新型コロナが居酒屋業界に与えた影響について総まとめ(グローバルダイニング・串カツ田中・鳥貴族・大庄・HUB)

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

3度目の緊急事態宣言がありましたので今週はその影響を最も受ける業界の1つでもある居酒屋業態を見てきました。
具体的には、ハブ、鳥貴族、大庄を詳しく取り上げています。
今回はここにグローバルダイニングと串カツ田中を加えて、居酒屋業態の現状についてまとめていこうと思います。

各社についてはこちらをどうぞ。

それではまずは各社の規模感や、店舗の特徴からざっくりと把握していきましょう。

時価総額としては上から順に
1.大庄:208億円
2.鳥貴族:182億円
3.串カツ田中:157億円
4.HUB:75億円
5.グローバルダイニング:26億円
と市場からの評価はこのようになっています。

店舗数としては
1.鳥貴族:622店舗
2.大庄:570店舗
3.串カツ田中:279店舗
4.HUB:109店舗
5.グローバルダイニング:41店舗
となっています、時価総額では大庄が最大でしたが店舗数では鳥貴族の方が多いわけですね。

しかし鳥貴族はFC(フランチャイズ)が多く直営店で比較すると
大庄:466店舗
鳥貴族:387店舗
串カツ田中:130店舗
HUB:109店舗
グローバルダイニング:41店舗
といった順になります。

直営比率を比べてみると、HUBとグローバルダイニングは直営店のみの運営となっていて、串カツ田中や鳥貴族はFCでシェア拡大を進めている事が分かりますね。

ちなにみ鳥貴族のチェーン展開の特色や、大庄の直営比率が高くなっている理由については個別の記事で取り上げていますので興味のある方はぜひ。

続いて直営店の1店舗当たりの売上を見ていきましょう。(直営店の売上合計を期末時点の店舗数で割っているので期中の出退店を考えると正確な数字ではないです)鳥貴族は直営店売上の開示がなかったので分かりませんでした。

グローバルダイニングは1.9億円と大型の店舗の運営がメインです。
一方で串カツ田中は5700万円と小型店が多いようで、その中間がHUBや大庄で1億円前後といった形になっています。

店舗に実際にいたことがある方は分かると思いますが、串カツ田中は、鳥貴族や大庄の庄やなどと比べると小規模店が多いですよね。

続いて新型コロナの影響を考えるためにもコロナ前までの業績を確認していきましょう。

売上高順で見てみると
1.大庄:610億円
2.鳥貴族:358億円
3.HUB:120億円
4.串カツ田中:100億円
5.グローバルダイニング:96億円
となっています。
店舗の規模が大きく、直営比率が高めだった大庄の売上が大きいですね。(ちなみに大庄に関しては飲食以外の事業も行っているという要因もあります)
店舗数は多かったものの直営比率が低めだった鳥貴族は2番手、直営比率が低く店舗も小規模店がおおい串カツ田中は、売上だと全て直営のHUBより小さくなっています。

ちなみに売上と時価総額とを比較してみると、大庄は時価総額トップながらも低めで、串カツ田中はそもそも店舗が人気だったという事もあり評価が高いことが分かります。

続いて粗利率を比べてみるとHUBが73.4%と非常に高いことが分かります。
ちなみにグローバルダイニングは明らかに低いですが、賃料を原価に入れていたりするようなので単純比較はできないため今回は触れません。
大庄に関しても飲食事業以外もやっているので比較が難しいです。

そしてどうしてHUBが高いのかというと、そのビジネスモデルに大きな要因があります。
英国風のPUBをモチーフにしているため、カウンターに商品を頼みに行く形式でお通しやチャージのようなものがかかりません。

なのでドリンクだけちょっと飲みに行くといった顧客も多いので、通常の居酒屋と比べてドリンクの売上が多くなるわけです。
もちろんドリンクの方が原価率が低いですから、他社と比べて粗利率が高くなるという事ですね。

一方串カツ田中は粗利率が低いですね、串カツがメインで食事を楽しみに来る方も多いでしょうし食材にコストをかけているという事です。
だからこそ人気となっている側面も大きいでしょう。

続いて営業利益率を見てみると、粗利率が高かったHUBも高水準ですが粗利率は低かった串カツ田中も6.0%と高いことが分かります。

一方で大庄、グローバルダイニングは低水準となっていますね。

HUBの利益率が高い要因としては粗利率が高い以外にも、サービス提供自体もセルフサービスが基本なので人件費が少なくて済むという側面もあります。

また、串カツ田中はそもそも人気店だった、FCが多いのでそこからのロイヤリティー収入があり利益率が高くなりやすいという事ももちろんあります。

ですがそれ以外にも、串カツ自体が専門技術が無くても作りやすいという事で職人がいりませんし、その作り方からそれ以外のオペレーションも大半がマニュアル化されているという事もありますし、店舗も小規模なので少人数で回せるという事もあり、販管費が少なくて済むという事で高利益率を維持しています。

だからこそFC比率が高く積極的な店舗展開が出来るんですね、通常FCでの店舗の質を担保することが難しいためなかなか積極的な展開は難しかったりしますが、串カツという商品特性を利用した展開だという事ですね。

ちなみにコロナ前の5年間の売上の平均成長率をみてみると
1.串カツ田中:41.3%
2.鳥貴族:17.7%
3.HUB:5.9%
4.大庄:-3.6%
5.グローバルダイニング:-11.6%
と大庄とグローバルダイニングに関してはコロナ以前から不振で規模が縮小してきていたという事が分かります。

営業利益の水準を見ても、グローバルダイニングや大庄は営業赤字化した期もあり不採算店舗の積極的な閉店などによって収益性確保に動いていたのがこの2社といった感じですね。

それでは各社のコロナ前までの状況というのが把握できたところで、各社のコロナの影響について把握できる直近12ヵ月の業績を見ていきましょう。(決算期のずれなどがあるため純粋な比較はできません)

全社とも大きく業績が悪化し大きな赤字転落となっている事が分かります。

コロナ前の水準と売上高を比較すると、HUBが32%と圧倒的な悪化となっています。
コロナ強く受けた都心部中心の出店だったこともありますし、営業も夜のみで2次会などでの利用が多かったという事もあり、8時からの時短要請には休業で対応していたのがこのHUBです。
なので休業も多くこれだけの悪化になってしまったんですね。

一方鳥貴族、大庄、グローバルダイニングは4割減といった形です。
串カツ田中は3割減といった形で比較的売上を維持できています。

これは、そもそも串カツ田中が人気店だったという事もありますが串カツというのが食事としての需要もあるという事で、テイクアウトやデリバリーの売上が増加したという事もあるようです。
現状では全体の売上の10%強程がデリバリーとなっているようです。

やはりデリバリーで売れる商品があるかどうかというのは重要なんですね。

純損失の金額を見ていくと
1.大庄:103.5億円
2.HUB:27.5億円
3.鳥貴族:23.8億円
4.グローバルダイニング:15.1億円
5.串カツ田中:7.8億円
となっています。
大庄は直営店も非常に多いので大きな損失となっています、一方串カツ田中は損失額としても少なくて済んでいますね。

その結果自己資本比率も各社とも大きく下落してしまっています。

この損失がどの程度の規模の損失なのか把握するために、コロナ以前の営業利益の何倍程度の損失なのか見ていきましょう。
ざっくりと何年ぐらい営業頑張れば、コロナの影響を返し終えるのかという話です。

上から順に
グローバルダイニング:37.7倍
大庄:14.1倍
HUB:3.9倍
鳥貴族:2.0倍
串カツ田中:1.3倍
となっています、正直グローバルダイニングや大庄では取り戻しきれるような水準ではない事が分かりますね。

続いて財務状況を見ていきましょう。

まずは、簡易的な財務指標である流動比率から見ていきます。
ざっくりと110~120%超えてたら安全そうだよね的な簡易指標です。

100%以下となっているのはHUBの95%と、グローバルダイニングの38%となっています。
グローバルダイニングが明らかに低水準です。
東京都の時短要請には応じないという事でニュースにもなっていますが、財務状況も良くないですし、店舗も大型店が多く協力金なんかではどうにもならないという状況だったので時短や休業なんて受け入れられないんですね。

続いて業績不振の中で借入金が増加した企業は非常に多いですが、有利子負債、特に借入金の状況がどうなったのかを見ていきましょう。

借入金の増加率としてはHUBが6880%とそもそもの借入金が少なかったこともあり大きな増加です。
鳥貴族も277%と大きいですね、大庄、串カツ田中も倍ほどになったようです。

一方でグローバルダイニングは8%増と非常に低水準です、実はグローバルダイニングはコロナ前から業績が良くなかったという事もあり財務状況は悪化しており、継続企業の前提に関する注記がなされているような状況です。

財務状況も良くないのに借り入れが増えていないというのは、増やしていないのではなく借りる事が出来ないという状況だという事でしょう。

では続いてはこの借り入れ負担がどの程度なのか、営業キャッシュフロー(コロナ前)対有利子負債(リース債務除く)比率を見てみましょう。

ざっくりと、コロナ前の水準まで業績が回復したら何年ぐらい働くと借入金返せるのって数字です。
もちろん店舗を維持するにはそこへの投資も必要ですから、稼いだキャッシュのすべてを返済に回せるわけではないのでもっと期間かかります。

上から順に
グローバルダイニング:5.7年
大庄:5.1年
串カツ田中:3.9年
鳥貴族:3.6年
HUB:2.3年
となっています、借り入れ負担が大きく増えていたHUBですがそもそもが少なかったのでコロナ前の水準まで回復してくれればといった感じですね。

しかしこの後にも3度目の緊急事態宣言があり、今回に関してはグローバルダイニング以外は酒類の提供禁止を受けて休業を決めている店舗が多いですから、さらに財務状況の悪化が考えられます。

長期的な負担となる事は間違いないでしょう。

そんな形で不振が続き財務状況も悪化している各社ですので、店舗数もコロナ前の水準と比べると減少しています。
特に大きいのがグローバルダイニングの8.9%減と大庄の7.5%減という事で、財務が苦しいところからやはり閉店を決めているようです。

一方で串カツ田中は6店舗増となっています。
業績は悪化しつつも居酒屋業態では比較的ましな業績で、財務的にもめちゃくちゃ苦しいという状況ではないですから、そんな中でわずかながらも出店を進めていたようです。

コロナで好立地の店舗にも空きが出ていますから、そういったところを狙って出店しているという事でしょう
となると、コロナからの回復に関しても串カツ田中が早そうですね。

最後に直近の6か月の月次を見ていきましょう。(串カツ田中は月次の開示をやめていたので除いています)
GoToの影響としては鳥貴族が好調で80%以上まで回復しています、しかしそれ以降は緊急事態宣言もあり時短や一部休業もあり前期比4割以下という水準前下落しています。

GoToの恩恵も受けられず、2度目の緊急事態宣言に全店舗休業で対応したHUBが常に最大の悪化率で、特に1~2月はゼロに近い水準です。

一方で、緊急事態宣言中も通常営業を続けたグローバルダイニングは非常に好調で2月、3月は前年同期比100%越えと緊急事態宣言が追い風となっていたことが分かります。

ちなみに2~3月は昨年の時点で既にコロナの影響が出始めていたため、コロナ前の水準と比べると伸びているわけではありません。

ですが営業を続けた結果グローバルダイニングでは、2021.1~3月では黒字化を達成したようです。
なのでここ3か月程度で見ると最も業績がいいのはグローバルダイニングという事になっていますね。

財務的にも非常に苦しいですから、この黒字化というのは非常に大きいでしょう。
しかし1つの大きな懸念点としてはまだまだ財務状況は苦しい中で、借入や借換が今後も継続して可能なのかという点です。
現状は金融機関から借換が進んでいるようですが、はっきりと行政からの要請に従っていない状況で、銀行などがら新規の融資などが必要になった際にそれを行えるのかという点には不透明感が強いですよね。

なので最も苦しいのはグローバルダイニングというのは変わっていなそうです。

という事で全体をまとめてみると、全社コロナの影響を強く受けて大幅な赤字転落となっています、その中でも売り上げ面で最も強い影響を受けたのが行政からの要請にのっとり時短や休業を続けたHUBで、少なかったのがコロナ前から好調でテイクアウト需要もあった串カツ田中となっています。

財務的にも業績的にも悪影響が大きかったのがコロナ前から不振だった、大庄やグローバルダイニングで、特にグローバルダイニングでは財務状況が非常にひっ迫する中でも借入の受け入れ先がないといった状況だったようです。

そんな中でグローバルダイニングでは時短要請を受け入れないという判断をした事で直近の3ヶ月では業績が大きく回復し黒字転換となっていますが、まだまだ苦しい状況にいるというのは間違いないでしょう。

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