カプコンの決算から考える、過去タイトルが資産化できる強さと今後のリスク

どうもコージです! 私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。 そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社カプコンです、ストリートファイターやロックマン、バイオハザードやモンスターハンターなどの有名タイトルをいくつも輩出しているゲームメーカーです。

こんなニュースがありました。

カプコンの前期、最高益更新 ダウンロード販売好調

カプコンが8日発表した2020年3月期の連結決算は、純利益が前の期比27%増の159億円と3期連続で過去最高だった。新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に在宅時間が延び、利益率の高い旧作ソフトを中心にダウンロード販売が伸びた。
売上高は18%減の815億円だった。大型タイトルの販売が1つのみだったのが影響した。ゲームセンターを手がけるアミューズメント施設事業が新型コロナで休業し、売り上げが3割減った。
21年3月期は純利益が前期比13%増の180億円になる見通し。4月に発売した「バイオハザード RE:3」のほか下期に向けて複数の大型タイトルを発売予定という。

どうやらカプコンは、過去最高益を更新したようです。
今回はそんな好調のカプコンの今後について考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

売上高は18.4%減の815.9億円、営業利益は25.8%増の228.2億円、当期純利益は27.1%増の159.4億円と減収増益である事が分かります。
売上は大幅に減少していますが、利益は大きく増加していますがそれはどうしてでしょうか?

大型のリピートタイトルが海外を中心に人気が持続した事と、ダウンロード販売が拡大した事が収益性が向上した理由だと分かります。

これはダウンロード販売を行う事の2つの大きなメリットを生かしているという事です。

1つ目はダウンロード配信であれば、限界費用をゼロに近づけられる(ゲームソフトを生産するコストと店舗への流通コストなどがかからないのでほぼゼロ円で複製できる)ので利益率が高くなる。

2つ目は過去作品の販売を行う事が出来る事です。
現物のゲームソフトを販売する場合、製造ラインと流通ラインに乗せる必要があります、つまり多くのコストがかかってしまうので、そもそも需要が少なく売れにくい上に販売価格を下げる事も難しいので販売する事が出来ません。

なので過去作品は2次流通市場(中古市場)で取引されていたわけです。
しかしダウンロード販売であれば限界費用はゼロですし、一番コストがかかるゲーム自体の制作も過去に終わっていてゼロですから、2次流通市場に負けないような低価格で販売しても、大きな利益を出す事が出来るという事です。
今後はゲームの2次流通は厳しくなって行きそうですね。

これまで多くのヒットを出してきたゲームメーカーは、これまで資産化出来ていなかったものを資産化できるという事で、今後の業績に好影響を与えるでしょう。
カプコンも圧倒的な強みを手に入れたという事ですね。

ところでダウンロードであれば限界費用がゼロに近づくわけですが、今後はスマホゲームのように価格は下がっていくのでしょうか?

これは意外と難しいでしょう、まずは現物のゲームソフトを販売してくれている流通網への配慮がありますし、その他にも大きな問題としてハードの壁があります。
例えばスマホゲームであれば、数十億人のスマホ所有者に売れる可能性があります。
一方、どれだけ人気といえど「集まれどうぶつの森」はスイッチの累計販売台数である5577万台以上に売れることが無いわけです。

となると、多額化しているゲームの製作コストを小さなパイの中で回収しなければいけないうえに、当たり外れのある業界ですから、1度の当たり作でハズレの分も回収する必要があるため、比較的に価格は高くなってしまうんですね。
とはいえ、ダウンロード主流になればある程度の低価格は起きそうです。

カプコンの未来!!

2019年3月期と2020年3月期をセグメントごとに比較してみましょう。
デジタルコンテンツ事業(ゲームの製作販売)
売上高:829億円→599億円 230億円の(27.7%)減少
セグメント利益:233億円→241億円 8億円(3.4%)の増加

アミューズメント機器事業(パチスロ機の制作販売)
売上高:34.2億円→65.3億円へと31.1億円(90.9%)の増加
セグメント利益:26.6億円の赤字→20.8億円へと47.4億円の増加

ゲームの製作販売を行うデジタルコンテンツ事業は、ダウンロード販売の増加によって売上高が大幅に減少しながらも増益を果たしていますが、その増益額は8億円ほどでしかない事が分かります。
2020年3月期の大幅増益となった要因は、実はパチスロ機の製作販売を行っているアミューズメント機器事業なのですね。

現在は新型コロナの影響で多くのパチンコ店も店舗の休業が続いており業績が悪化していますので、新台を導入するのが難しくなるので業績が悪化してしまいそうです。

さらに現在パチンコ・スロット業界は厳しい目を向けられています。
やはりグレーゾーンの業界ですから、今後はもしかすると世間の厳しい声から規制が強まるような事があるかもしれません。
そうなると大きく収益性が悪化していしまう可能性がありますので、注意しておく必要がありそうです。

さらにカプコンのもう一つのセグメントとしてアミューズメント施設事業がありますが、ここはもちろん新型コロナの影響をもろに受けていますので2021年3月期は業績が悪化しそうです。

という事でアミューズメント機器事業、アミューズメント施設事業は業績悪化の可能性が高いので、メインの収益源となるデジタルコンテンツ事業がどうなるかが重要そうですね。

ゲームソフト仕掛品という科目が169億円→212億円へと大きく増加している事が分かります。
これはゲームの製作に大きなコストをかけているという事です。
ニュースにもあった通り

4月に発売した「バイオハザード RE:3」のほか下期に向けて複数の大型タイトルを発売予定という。

という事ですから、大型タイトルがどうなるかに注目ですね。

今後はアミューズメント機器事業、アミューズメント施設事業の収益性が悪化しながらも、過去タイトルを資産化する事である程度は相殺できるのではないでしょうか。

という事で、新作にある程度の当たりが出れば2021年3月期も増益となる事を予測します!!

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