HISの決算から考える今後が難しい話

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社エイチ・アイ・エスです、日本で最王手の旅行会社ですね。

HIS、今期200億円のコスト削減 店舗閉鎖などで業務効率化
2020/6/24 21:00
旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)は24日、2020年10月期通期の業績予想を未定とするとともに200億円のコスト削減を図ると発表した。国内外527店舗のうち1年以内に80~90店舗を閉鎖するなどして業務を効率化する。新型コロナウイルスの影響で旅行事業の先行きが不透明なため融資枠も設定して手元資金を確保する。

20年10月期は配当も未定にすると発表した。HISの主力の旅行事業は新型コロナの感染拡大を受け、海外ツアーの催行が相次いで中止となった。収入が減少しているほか、旅行の前受け金の返金が発生。4月末時点の現預金の残高は1243億円で、1月末時点に比べ712億円減少しており、手元資金の確保が課題となっている。

オンラインで開催した説明会でHISの澤田秀雄会長兼社長は「海外旅行は今年いっぱい回復が難しいだろう。まずは経費削減に力を入れる」と話した。経費削減策として、一般社員の夏季賞与を見送った。経費以外に、ホテル事業や不動産取得といった設備投資費用も90億円削減することを決めた。

資金調達も進めており、既に三井住友銀行など3行と、計330億円のコミットメントライン(融資枠)を締結した。中谷茂最高財務責任者(CFO)は「1年後のリスクを勘案し、運転資金として必要な金額を調達した」と説明した。

同日発表した19年11月~20年4月期の連結最終損益は34億円の赤字(前年同期は49億円の黒字)だった。02年の上場以来、上期として初めて最終赤字となった。

どうやらHISは、2002年の上場以来初の上期赤字となり、国内外527店舗のうち80~90店舗の閉鎖を含め200億円の経費削減の発表、さらに330億円ものコミットメントライン(金融機関に頼んだらすぐ借りれるお金)を締結するなどかなり厳しい状況にいることが予想されます。

今回はそんなHISの今後について考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

売上高は8.9%減の3443億円、営業利益は89.8億円→14.7億円の赤字、純利益は49.6億円→34.6億円の赤字となっており業績は大幅に悪化、赤字転落してしまっている事が分かります。

新型コロナによって旅行需要は、ゼロに近くなってしまいましたから厳しい結果となってしまいましたね。

もう少し詳しく内訳をみてみましょう。

HISの主な事業セグメントは①旅行事業②ハウステンボス事業③ホテル事業④九州産交グループ⑤エネルギー事業⑥その他の6つある事が分かります。

各事業の営業利益に注目してみると⑤エネルギー事業以外では減益となっている事が分かります。
売電事業などを行っているエネルギー事業は増益となっていますが、HISの主力事業はやはり旅行事業で規模が圧倒的に大きいので、エネルギー事業の増益では吸収しきれずトータルでは減益となっています。

続いてこちらの資料をご覧ください。

もちろん今回の大幅な業績悪化は、新型コロナの影響が大きいわけですが、実は2019年11月~2020年1月期(1Q)の時点ですでに、旅行事業、ハウステンボス事業の利益が悪化していたことが分かります。

特にメインの旅行事業は売上高こそ前期比105.2%と増加しいますが、営業利益では前期比58.2%となっており4割近い減益となっています。

どうして増収減益となってしまったのでしょうか?

こちらの資料をご覧下さい。

HISの総資産、自己資本比率を長期的にみると総資産は増え、自己資本比率は低下している事が分かります。

どうしてこのようになっているかというと、HISは大規模な借入によって積極的なM&A(企業買収)やホテル事業など固定資産へ投資を進めてきたためです。

特に旅行事業が1Qの段階で増収減益となっていたのは、カナダのRed Label Vacationsという旅行会社をM&Aによって取得して規模は拡大していましたが利益には貢献できていなかった(あまり上手くいっていなかった)という事が理由です。

新型コロナ前か投資が上手くいっていなかったんですね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

営業キャッシュフローが243億円ものマイナスとなっている事が分かります。
どうしてこれほどまでに大きなマイナスになってしまったのかというと、旅行前受金が486億円も減少した事が最大の理由のようです。

HISなどの旅行会社で予約する事を考えると分かりますが、予約段階で前受金を受け取っているんですね。
代金の一部を先に受け取って資金繰りをしていたところに、新型コロナで予約が入らなくなっていまい一気に資金を失ってしまったという事ですね。

さらに旅行前受金というのは、将来の売上の指標(予約の量)としてもとらえる事が可能ですよね。
つまり、かなり予約数が減少していて今後の売上の見通しが立っていないという事が分かるわけです。今後も予約減少の影響が続き、資金の流出はさらに進みそうです。

実際にHISも現在の資金残高である1243億円がわずか1年後には650億円まで減少するという見通しを立てている事が分かります。

半分になるということですから凄いダメージですよね。

また、今後の見通しに関しても、最善のシナリオで2020年12月で前期比8割程度を見込んでいるようです。

相当厳しい状況を覚悟しているという事ですね。
これが330億円ものコミットメントラインを必要としている理由ですね。

先ほどもチラッと書きましたが、HISは積極的なM&Aや投資によって借入が多くなっています。
影響が長期化すればするほど、ボディブローのようにダメージが効いて回復が難しくなってしまいます。

早急な対策が必要なわけですが、今後はどのような施策をとっていくのでしょうか?

当初のニュースにもあった通りでコストカットだという事が分かります。
人件費の削減から、広告費の抑制、賃借料の減額交渉などを行い23%もの大規模なコストカットを目指していくようです。

今のHISの状況を考えるとコストカットしか打つ手はない状況でしょう。
今後の業績を占うのが世間の空気というだいぶ曖昧なものでしかないからです。
はっきりと言ってしまえば運しだいのような状況の中で、とにかくコストカットして需要が戻ってくるまで長期的に耐えられる仕組みづくりをしていくしかないのではないでしょうか。

続いてはこちらをご覧ください。

JATA(旅行業者団体)に復帰して、政府観光局への積極的な働きかけを行うとしています。
旅行の支援は政府の予算にも組み込まれていますし、こうした働きかけを地道にしていくのも、今できる数少ない施策だと考えられますね。

という事でHISは、多額の借入によって積極的な投資を行っていたが、その投資は新型コロナ前からあまり上手くいって無かった。
そこへ新型コロナで需要が減少、今後も売上(予約)の見通しが立っていないので財務的にも、収益的にもダメージが大きい。
さらに、打てる施策も少ないという事でかなり厳しい状況が続くことを予測します!!

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