今後増えそうな新しい株式報酬の形リストリクテッドストックについて解説しようと思っています

どうもコージです! 私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。 そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回は業績が悪化する中で、ぴあがリストリクテッドストックというものを利用して役員や従業員への報酬としていましたので、それがどのようなものなのかについてのご紹介です。

また、ぴあの決算については前回取り上げていますので興味のある方はよろしければご覧ください。

リストリクテッドストックに関しては、海外などでは導入されるケースが増えていたのですが、日本では課税関係の法整備などが進んでいなかったためになかなか導入されて来ませんでした。

ですが2016年に法整備がなされてから少しずつですが導入する企業が増え始め、特に今回新型コロナで業績が悪化した企業などで導入が増えています。

今回はそんな増えているリストリクテッドストックとは何なのか、どうしてコロナで増えているのかというのを、ぴあの事例を利用して見ていこうと思います。

ちまみにリストリクテッドとは日本語訳すると制限があるという事で、ストックはもちろん株式を表しています。なのでこれは制限のある株式による株式報酬の一種であるという事です。

代表的な株式報酬だとストックオプションなんかがありますので、今回はストックオプションとの違いについても見ていこうと思います。

まずはご存じない方のためにストックオプションについてかなりざっくりと説明していきます。
オプション(選択)という言葉から分かる通りでこれは、株式の購入に関する選択権を与えるというものです。

例えば、現在の株価が1000円だとしましょう、従業員への報酬としてこの株式を3年後に500円で1000株買えるよっていう選択権を与えるのがストックオプションです。
その後、従業員が頑張って働いてくれて3年後に株価が2000円になっていればストックオプションを利用して150万円分の利益が出るのでインセンティブになるという事です。

一方で株価が400円になってしまえば、500円で買う権利を行使すると損してしまうので価値が無くなります、なので株価を上げるために頑張って働くインセンティブが生まれるという事です。

また、基本的には株式の売買が容易な上場企業が利用するのですが、上場企業ではない資金的に余裕のないベンチャー企業などでも上場出来たら使ってねという形で従業員へインセンティブとして渡しているケースも多いです。

一方でリストリクテッドストックとは先ほどの通りで制限付きの株式を渡すというものです。
例えば1株1000円の時に制限のある株を1000株渡します。

すると株価が2000円になれば200万円の報酬をえられますので、頑張るインセンティブになりますよね、そしてこちらの場合では400円になっても40万円の報酬が得られるので、ストックオプションと違い株価が下落しても報酬が得られるという特徴があります。

続いてぴあの具体的な事例でリストリクテッドストックについて確認していきましょう。




まずぴあでは自己株式の処分という形で株式を148,069株発行している事が分かります。

そしてこの株式には2020年12月10日~2025年12月9日まで、つまり5年間の譲渡制限がついている事が分かります。
そしてこの5年間の間ずっと社員であった事を要件として譲渡制限を解除し譲渡制限が解除されない事が決定した株式に関してはぴあが無償取得するとしています。
つまりもらってすぐ辞められたらインセンティブになりませんので、没収しますよという話です。

リストリクテッドストックの制限とは譲渡(売却)に関しての制限がついているって事なんですね。

そしてもちろん株式は無償発行というわけではありません、先ほどの例でいうと1000円の株発行するのに「その1000円の負担は誰がするの?」って話です。

ストックオプションであれば買う権利を与えているので、最終的な購入は実費で行ってもらってもいいわけです。
2000円のものを500円で買えるなら自腹で買って売っちゃえば得をするので支払わせても問題ないわけです。

ですが譲渡制限付き株式の場合はそうはいきませんよね、1000円のものを1000円で買わせた挙句売れない制限がついてますは報酬というよりむしろ搾取です。
800円で買わせても5年間譲渡制限されたら得だとは言えませんよね。




では誰が負担するのかというともちろん会社です、ぴあでは株式の対価として金銭債権を現物出資として払い込みを受けたとしています。

つまり、会社が従業員などに対して報酬として一度、金銭債権(1000円もらえる権利)を与えて、それを出資してもらう事で株式を発行するという事ですね。

そして以前はこの与えた1000円をどう処理するかについての制度が出来ていなかったのですがそれが決まったことで増加を見せているという事です。

具体的にはこの1000円を譲渡制限がついている5年間で費用化していくというものです。つまり年間200円ほど費用化されていくというわけです。

ぴあでの自己株式処分の総額は4億円ほどとなっていますので、金銭債権も4億円ほど与えたという事ですから年間約8000万円ほどコストが増加するという事です。

この費用はもちろんキャッシュアウトを伴うものではありませんのでぴあの資金繰りが悪化するわけではありませんが、前回の記事で見た通りでぴあの利益の規模からいうとそれなりの負担だと分かります。

ここまで見てくるとコロナ禍でどうしてリストリクテッドストックが増えている、増えていきそうなのかも見えてきたと思います。

まずコロナで財務状況が悪化した企業も多いですよね、そんな中でこのリストリクテッドストックでは(ストックオプションもそう)キャッシュアウトを伴わずに報酬を与えられます。

いわば株式市場から報酬を与えている形です、ぴあの例で見ても金銭債権(お金もらえる権利)を付与してそのまま現物出資してもらっている形なので資金的な移動はありませんでしたよね。

いわば既存株主の株式を希薄化させて報酬としているという事で、コロナで財務状況が厳しくなったところは、賞与カットなど金銭での報酬が与えられない中で従業員を引き留める必要がありますのでそれで、この株式報酬は需要が増加していくという事です。

また、資金移動が無いのはストックオプションも同じですが株価の下落時や、大きく株価が上昇しなかったとしてもそれなりの報酬を得られるのがリストリクテッドストックの方ですよね。

なのでストックオプションと比べると、例えば5年の譲渡制限期間の間従業員をつなぎとめるためのインセンティブが強いことが分かります。

つまりコロナで業績が悪化した企業からすると今後も株価が回復するか不透明な中でストックオプションよりも、報酬が安定しているリストリクテッドストックの方がインセンティブが与えやすいという事ですね。

という事で今回はぴあがリストリクテッドストックを利用していたので、今後増えてくるかもしれないリストリクテッドストックについての説明でした!!


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