【無料回】フジテレビの決算から考えるテレビ業界内で最も業績悪化となってもノーダメージの理由

どちらかというと寒がりですが、暑がりの方が代謝よくてかっこいいと思っています。

なのでこのくらいの時期は暖房が入ってる部屋で定期的に「暑いわ、まだ暖房早くね?」というよくわからない嘘をつきがちです。

自分で書いていてもかっこいい要素は見つけられていません!!

さて、前回映像コンテンツを作っている業界を取り上げていた際に日本テレビを取り上げました。
実はテレビ局各社は事業ポートフォリオも違っていて、意外と違いが大きくて面白いという事で、今回からはテレビ業界を取り上げます。

各社の特徴を中心に触れていきます。

そんな中で今回取り上げるのはフジテレビをやっている、株式会社フジ・メディア・ホールディングスです。

画像18

ちなみにフジテレビはキー局の中では視聴率最下位に低迷してしまっています。

それでは早速ですが業績を見ていきましょう。

まずはコロナの影響がどうだったのかという事で2021年3月期の通期の業績を見ていきます。

バインダー1_ページ_01

売上高は17.7%減の5199.4億円、営業利益は33.2%減の162.7億円、純利益は75.5%減の101.1億円となっていて、減収で大幅減益と不調だったことが分かります。

スクリーンショット 2021-11-12 083747

そしてこの利益の悪化というのはテレビ業界内で最大の業績悪化となっています。

ではどうして大幅減益となってしまったのでしょうか?

事業セグメントを見てみましょう。

バインダー1_ページ_02

フジテレビの事業セグメントは①メディア・コンテンツ事業②都市開発・観光事業③その他事業と3つあります。

それぞれの事業の業績の推移は
①メディア・コンテンツ事業:売上4394.6億円(14.7%減) 利益137.2億円(1.4%減)
②都市開発・観光事業:売上760.4億円(31.3%減) 利益37.2億円(72.8%減)
③その他事業:売上175.1億円(9.4%減) 利益4.4億円(25.4%減)
となっています。

実はメディア事業は売上が14%減となっているものの利益は1.4%減と横ばいです。

画像19

利益が横ばいだった要因としては、テレビ局のフジてテレビは利益が21億円(29%減)となったものの、テレビショッピングなど通販事業を行うDINOS CORPORATIONの利益が15.6億円(347%増)で好調だった事が影響しています。

少なからず巣ごもりの影響もあったという事でしょう。

バインダー1_ページ_03

メディア事業は利益悪化とならなかったものの、なぜ大きな減益となっていたのかというと、その要因は都市開発・観光事業で、この事業だけで100億円ほどの減益となっています。

不動産関連の事業の業績悪化で大幅減益だったんですね。

というのもフジテレビは視聴率が低迷する中で、利益に占める不動産の比率というのは高まっていました。

スクリーンショット 2021-11-11 103756

利益に占めるメディア事業の比率を見てみると、2017~2020年の3月期では5割前後の水準で、2018と2019では5割を下回っています。
利益面では不動産が半分を占めるのがフジテレビだったんですね。

ではこの不調の要因となっている都市開発・観光事業をもう少し詳しく見ていきましょう。

バインダー1_ページ_05

都市開発・観光事業では①サンケイビルの運営と②グランビスタホテル&リゾートの運営をメインとしています。

それぞれの業績の推移は
①サンケイビル:売上520.5億円(27.9%減) 利益88.8億円(33.7%減)
②グランビスタ:売上113.9億円(53.3%減) 利益2.1億円の赤字→51.9億円の赤字
となっていて、両事業とも業績悪化となっていますが特にホテル運営が苦しかったようです。

では、大幅減益でフジテレビの状況が非常に苦しいのかというとそうではありません。

というのも不動産事業がメインだったことからも分かる通りで、大量の不動産を持っているからです。

バインダー1_ページ_07

簿価ベースでも2611億円の土地がありますし、時価ベースにすると3000億円ほどになるようです。

さらに、有価証券は888億円、投資有価証券も4087.6億円と計4975億円もの有価証券も持っています。

非常に多額の資産を持っている企業だという事です。

バインダー1_ページ_08

そして、投資有価証券の含み益を意味している「その他有価証券評価差額金」は1220億円もあり、多額の含み益も抱えています。

バインダー1_ページ_06

また、2021年3月期にも投資有価証券の売却によって、売却益を119億円、売却損が18億円と100億円ほどの利益を得ています。

それによって、コロナ禍で減損やコロナによる特別損失が計93億円ほどあったのを相殺しています。

純利益ベースでも黒字となっていましたが、それにはこういった理由もあったわけです。

画像19

ちなみにこのその他有価証券評価差額金は損益計算書上の利益(多くの人が想像する利益)には含まれません。

そして、そういった含み益の変動も含んだ利益を包括利益といいます。

包括利益を見てみると、2021年3月期の業績でも前期比で237%増となっていて好調です。

その他有価証券評価差額金は439億円増加しています。

株式市場は大きく伸びた1年でしたから包括利益まで見ると非常に好調だったんですね。

それでは続いて直近の2022年3月期の2Q(4~9月)の決算も見ていきましょう。

バインダー1_ページ_09

売上高は、2.2%減の2415.9億円、営業利益は138.8%増の115.7億円、純利益は151.8%増の136.3億円となっています。
どうやら今期は、コロナの影響があった昨年以上の売上悪化となっていた一方で、利益面では大幅に回復していたようです。

画像17

ちなみにコロナ前の業績と比べてみると売上高は23.7%減の2415.0億円、営業利益は36.7%減の115.8億円、純利益は52.7%減の136.4億円と業績が悪化した状況は続いています。

バインダー1_ページ_10

続いてセグメント別の業績を見てみると
①メディアコンテンツ事業:売上1978.9億円(5.7%減) 利益62.4億円(95.3%増)
②都市開発・観光事業:売上411.5億円(18.8%増) 利益57.1億円(181.0%増)
となっていて、両事業とも増益で特に都市開発・観光事業の回復が大きいですね。

バインダー1_ページ_12

ちなみにメディア事業は増益となる一方で、減収となっていましたがテレビ局としてのフジテレビの単体の状況を見てみると、売上高は12.4%増の1131.2億円、営業利益は939.8%増の10.7億円、純利益は189.2%増の8.1億円となっていて、テレビ局としては業績が回復している事が分かります

日本テレビでもテレビ広告はコロナ前の水準に戻ったとしていますから、テレビ広告は回復しているという事でしょう。

とはいえフジテレビの営業利益率を計算してみると、0.9%という状況ですから、主要なキー局で視聴率最下位と低迷している中で好調な事業ではない事が分かります。

バインダー1_ページ_13

続いて都市開発・観光事業の方の状況ももう少し詳しく見ていくと
①サンケイビル:売上275.2億円(13.6%増) 利益70.5億円(70.9%増)
②グランビスタ:売上72.9億円(49.1%増) 利益19億円の赤字→19.4億円の赤字
となっていて、サンケイビルの運営に関しては好調となっているもののホテル運営は苦しい状況が続いています。

とはいえ今は旅行の需要も戻ってきていますし、来年はGoTo再開も検討されていますから不動産事業のさらなる業績の回復というのは期待できそうです。

バインダー1_ページ_16

また、有価証券の金額を見てみると140億円増えて1028億円、投資有価証券の金額を見てみると3月末時点からさらに515億円ほど増えて4602億円となって合計5730億円と有価証券をさらに増やしています。

バインダー1_ページ_17

そして投資有価証券の含み益を表す、その他有価証券評価差額金も392億円増えて1613億円となっています。

ちなみにコロナ前の2年前に保有していた有価証券の金額は合計で4725億円で、投資有価証券の含み益を表すその他有価証券評価差額金の金額は970億円でした。

なのでコロナ前から考えると保有している有価証券は1000億円以上増え、含み益も600億円以上増えていたわけです。

業績としてはコロナ前の状況と比べると悪化した状況が続いていて好調とは言えないフジテレビですが、資産運用会社としての側面から考えると好調だという事ですね。

という事でフジテレビは、コロナ以前から視聴率が低迷しメディア事業の業績が悪化する中で不動産やホテル運営の事業が利益の半分を占めていました。
そこにコロナが来てその不動産やホテル運営事業が業績悪化となった事でテレビ業界内でも最も業績悪化となってしまっています。2022年3月期に入ってからは不動産事業の回復が見られる中で利益は回復傾向にありますがコロナ前の水準には戻っていません。

ですが、不動産事業は回復してきていますし、今後は特に業績悪化の大きいホテル事業も旅行需要の増加やGoTo再開も検討される中で業績回復が期待できますので、事業全体を通じては業績回復が続く事を予測します!!

そして業績は悪化が続いている中でも株式市場の活況が続く中で有価証券などの資産や含み益は増えていて、資産運用会社として考えるとコロナ禍でも好調となっています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?