ワールドの決算から考える200名の早期退職募集の理由と、リアル店舗の閉店がさらに増えていく話

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社ワールドです、タケオキクチをはじめ多くののブランドを展開している企業ですね(ブランド一覧

こんなニュースがありました。

ワールド、閉店358店、200人の早期退職など構造改革を発表
2020/8/5 16:05
ワールド(3612)は5日、5ブランドの終息や閉店、早期退職者の募集を軸とした構造改革を実施すると発表した。再上場により財務体質改善や構造転換を進めてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大による需要急減が打撃となった。「ファッション産業に内在していた供給過剰の矛盾が一気に現実化した」といい、事業の選択と集中や改革加速を決めたという。

「アクアガール」や「オゾック」など5ブランドを終息する。終息するブランドの退店のほか低採算店なども合わせ、今期(21年3月期)中の358店の退店を予定す
る。同時に、9月中に40歳以上の社員を対象に約200人の希望退職者を募集する。

取締役やグループ執行役員はすでに月額報酬の10%減額を実施しているが、新たに21年6月までシニアチェアマンと会長、社長は月額報酬30%減、21年3月期の賞与支給無しなどとする報酬見直しも実施する。

今期はその他費用に計57億円の構造改革費用を計上する。年間36億円程度の損益改善を見込むという。

どうやらワールドは5ブランドの撤退や、200名もの早期退職の募集さらには358店舗の撤退を発表したようです。

飲食やアパレルでは店舗の撤退が目立ち始めていますね。
この8月に入ってからもいくつかの県が独自の緊急事態宣言を打ち出していますが、リアルな店舗を経営する側からすると政治判断による不確性さも高まっておりリスクを減らすためにも、不採算店舗からの撤退の流れは止まらなそうです。

今後は雇用の流動性をどう生み出していくのかが、かなり重要になっていくでしょうね。

さて今回は、ワールドの今後と早期退職募集やブランド・店舗撤退の理由について考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

売上高は45%減の329.9億円、営業利益は87.1億円の黒字→31.8億円の赤字、純利益は66億円の黒字→24億円の赤字となっておりかなりの業績悪化が起きている事が分かります。

もちろんこれだけの業績悪化となった要因は新型コロナの影響によって4月5月と店舗の閉鎖があったためです。

店舗売り上げを見てみると4月は前期比で25.4%、5月は38.5%と壊滅的な状況になっている事が分かります。
リアル店舗をメインに販売していたところは休業となるとこうなってしまいます、企業努力ではどうしようもないですね。

また、売上総利益率は前期の63%から57%へと大きく悪化している事が分かります。
新型コロナによって売上が減少しただけではなく、利益率まで悪化してしまっているのですね。

ではどうして利益率まで悪化してしまったのでしょうか?

新型コロナによる店舗閉鎖の影響があり過剰在庫となったため、値引き販売が増加し利益率が低下してしまったようです。

これは他のアパレル企業も同様でどこも過剰在庫に悩まされています。
アパレル企業は販売の大分前から製造を始めるために、すぐに生産を止める事は出来ませんので店舗閉鎖が起きるとかなりの過剰在庫となってしまいます。
過剰在庫の適正化には、生産量や仕入れの調整をして早くても1年はかかるでしょうし、それ以上かかる事も十分にあり得ますから店舗閉鎖の影響というのはかなり長期化してしまいそうです。

在庫適正化のために値引き販売を進めたとのことですが、それでも在庫は252億円→284億円と32億円も増加してしまっている事が分かります。

利益率を下げて値引き販売してもまだまだ在庫の適正化には程遠いと厳しい状況ですね。
今後もこの過剰在庫を値引き販売していく事が考えられますから、しばらくの間は低利益率が続きそうです。

さらに、営業キャッシュフロー(本業でキャッシュを稼ぐ力)は70億円のマイナスとなっており、その要因としても在庫の増加の影響が大きいと分かります。

利益的にも資金繰り的にも過剰在庫が大きなダメージを与えているのですね。

ワールドの現預金・売上債権といった手元資金は410億円ほどあり、流動資産は720億円ほどだと分かります。
また、先ほども見た通り流動資産のうち284億円分は在庫ですね。

一方、短期的な負債である流動負債は1058億円ほどありますので、財務状況も厳しい事が分かります。
値引きしてでも過剰在庫を掃ける事は資金繰りのためにも重要なんですね。

また、値引き販売によってブランド価値が毀損してしまう事には注意が必要そうです。

続いてはこちらの資料をご覧ください。

月次の売上げを見てみると6月には国内小売りが91.7%まで回復していますが、7月には79.6%まで低下してしまっている事が分かります。

さらに8月はいくつかの件では独自の緊急事態宣言を出すなど、最近の空気感を見ていると、7月よりさらに減少してしまう可能性が高そうですので厳しい状況が続きそうです。

早期退職や店舗の閉鎖を決めた理由としては資金繰り的にも余裕がなく、過剰在庫を適正化するために値引き販売をする事でしばらくの間は利益率も低下した状況が続きそう。
さらに7月には需要回復が反転してしまい不確実性が高い状況が続くという事で、コストカットを進めて規模を縮小してリスクを減らしていく必要があるという事ですね。

という事で、早期退職よ不採算店舗撤退によってコストカットは進むものの、過剰在庫による利益率の低下も続き、7月には月次も悪化し、今後の見通しも厳しいという事で厳しい状況が続く事を予測します!!

あと、緊急事態宣言や明けの初月は売上が大きく回復したものの、その翌月には下落に転じてしまうというのはワールドだけではなく、他のアパレル企業や他の業種でも起きています。

となると心配なのは、多くのリアル店舗経営者のメンタル面ですよね。
自粛明けて1ヶ月目には大きく回復して「さあやるぞ!!」と思っていたものの7月は再び下落してしまい、どうやら8月は政治的な要因もありさらにヤバそうだぞとなっているわけです。

さらに、この状況があと1年続くのか2年続くのかも分からないとなるともう閉店を決断するには十分すぎる状況なのではないでしょうか。

このままの空気感が続くようであれば、これから数か月以内に様々な業種でリアルな店舗の閉店が増加していく事を予測します。

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