【無料回】会計システム業界総まとめ編(マネーフォワード・freee・オービックビジネスコンサルタント・PCA)
缶のファンタはどうしてペットボトルのファンタより美味いのかという疑問は人生をかけて解明する価値がある問題だと信じています。
さて、今週は会計システムを取り扱う企業について、マネーフォワード、freee、奉行シリーズのオービックビジネスコンサルタント、PCAを取り上げてきました。
そして今回は会計業界編まとめ、という事でこれまで見てきた各社の比較と考えてきたことをまとめていこうと思います。
まずは各社について軽く紹介をしていきます、詳しい内容については個別の回を読んでみてください。
まずマネーフォワードですが、クラウド会計を中心に経費精算や給与計算、勤怠管理など各種のバックオフィス業務をSaaS型で提供していて、そういったバックオフィス業務をシームレスに繋げる世界を作ろうとしている企業です。
また、その他にも家計簿アプリやファクタリングなどの金融事業などへも、積極的な領域拡大を進めています。
続いてfreeeですが、こちらもマネーフォワードとほぼ同様なサービスでバックオフィス業務をシームレスに繋げていく統合型ERPの企業だとしています。
オービックビジネスコンサルタント(以下OBC)も会計ソフトを中心にバックオフィス計のサービスを展開しています。
現状はオンプレミス中心に浸透している企業ですが、やはりクラウド化を進めようとしています。
最後に、PCAですがこちらも会計ソフトを中心にバックオフィス業務を行うソフトを提供しています。
そしてやはりオンプレミス中心で浸透していて、今はクラウド化を進めている企業です。
ざっくりとまとめると、マネーフォワードとfreeeはクラウドのみの企業で、OBCとPCAはオンプレミスとクラウド両面でのサービスを提供している企業となっています。
現状のクラウドサービス面では、OBCではシームレスに連携出来ないサービスがあったり、PCAでは提供しているバックオフィス系のサービスの種類が少なかったりと、クラウドという面ではマネーフォワードやfreeeのサービスに優位性があります。
それではまずは各社の市場からの評価というのを見ていきましょう。
市場からの評価という事で時価総額を見てみるとfreeeやマネーフォワードの評価が高く、OBCはそれに続く形でPCAは他3社の1/10程度の評価となっています。
やはりクラウドをメインとするサービスの2社は評価が高いですね。
続いて直近の3ヶ月(2021年4月~6月)の業績を少し見ていきましょう。
まず売上高をみてみると、OBCが圧倒的に大きく、それ以外の企業の倍ほどの売上規模となっています。
そしてそれに続くのがマネーフォワードで、PCA、freeeと続いています。
売上規模から考えると、クラウド系の2社は評価が高くPCAは評価が低めです。
利益面で見ても、圧倒的に大きいのはOBCでそこからPCA、マネーフォワードと続き、freeeに関しては赤字となっています。
マネーフォワードやfreeeは投資期だという事もありますが、利益面から考えてもクラウド系の2社は評価が高くPCAは評価が低めというのは変わりません。
営業利益率を計算してみると、各社とも利益率が高く投資期のはずのマネーフォワードも実は14.2%もあります。
これからは積極的に再投資していくという事で、今後は赤字の見通しとなっていますが十分利益を出せる状態だという事です。
会計ソフトの市場を考えてみると、会計情報という重要情報を扱いますので、販売には信頼性が重要で新興企業は参入しにくいはずです。
情報が流出しても困りますし、倒産されても困りますから新しい企業のサービスは使いにくいですよね。
さらに各国でルールや慣習が違いますから海外企業の参入も難しく、参入障壁が高いです。
なので一度浸透すれば高利益率を出しやすいと考えられます。
参入障壁は高いですがクラウド化という大きな変化が起きたことで、マネーフォワードやフfreeeが参入出来たという事でしょう。
また、クラウド化によって参加企業は増えていますから競争の激化が考えられます。
という事は利益率は悪化していく市場になるのでしょうか?
もちろん個別企業に関しては悪化していく企業もあるでしょうが、市場全体としては必ずしもそうはなりにくいと考えています。
というのも市場の開拓余地というのは非常に大きいからです
現状スモールビジネスでは約半数が会計システムを導入せず、エクセルや外注となっています。
そして会計ソフトを導入しない理由は知識やリテラシー不足だけではないですよね。
会計ソフトは初期投資が割と高いので、スモールビジネスであれば取引量が少なくシステムを導入するほどでもないからエクセルでという事だったり、人的な余力がないので外注でといった形で合理的に判断しても導入しないとなるケースは多いはずです。
ですがクラウドのサービスを導入して、大半の支払いをキャッシュレス化するとほとんど全てが自動記帳となっていきます。
そうするとエクセルより楽ですし、外注コストを無駄に支払う必要性がないので、自身のビジネスへ注力しようと考えた時に、スモールビジネスでこそクラウド化というのは進んでいく可能性が高いわけです。
さらにスモールビジネスでは、制度の改正や社会保険料率の改定など情報の変更を追いきれないので外部に頼りたいという事もあるわけですが、クラウド化すればそういった対応はサービス側が自動で更新してくれたりもします。
なのでこれまではある種合理的に判断して、外注していた層もクラウド化での市場開拓の余地は大きいという事です。
そういった事もあってか前年同期比で見てみると各社とも、売上は増加しています。
OBCやPCAでは前期はコロナの影響で若干業績が悪化していたという事がありますが、それでも既にコロナ前の水準を上回っています。
なので市場自体が成長しているという事が分かります。
さらにクラウド化による新たな収益源の獲得も考えられます。
何といっても金融事業との相性は非常にいいです、これまではそれこそ金融事業を行う企業の与信管理は企業からこういった会計情報を受け取って、行っていたわけです。
それがクラウドなので全て自動で取得できます、さらにこれまでは分からなかったような例えば銀行の取引頻度や規模やバックオフィス系の情報もあれば離職率や給与水準の変化など与信に直結しやすい部分の情報も自動で得られるでしょう。
なので与信管理の精度もそうですし、その人件費などの経費を考えても成長の余地があります。
さらに財務データから、ファクタリングなど財務的な提案や投資商品のおすすめのようなも出来るでしょう。
財務的な余力のある企業は銀行や証券会社に進められた投資信託や債券などを買っていたりしますが、人が稼働するので手数料がめちゃくちゃ高いですからこういったクラウドサービスの方がいい商品を提供できる可能性は高そうです。
成長率を見てみてもクラウド系の2社は高い成長率が続いていますし、これまで取れていなかった、バックオフィス業務を外注している企業やエクセルでやっていた企業の市場もとれそうですし、金融事業との相性もよさそうだという事でクラウドサービスを提供する2社は高い評価になっていると考えられます。
ちなみにクラウド市場において現状は顧客獲得の非常に重要な時期だと考えています。
というのもオンプレミスではこれまであった、サポート終了やシステムが古くなるといった買換え時期が来なくなるからです。
なのであえて、スイッチングコストを払って他社のサービスに乗り換える理由がなくなってきますから、解約率は低下していくはずで、クラウド化の移行期である今が重要なわけです。
各社のクラウド化による顧客獲得競争の優位性という話をすると、マネーフォワードは家計簿アプリによる信頼性の獲得や、確定申告との連携による、副業や個人事業主の利用者が法人になった際の継続利用。
freeeは現在クラウド面では市場トップという事で、データを預ける際は倒産しないんじゃないかという信頼性の確保があるかなと思っています。
そしてOBCやPCAは既存ユーザーの継続利用という事になるでしょう。
続いてマネーフォワードとfreeeについてもう少し詳しく見ていきましょう。
まずARRを見てみるとfreeeの方が15億円ほど大きいです、ちなみにマネーフォワードは家計簿アプリもサブスクリプションで提供していますから、会計システムというところにだけ目を向けてみるともっと差がついています。
一方成長率に関しては、前年同期比、前四半期比でみても同程度の成長となって拮抗しています。
もちろんfreeeの方が金額が大きいですから、成長率でみると同程度という事は、増加額でみるとfreeeの方が大きいという事です。
ではこの2社でどこに差がついているのかという事を見ていくと
ユーザー数はfreeeの方大きく1.76倍ほどあります、一方単価ではマネーフォワードの方が大きいです。
ユーザー数というところで大きな差がついているんですね。
単価の推移を見てみると、マネーフォワードは横ばいですがfreeeは増加傾向にありますから、単価面でもfreeeが追いついてくる可能性はありそうです。
しかしこの単価の評価は難しいです。
というのも2社とも個人向けの確定申告サービスもやっていて、個人は単価が低く法人が単価が高いわけです。なので全体では単価が横ばいのマネーフォワードも法人は単価が増えています。
つまり単価の低い個人の数の伸びによって単価が上がらないという事で、この個人は将来的に法人になって高単価になっていく方もあるでしょうから個人の増加は重要で何とも言い難い部分ではあります。
また、こうしたSaaS企業にとって解約率の低下というのは非常に重要です。
というのは解約率が下がると顧客獲得コストを多額に掛けれるようになるので、優位に立てます。
長期的な影響を考えると顧客を獲得するのに使ったお金以上に利益に貢献してくれればいいわけです。
なのでサブスクリプションである以上解約率の低下は、それだけ長期にわたって収益に貢献してくれる事を意味します。
となると当然解約率が低下すれば顧客獲得にかけられるコストを増やしてくれるという事で競争力に直結します。
解約率を見てみるとマネーフォワードが1.4%、freeeが1.3%ととなっていて若干ながらfreeeが上回っているようです。
これもまた個人に関しては確定申告が終了すると解約傾向になり一時的に解約率が上がるという事で評価は難しい部分もあります。
とはいえ現状のユーザーの獲得競争という事で考えると、単価や解約率の面の評価は難しいながらもfreeeの方が上回っていると考えられそうです。
今後はマネーフォワードも赤字となっても積極的に顧客獲得への投資を進めていくようですから、どう伸びていくか注目です。
という事で今回は会計システム各社についてまとめてみました。
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