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「社会悪」が示す情報社会。『サンキュー・スモーキング』【映画紹介】

「シーシャ」というものについて、若干の興味がある今日この頃。
独特の体験ながらも、結局は喫煙行為。中毒になってしまわないか、というところで一歩引いているのが現状です。

「健康被害」のリスクを背負ってまでやるべきか。
最近でいえばサウナもそうですね。快感を唱える人がいる一方で、科学的に行為そのものを批判する人もいます。
これをどう判断すればいいか。

そんな話も関係するかもしれない社会派映画。
「社会悪」とされた煙草ロビイストが主人公の問題作。
『サンキュー・スモーキング』の紹介です。

※内容を紹介していますが、本編全体の大きなネタバレはありません。

画像はAmazonより引用

原題:Thank You for Smoking
公開:
2005年
製作国:
アメリカ
上映時間:
93分

煙草。
自分としては文字通り煙たがられているように感じる存在ですが、喫煙者は世の中にまだまだたくさんいらっしゃいます。
ルールさえ守ればあとは自由に、とは自分も思いますが、「健康被害」の四文字が登場すると怯んでしまうのも事実。

そんななかで、主人公はのらりくらりと批判を避けてカウンターを放つ。
現代社会を舞台に、舌戦が繰り広げられます。

あらすじ

 タバコ研究所広報部長ニック。タバコに関するイメージ戦略の最前線に立ち、タバコと健康悪化に因果関係がないと大衆に信じさせるために活動中。
 世間から嫌われ、妻とも離婚しているが、一人息子のジョーイだけがニックを尊敬していた。
 ある日、嫌煙派の上院議員がタバコのパッケージにドクロマークをつけるよう画策していることを知る。タバコのイメージアップのため、ハリウッド映画に喫煙シーンを盛り込もうとニックは動く。

主人公のニックは、決して正義の人ではありません。
「煙草が健康に悪い」というイメージを払拭し、煙草が一箱でも売れるようにするのが彼の任務です。

冒頭から、ニックには試練が重なります。
この映画の初戦は「煙草と健康」に関する討論番組。
医療に関する人間や規制派が討論の椅子に座っているわけですが、特に厄介な人物がいます。
肺ガンの少年です。
勝てるわけがないだろ……!
しかも、喫煙賛成派はニック一人です。
こんな不利局面でどうすんだ!? と思っていたところ、そこは百戦錬磨のロビイスト。きちっと決めてくれます。
なんと規制派の人間の言葉尻を掴んで、肺ガンの少年と対立させたのです。

「彼の死を前提に話していますが、彼に死んでほしいということですか?」
強い。
もちろん本人にそんな意図は絶対にないだろうけど。
「タバコを売るためには多くの人が大人になってもらわなければ困る」
強い。
その煙草を吸ったら肺を悪くして死ぬんだろうが。

ニックにとっての勝利は、正論で相手を打ち負かすことではありません。
その舌戦を見ている観客に「自分が正しい」と思わせる。
論理より一時的なパフォーマンスを優先して戦う
それがロビイストの戦い方。

こうした戦い方は、何か誰かを思い出しますね。


この映画で押し出しているのは「煙草」ではありません。

「その情報は誰がどんな意図で発信しているか?」
「正しいと思えるのは技術があるからで、正しくない可能性もある」
「最後に判断するのは自分」

「社会悪」と断定されているニックだって自分の子には優しいし、嫌煙派の議員はやはり一方的です。
まぁ、そういう「物語」に流されないようにしましょう、ということでもあるのかもしれませんが。


こうして書いていると社会派一辺倒な映画に思われるかもしれませんが、実際はブラックユーモアが盛りに盛られた楽しい映画です。

ニックの飲み友達はのロビイスト。
三人で死の恋人(MOD)というグループを結成しています。
悪を楽しんでんじゃねぇか!
それか、こうしてロールプレイでもしてないとやってられないのかも。


気になったら是非ご視聴を。
ではまた。

『サンキュー・スモーキング』はAmazonPrimeでレンタルできます。


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