三陽商会の決算から考える今後の業績

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社三陽商会です。2015年までバーバリーと日本国内でライセンス契約を結んでいた事で大きく成長したアパレル企業です。

三陽商会に関しては以前に記事を書きましたのでよろしければどうぞ。

三陽商会の決算にみる身売りの可能性
三陽商会の決算に見る、新型コロナの影響で身売りが現実的になった理由

さて、こんなニュースがありました。

三陽商の3~5月期、42億円の最終赤字 コロナで休業、特損計上
2020/6/30 11:51
三陽商会(8011)が30日発表した2020年3~5月期の連結決算で、最終損益は42億円の赤字となった。前期(20年2月期)より決算期を12月期から2月期に変更しており、第1四半期としての比較対象となる19年1~3月期は400万円の黒字だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛や、出店している百貨店の休業などで販売が大幅に減少し、収益が悪化した。臨時休業による費用を特別損失として11億9800万円計上したことも響いた。

売上高は57億円(19年1~3月期は161億円)、営業損益は28億円の赤字(同2億4500万円の黒字)だった。特別損失の内訳は、主に店頭販売スタッフの給与手当など固定費等が9億7500万円、その他は不動産賃借料や減価償却費などとしている。

21年2月期通期の業績予想の開示は見送った。新型コロナの影響で合理的な算定が困難だとしている。

どうやら三陽商会は新型コロナによる休業などもあり、3~5月の3ヶ月だけで42億円もの赤字となってしまったようです、百貨店メインのアパレル業はどこも厳しい状況にありますね。

これまでに2度ほど三陽商会の決算を見てきたという事もありますし、今回は定期観測として三陽商会の決算を見ていこうと思います。

それではまずこちらの資料をご覧ください

売上高は64.3%減の57.3億円、営業利益は2.4億円→28.5億円の赤字、純利益は400万円→42.8億円の赤字ともの凄い悪化をしている事が分かりますね。

これだけの減収減益となってしまった要因として、新型コロナで店舗が閉鎖となっていた事を上げています。
店舗の閉鎖に加え、百貨店の主要顧客である高年齢層が感染時の重症化リスクの高い事もあり、新型コロナの早い段階で客数が減少していた事もかなりの打撃となっているでしょう。
その結果売上は3分の1程度となっており、本当に厳しい状況だという事が分かります。

ただし、以前に書いた記事を見てもらうと分かる通りで新型コロナの影響が出始める以前の段階、特に2015年にバーバリーとのライセンス契約が破棄されて以降は収益性が悪化し、赤字体質となっていた点には注意が必要です。
元々業績が悪化していた企業なんですね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

販売不振に伴って、商品および製品(在庫)が32.7億円ほど増加している事が分かります。
アパレル企業は販売より何ヶ月も前から商品の製造を始めていますから、新型コロナのように商品が売れない状態が訪れると非常に弱いです。
商品の製造を止める事もなかなか出来ないからです。
どこか途中で止めてしまうとサプライチェーンにダメージが出てしまうので、需要が戻った際に元に戻すことが難しくなってしまいます。

三陽商会のような中価格帯以上のブランドは、ワンシーズン過ぎると大幅な値引きをして売る事になりやすいので、この過剰在庫が今後の業績の悪化要因となりそうですね。

財務状況は大丈夫なのでしょうか?

現預金・売掛金などの手元資金は109.2億円ほどある事が分かります。
また投資有価証券が84.4億円ほどありますから、現金化が容易そうな資産が合計で193.6億円ほどある事が分かります。

一方流動負債は104億円ほどだという事が分かります。
2020年5月末時点では資金的にはある程度余裕がありそうですね。

しかし大赤字だった事からも分かる通り現金の流出は止まっていません。
実際に現預金は3ヶ月間で129.3億円→93.9億円へと35.4億円も減少していることが分かります。

さらにこの期間に借入金は40億円ほど増加していることが分かります。
それにも関わらず現預金が35.4億円も減ったということですから単純計算で75億円以上の資金流出が起きたという事で、その状況が続いていると考えると財務的に余裕がある状況では無い事が分かります。

更なる借入が出来るか分かりませんし、出来ても条件は悪化しそうです、資金繰りは楽では無いという事が想定できますね。

ちなみに、その資金繰りへの対応策として銀座の自社ビルを売却するという報道がなされました。

しかしこれに関しては、三陽商会が否定する発表を出している事が分かります。
とはいえ検討しているとは発表していますから、現状の資金繰りの厳しさを考えれば売却の可能性は十分にあると考えられるでしょう。

三陽商会の未来!!

さて、売上も資金繰りも厳しい三陽商会ですが、今後の施策としてどのような事をしていくのでしょうか。

まず、①近年の業績悪化からの対応として、売上重視の路線から利益率重視の路線へ舵を切っていた。
②しかし、販売不振で過剰在庫となってしまったのでとりあえずは、在庫をはけることを重視する。

との事です。

今後は消費の減退が起こる可能性がありますし、先程も描きましたが、なにより三陽商会のような中価格帯以上のブランドはワンシーズン過ぎるとかなりの値引きが要求されます。
となると、値引きによって利益率の低い販売が続き赤字がまだまだ続きそうです。

また、過剰在庫を一掃したあとは高利益率路線を改めて目指していく必要があるわけですが、値引き販売などをあまり行ってしまうと今後もブランド力が低下して高利益率=高単価での販売をすることが難しくなってしまうでしょう。
さらに資金繰りが苦しくなると商品開発にかけるコストも減りますので、尚更高利益率路線は厳しいのではないでしょうか。

ということで、在庫をどうにかして掃けるために値引きをし、ブランド力が低下、さらに資金繰り上の問題で商品開発力も低下し、今回のダメージは長期化する事によって長期的な業績悪化を予測します!!

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