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トランスパーソナル心理学の25年周期説

現在は、トランスパーソナル心理学や成人発達理論のブームの時期なのだと思います。それらがタイトルについた数多くの本が出版されています。しかし、心理学の分野で新しい発見があったとかではなく、ほとんどが過去の焼き直しのような気がしています。私が学生から社会人の最初の時期を過ごした1990年代の後半から2000年頃にかけても、ニューサイエンスの残り香か、複雑系ブームに乗ってか分かりませんが、東洋的なアプローチでの統合・合一といったトランスパーソナルは存在していました。当時、真言立川流などにはすごく関心を注ぎましたが、それもトランスパーソナルの一種だったと思います。となると、宗教的な自己統合や成人発達のことを「トランスパーソナル」と呼ぶようになったのはいつ頃からなのだろう、そして、創始者はいったい誰なんだろうという疑問が湧いてきました。所説あるようですが、どうやら、トランスパーソナル心理学の創始者にあたる人物は、5段階の欲求説で有名な、アブラハム・マズローあたりであることが分かってきました。すると、マズローの時代、1990年代の後半、そして、2020年代の前半というふうに、ブームが、約25年ごとにループしているのではないかとという仮説が出てきました。

では調べてみようということで、AMAZONで買える本というのがすべての前提になりますが、著者と発行年を片っ端から検索してみました。

翻訳本が中心で、そして、翻訳者の方がご自身で著書を出されていることが大半であったため、検索の第一のトリガーは、日本人の著者・翻訳者としました。以下の方々です。基本的に、「トランスパーソナル」や、「成人発達」というキーワードでヒットする方たちばかりのはずです。

有冬 典子、岡野 守也、加藤 洋平、鎌田 東二、吉福 伸逸、諸富 祥彦、松村憲、上田吉一、真木 悠介、菅 靖彦、天外 伺朗、田坂 広志、平松 園枝、鈴木 規夫、町塚俊介(50音順、敬称略)

ただ、これ以外だと、すべての翻訳本がカバーできなかったため、直接、著作者でも検索してみました。第2の検索トリガーが、以下の人たちです。

アーノルド・ミンデル、アブラハム・マズロー、オルダス・ハクスリー、カルロス・カスタネダ、ケン・ウィルバー、コリン・ウィルソン、ジョン・C. リリー、スタニスラフ・グロフ、マイケル・A・シンガー、ローレンス・ブレア、ロベルト・アサジオリ、モリー・ヤング ブラウン、エディス・R. スタウファー、ピエロ・フェルッチ、ロバート・アサジョーリ、ラム・ダス

一応これで、1964年から2023年まで、215冊をピップアップすることができました。実際はもっと多くの著者の元、多くの本が出版されたのでしょうが、現在購買可能な本ということになります。ただ、これらの人物や著作を選別する際にも、他の心理学分野、スピリチュアル、宗教など、その境界線があいまいなため、厳密な基準が必要でした。以下の5つがその基準になります。

1、変性意識、サイケデリック、死にぞこないは初期のトランスパーソナルの本流なので含めた。あの世に行って還ってというのはスピリチュアルとして含めなかった。
2、しかし、LSD、スピード、大麻といったドラッグの効能を試すものと、サイケデリックアーティストの著書は含めなかった。
3、テレパシーなどの生身の人間としての能力獲得は含めた。機械等の外部接続による新規能力獲得は含めなかった。
4、プロセスワークやサイコシンセシスといった身体感覚を使ったワークは含めた。ソマティクスはソマティック心理学として独立していると思い含めなかった。
5、上と同様に、プロセスワークやサイコシンセシスは東洋的なアプローチとして含めた。しかし、禅や密教、修験道は、哲学的・宗教的として、また、範囲が広がりすぎるため含めなかった。


グラフをご覧いただければ分かるように、1970年代前半、2000年前後、そして、現在の2020年代と大きく山がありますので、25年周期説は外れてはなかったことが分かります。しかし、1988年をピークとする山と、2010年をピークとする山は、私の中で、感覚的にはありませんでした。これらを含めると、12~13年周期とした方が正しいかもしれません。しかし、1988年の山は、ドラッグ等を用いた、能動的な変性意識の誘導が主な手法であったため、成人発達の要素はほとんどありませんでした。それと、2010年の山は、ほとんどが、ケン・ウィルバーのインテグラル理論にかんするものばかりだったのですが、当初日本に紹介された2010年当時は、ほとんど一般に認知されることがなかったと思います。むしろ、2018年のフレデリック・ラルーの著書『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』の大ヒットによって、その名前が知られるようになったというのが正確ではないでしょうか。(という、むりやり、25周年説でしたが)

そうはいいつつ、1988年がピークのブームも無視できないものとして、1970年代前半を第1次ブーム、1980年代後半を第2次ブーム、、2000年前後を第3次ブーム、そして、現在(2023年)を第4次ブームとしました。それぞれに、その特徴を挙げると以下のようになります。(それぞれの詳細はまたの機会に!)

第1次ブーム(1970年代前半)   実存不安と自己実現
第2次ブーム(1980年代後半)   自己意識のフロンティアへ
第3次ブーム(2000年前後)    世紀末と自己統合
第4次ブーム(2020年頃から現在) 成人発達

こちら、一応、リストの一部


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