不正会計から考える、どうしてJDI(ジャパンディスプレイ)は失敗したのか

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社ジャパンディスプレイです。

こんなニュースがありました。

JDI、上場直後から不正会計 ガバナンス改善も急務

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は13日、不正会計に関する第三者委員会の調査報告書を公表した。東証1部に上場した直後の2014年3月期から19年4~9月期まで不正会計があった。不正分を修正したところ、19年3月末は自己資本がマイナスに陥った。同社は独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントなどの支援で当面の資金繰りにメドを付けたが、再建にはガバナンス(企業統治)の改善も急務となる。
在庫の過大計上などによる不正が最終損益に与えた影響額は累計で16億円だが、16年3月期だけみると利益を102億円水増ししていた。企業会計で売上原価は期首在庫に仕入れ高を足した金額から期末在庫を引く。期末在庫を増やすことで売上原価を減少させ、利益を水増ししていた。

以前JDI(ジャパンディスプレイ)の不正に関しての予測と、在庫の過大計上がなぜ利益を増加させるかについて記事を出しました。
その件でついに第三者委員会から結果報告がなされました。
その記事はこちら:JDIの決算から不正会計を読み解く

予想結果としては、上場初年度の2014年からすでに在庫の過大計上による不正会計をしていたのではないかとの予測は当たっていたようです。
16年、17年には監査法人を含み内々では不正が発覚したのではと考えましたがさらにがっつり不正をしていたようです。
18年度に大赤字に合わせて出し切ったのではないかというところはあったていましたので、予想はまあまあといった感じでしょうか。

それでは早速不正会計について見ていきましょう。

以前の報道では、在庫の過大計上による不正会計が行われていたとのことでしたが、それだけではなく色々と不正会計をしていたことが報告されています。

こちらの資料をご覧ください。

実に11もの方法で不正を行っていたようです、取り上げるのが大変ので1つずつ説明はしませんが、これだけたくさんの不正を行っていたという事です。

続いてこちらの資料をご覧ください。

ニュースにもありましたが、たくさんの不正会計を行っていながらも利益の累計の影響額は16億円しかないことが分かります。
在庫の過大計上に関しては累計の影響はゼロになっています。

それはどうしてでしょうか?

こちらの各不正会計についてどのように処理したかの資料をご覧ください。

これも資料が多くなりすぎてしまいますので、資料の1部しか載せませんが、基本的に「費用の先送りが行われた」や「翌期に解消された(取り崩された)」といったものが多いことが分かります。
これは載せていない部分も同じです。

何が起きていたかというと、やっていたのは費用の先送りしていただけだという事です、だから利益への影響は小さかったのですね。

つまり本質的には何も意味が無いことをしていたということです。
例えば、今期100億利益で来期も100億の利益だった会社が10億費用を先送りしたとしても、今期110億の利益となり来期90億の利益となるだけなのでトータルでは何の変化も起きません。
むしろ不正に掛けるコストの分だけマイナスにしかなりません。

本質的には意味が無いのになぜ不正を行ったのでしょうか?

もともとJDIは、経産省系の産業革新機構(現INCJ)という組織が主導してソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレイ事業が統合された国策会社です。

その実質的な上位組織であるINCJから実現不能な営業利益目標を求められ、CEOが各部署に厳しい要求をしたことが、不正の背景にあるようです。

つまり会社をよくすることではなく、実業を分からない経産省出身者の立てた目の前の数字をクリアする事が目的にすり替わってしまった事が不正の本質的な原因だという事です。

またこの目の前の数字をクリアするために不正を行うと悪循環に陥ります。
先ほどの例のように100億の利益の会社が、110億円の目標を達成しようと思い10億円分費用の先送りを行ったとしましょう。
そうするとその目標は達成できますが、翌期は何もしてなくても10億円の費用が送られてきますから、同じように110億円の目標を達成しようと思えば20億円分費用の先送りが必要になり不正の額は雪だるま式に膨らんでいきます。

JDI内で起こっていたのは長期的な視点が完全に欠如していたという事です。
INCJからの数字目標達成という短期的な視点しか持てない組織となっていたわけです、それでは衰退するに決まっていますよね。

目先の数字だけにとらわれずより大きな視点も大切にする事は、多くの企業も含め多くの個人にも大切だと思いますので、今回のJDIの件から学びたいですね。

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