JDIの決算から不正会計を読み解く

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントに絞って説明していきます。

今日見ていく企業は株式会社ジャパンディスプレイです。

この会社は経産省系の産業革新機構という組織が主導してソニー、東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレイ事業が2013年に統合されて現在の形になった会社です。

当時中国や韓国系のディスプレイ企業が台頭してくる中で、日本企業は収益を出すことが難しくなっていたのである種の国策企業としてできた会社ですね。

さて、こんなニュースがありました。

経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)は24日、元社員からの通知を受けた不適切会計の調査で、過年度の在庫について累計100億円程度を過大に資産計上し、その後、全額を取り崩していた疑いが判明したと発表した。独立性のある第三者委員会による調査に切り替えて詳しく調べる方針だ。
発表によると、JDIは今月2日、弁護士と公認会計士、JDIの執行役員の3人でつくる特別調査委員会を設け、不適切な会計処理の有無を調べてきた。特別委から不適切会計の具体的な疑いがあるとの指摘を受けたという。

在庫を過大計上していたという事ですが、これは古典的な粉飾決算の手口です。

古典的手法なのですが、いつまでも使われるのは在庫の監査は難しいからなんです。
会計士も監査する会社の事業の専門家ではないので在庫がいくらなのか、特に製作途中の製品などはどの程度お金が掛かっているかというのを把握するのは難易度が高いわけです。
さらに時間も限られていますから余計に難しいんですね。

この疑惑も元社員からの告発で判明したという事で、外部からは見つからなかったことからも、在庫の監査の難しさが分かると思います。

ところでなぜ在庫を増やすと利益が増えるのでしょうか?

その理由は会計上の計算の仕組みにあります。
凄く簡単に会計を図式化すると

利益=売上-仕入

仕入=仕入に使った額-在庫の額

で利益が計算されます。

たとえば売上300円、仕入に使った額200円、在庫50円だとすると
利益=300-(200-50)=150円になるわけです。
それが在庫が100円になったとしましょう。
すると、利益=300-(200-100)=200円となるわけです。

つまり在庫が増えると利益が増えるというわけですね。

ではなぜこんなことをしているのでしょうか?
在庫なんて考えずに仕入に使った額全部仕入にしてしまえばいいですよね?

そのルールがなぜよくないのか考えてみましょう。
例えば、3月末決算で3月中旬までは100円の利益が出ている会社があるとしましょう。
その会社は3月末に200円仕入をしました、そして、この商品は品薄でなかなか仕入が出来ない人気商品で近々500円で売れる可能性が高いとします。


そうすると決算では赤字100円になってしまうわけです。
決算を見たときに投資家の人たちは赤字のダメな会社だと判断を間違えてしまうことになりますよね。

それでは困るので、在庫を仕入から除くという計算ルールがあるわけです。

JDIの粉飾大予測!!

それではJDIの粉飾がどのような経緯で行われてきたか予測していきましょう。

まず、粉飾決算をみる際のポイントを説明します。
基本的に粉飾決算をしている会社は、売り上げや利益が増えているのにキャッシュフローが悪くなっているという事が多いです。
これは普段決算を見るときも注目しておいたほうがいい点です。

ちなみに、JDIは不適切会計疑惑の調査中なので粉飾という言葉を使うのは正しくありませんが、分かりやすく粉飾と表現しています。

それでは2014年の上場からの売上、営業利益、純利益、在庫(商品+仕掛∔材料)、営業キャッシュフローの推移を見てみましょう。

画像1

上記の資料を見てみると分かる通り在庫の売上高比率が2014、2015と2016、2017で一定ですね。
意図的な操作があった可能性があります。

さらに2014は利益がちゃんと出ているにもかかわらず、キャッシュフローがよくないという粉飾決算にみられる傾向が出ています。

さて、JDIは2014年に上場したわけですが、初値割れをしてしまっています。
国主導で出来た会社ですから、国、投資家、世間からのプレッシャーは相当なものがあったことは容易に推測できますよね。
そんな中で悪い決算発表なんてできないわけです。
そこで利益を確保、株価上昇のために在庫の過大計上による粉飾決算へ進んでいってしまったのではないでしょうか。

その後2016年には在庫の比率が下がっていることが分かります。
実はこの決算の前2015年に東芝の粉飾決算問題が起こっています。
JDIは東芝のディスプレイ事業も統合されていますから、相当厳しい監査が行われたのではないでしょうか?

その結果この段階で監査法人は在庫の過大計上を発見した可能性があります。
実際に在庫の比率も下がっていますから指摘を受けて、解消に向けて動き出したのではないでしょうか。

その後2018年に構造改革のために大幅な赤字を計上しています、この年に在庫は大きく減少していますから、そこに混ぜ込んで処理しきった可能性があります。

これは割とあるあるで、大赤字を計上する年に全部膿を出し切ってしまうんですね。
2000億赤字といわれても3000億といわれても、もはや大差なく感じてしまう効果を利用するわけです。

今回の粉飾はこのような流れなのではないかと予測します。

今後の調査結果がどうなるのか、果たして予想は当たっているのか注目していきたいと思います。

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