考え方はヴィーガンに似ているだろう。本書は『共産党宣言』と同じく、グローバリズムの危険性を告発し、読者に未来を託す警告の書に他ならない。

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