日本郵政がゆうちょ銀行株を3兆円も減損したのに決算に影響ないってどういう事なのか説明してみる。

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは日本郵政株式会社です。
ご存知の通り日本郵便、郵貯銀行、かんぽ生命などを筆頭に多数の傘下企業を持つ持ち株会社ですね。

こんなニュースがありました。

郵政、損失3兆円 ゆうちょ銀の株価下落
2020年09月30日20時38分
 日本郵政は30日、グループのゆうちょ銀行の株価下落に伴い、2020年4~9月期の単体決算で3兆404億円の特別損失を計上すると発表した。増田寛也社長は記者会見で「経営の健全性に影響を及ぼすものではない」と説明した。
 低金利による収益低下に加え、電子決済サービスを通じた多額の貯金不正引き出しなどが投資家の不安を招き、ゆうちょ銀の株価下落につながった。増田氏は「真摯(しんし)に受け止め、企業価値の向上に取り組む」と述べた。
 日本郵政が保有するゆうちょ銀株の簿価は1株当たり1732円。これが30日の終値で半分以下の821円まで値下がりした。
 会計制度上、連結決算には影響はないという。ただ、配当原資となる日本郵政単体の利益剰余金の取り崩しにつながり、配当が減る可能性がある。増田氏は「通期の配当は未定だが、(安定的な)配当政策に変更はない」と話した。

どうやら日本郵政はゆうちょ銀行の株価下落に伴い、3兆円以上の減損を計上するようです、しかし会計制度上連結決算には影響がないようで、一方で配当は減る可能性があるとのことです。

今回は日本郵政の決算を見ていこうと思っていました。
ですが減損したけど連結では影響ないってどういう事?配当減るってどういう事?という方が多いのではないかと思いましたので、日本郵政の決算を見ていく前に今回はその説明をしていこうと思います。

ちなみに、私は分かりやすさを重視していくタイプなので、細かい点や正確性は無視してざっくりとした説明で進めていきますのでその点はご注意ください。

それではまず前提の説明なのですが、決算というのには個別決算と連結決算というものがあります。

すごく当たり前な事を言いますが会社は1つの企業の事ですよね、日本郵政は日本郵政という一つの企業なわけです。

そしてこの日本郵政単体の決算が個別決算です。

日本郵政は上場して3.2兆円もの時価総額となっていますが、日本郵政自体は持ち株会社で大した事業をしているわけではありません。

支配権を持っている日本郵便やかんぽ生命、ゆうちょ銀行などが評価されているためにそれだけの時価総額となっているわけです。

となると投資家向けに日本郵政の情報開示をしようとした際に個別決算を見せても、ほとんど事業をしていないので評価が難しいんですね。
売上1億円だけど有価証券10兆円持ってますみたいな決算になってしまう訳です。

かんぽ生命、ゆうちょ銀行は上場していますのでまだ判断材料もありますが、非上場の日本郵便やその他の子会社なんてどう評価していいのか分からないですよね。

なので分かりやすくするために子会社で支配権もっているということは実質的には同じ企業なんだから、1つの企業と見なすために、日本郵便、かんぽ生命、ゆうちょ銀行それぞれの個別決算を合体させちゃおうぜというのが連結決算なんです。

そうすれば日本郵便の業績もかんぽ生命とゆうちょ銀行の業績も、日本郵政の決算書に載ってくるので投資家が判断が出来ますよね。

続いて今回何が起きているのかについては具体例で見ていったほうが分かりやすいと思いますので、具体例を見ていきましょう。

株式会社妄想する決算がゆうちょ銀行を2兆円で子会社化したとします(とても夢があります)

そうすると個別決算上、妄想する決算は有価証券を2兆円持っている扱いとなります。
ちなみに子会社の株式は時価評価されませんので基本的にはずっと2兆円です。

続いて連結決算を作ろうという話になります。
どうやって作るのかというと妄想する決算の個別決算からこの株式2兆円を無くして、ゆうちょ銀行の個別決算をそのまま合体するわけです。

つまりこの2兆円の株式というのが日本郵政そのものなんだぜって扱いにして合体させていくわけです。

例えばゆうちょ銀行の個別決算が
資産:現金3兆円 
負債:借入金1兆円 
純資産:2兆円
利益1000億円

株式会社妄想する決算の個別決算が
資産:有価証券2兆円
負債:借入金1兆円
純資産:1兆円
利益1000億円

だとするとこれを連結すると連結決算書は、妄想する決算から有価証券を無くして、ゆうちょ銀行をそのまま合体するので

資産:現金3兆円
負債:借入金2兆円
純資産:1兆円
利益2000億円

となります。

妄想する決算の個別決算を起点として、持っていた有価証券を無くして、資産と負債と利益(業績)つまりゆうちょ銀行をそのまま合体していますよね。

また個別決算では子会社の株式は基本的にずっと同じ価格だという話をしましたが、例外もあって時価が50%以上下落した時には1度再評価しましょう(減損しよう)というルールがあります。

例えば先程の例では、ゆうちょ銀行の株価が下落を続けて50%下落してしまうと、妄想する決算の個別決算では1兆円の減損を出す事になります。

そうすると個別決算では、保有している有価証券が1兆円となりますね。

しかし、合体させて連結決算を作る際には一旦2兆円に戻そうぜってします。

なんでだよって感じですが当初の考えの通りで実質的には同じ会社なんだから、会社を合体させて1つの企業としようって事なので、株価が下落したからといってゆうちょ銀行の状況が変わった訳じゃないよねって話なんです。

今日の株価が1000円で、明日は950円になったとしても会社の中身が変わった訳じゃないですよね、あくまで評価が変わっただけです。

なので連結上は元に戻すので、個別の減損分は業績に影響を与えなくなるんですね。

また配当には影響が出るかもと書いてありました。
これがどういうことなのかというと配当金というのは日本郵政という個別企業から支払われます。

なので個別企業の話ですから、個別決算の減損の影響が出るよねって事です。

また、配当金というのは資金があればいくらでも出していいという訳ではありません。

例えば日本郵政が1000億円銀行から借りて、全部配当として出して倒産してしまったら銀行は大損してしまいますよね。

なのでそういった銀行などを保護するために、一定のルールが設けられています。
なのでそのルール上3兆円もの減損を出すとそのまま配当に回せる金額が3兆円減ってしまうというわけです。

なので影響が出るかもしれないよという話をしているんですね。

という事でなかなか説明が難しく、長くて分かりにくい説明になってしまった気がしますが今回は以上です。

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