【無料回】映像制作業界編まとめ(東映・東映アニメーション・日本テレビ) 広告モデルとの差がついた話

最近は映画をよく見ています。

ネットで評価で評価は見やすくなりましたし、レコメンド機能も発達しました。

視聴データも取りやすくなってそれが作品制作に活かされる時代ですから、当然ハズレの作品に触れる経験が減っています。

なので不思議なもので、ハズレ映画を見ると謎の高揚感があります。

何ならハズレを見た時の方が高揚感があります

もちろん満足感はありません。

さて、これまでは様々なコンテンツを作っている企業を取り上げてきました。

具体的には、アニメを作っている「東映アニメーション」ドラマや映画を中心とする「東映」マンガや書籍、雑誌やニコニコなどもやっている「KADOKAWA」テレビ局を運営する「日本テレビ」です。

今回はそんな4社の中でも映像コンテンツというところを中心にしている「東映」「東映アニメーション」「日本テレビ」を中心に見ていこうと思います。

もちろん東映や東映アニメーションはコンテンツを作ってそれを売るというのがメインです。

一方で日本テレビはコンテンツを作るというところは同様ですが、コンテンツを買う側でもあり、作ったり買ったりしたコンテンツを配信して広告収入を得るというモデルで収入源にも違いがあります。

その辺の違いも考えながら見ていこうと思います。

各社の具体的な状況については個別に取り上げた回をご覧ください

それでは早速各社の市場からの評価、時価総額を見ていきましょう。

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東映アニメーション:7576億円
東映:3436億円
日本テレビ:3395億円
となっていて実は東映アニメーションの評価が圧倒的に高い事が分かります。

どうしてこれだけの評価の差が生まれているのか、まずはコロナ前の状況から考えていきましょう。

まずコロナ以前の5年間の売上高の平均を出してみると

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日本テレビ:4213億円
東映:1308億円
東映アニメーション:461億円
となっていて、売上規模が大きいのは時価総額の小さかった日本テレビで売上規模小さいのは時価総額が最大だった東映アニメーションです。

ではどうしてそれだけ評価に差がついているのかというと、売上の伸びを見てみると一因が分かります。

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明らかに売上の増加率が高いのが東映アニメーションで、そこから東映、日本テレビとなっています。

2016年3月期~2020年3月期までの売上高のCAGR(年間の平均成長率)では
東映アニメーション:13.0%
東映:3.6%
日本テレビ:0.7%
と非常に大きな差がついています。

というのもコンテンツを作って売るという企業では、その売り先は増えています。

ほんの10年位前まではテレビや映画で配信して、DVDを販売して終わりというのが基本的な流れでしたが、今はそこに動画配信サービスも加わっています。

そして動画配信では商品棚や映画館、テレビ番組の枠のようね制約はありませんので、過去作の資産化や長期的な販売も容易です。

そしてアニメで考えれば、動画配信による海外展開も非常に容易になっています。

一方テレビ局ではメインの収入源であるテレビ広告は伸び悩んでいますから、その差が売上の成長率に出ているわけで今後の成長可能性にも差がある事は明白でしょう。

東映と東映アニメーションは動画配信という新しいマーケットが広がっていて、さらに東映アニメーションは海外という大きなマーケットへの広がりも見せています。
一方で日本テレビはテレビ広告という縮小市場にいるという違いがあるわけです。

また、もう一つ時価総額に大きな差がついている要因としては利益率があります。

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2016年3月期~2020年3月期の営業利益率の平均を取ってみると

東映アニメーション:26.0%
東映:14.6%
日本テレビ:11.8%
と利益率にも差がついています。

さらに営業利益率の推移を見てみても、東映アニメーションは利益率も大きく伸びていて、東映も増加傾向です。
一方で日本テレビは下落傾向にあります。

それもそのはずでコンテンツの配信先が増えたからといって、製作コストが大きく増える事はありませんから、その分利益率は上がりやすいというわけです。

さらに海外展開などが容易になれば、利益率の高いゲームやグッズなど2次利用への版権収入も期待できますから、利益率にも差がついてしまうわけです。

売上の成長可能性や、利益率の違いというのも市場からの評価の差に表れているという事です。

それでは各社のコロナ以前の状況が把握できたところで、コロナ禍での変化を見ていきます。
まず見ていくのは2020年4月~2021年3月までの業績です。


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売上高は前期比で
東映アニメーション:94.1%
日本テレビ:91.7%
東映:76.1%
となっています。

東映は「Tジョイ~」のようなシネコンをやっていたり、リアルでのイベント関連の事業も規模が大きかったりという事もあって明らかに売上は悪化しています。

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利益面でも同様で大きく減らしているのが東映で、下落幅が小さいのは東映アニメーションとなっています。

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ですが利益率を見てみると違ってきます、先ほど見たコロナ以前の平均の利益率からの変化を見てみると
東映:14.6%→12.1%
東映アニメ:26%→30.0%
日本テレビ:11.8%→8.8%
となっていて最も利益率を悪化させたのは日本テレビです、番組制作費の削減を進めたものの各社が広告の抑制に動く中で利益率は悪化しています。

東映では、リアルを中心とする事業は大きな悪影響を受けつつも利益率の高い映像配信などが活況となった事で利益率でみるとそこまで大きな悪化はなかったわけです。

そして、東映アニメーションでは利益率では増加しています。
やはり利益率の高い動画配信などは巣ごもり需要がありましたから率で見ると好調になっています。

続いて2021年4月~9月の業績をコロナ前と比べて見ていきましょう。

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まず、売上高では東映がコロナ前を超える水準と成長していて、そこから日本テレビ東映と続いています。

海外まで大きくマーケットを広げられる東映アニメは好調で、リアルな事業規模も大きい東映は売上悪化が続いています。

続いて利益面を見ていきましょう。
コロナ前の平均の営業利益率からの変化を見ていきます。

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東映:14.6%→17.7%
東映アニメ:26%→37.5%
日本テレビ:11.8%→12.5%
となっていて、実は各社とも営業利益率が良化しています。

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そして営業利益の金額の推移をみても
日本テレビ:142.1%
東映アニメーション:128.6%
東映:75.6%
となっていて、日本テレビと東映アニメーションは金額ベースでも増加しています。

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ちなみに東映に関しては、映像関連事業だけに絞ってみると売上はコロナ前の9割程度の水準となりながらも、利益面ではコロナ前を上回る水準となっていて、映像に絞れば各社とも利益を増やしています

個別回で詳しく取り上げましたが、東映アニメーションや東映は利益率の高い配信売上や海外版権売上の増加で利益率は高まっています。

一方で日本テレビは、広告収入自体はコロナ前の水準に戻った程度だとしながらも、番組制作費を大幅に削減するなど、コストカットによって利益率を増加させています。

利益でみるとコロナ前を上回るような3社ですが、その内容としてはマーケットの拡大による増益の東映アニメーションと東映、コスト削減による日本テレビという違いが出ています。

という事でコロナ以前から、東映や東映アニメーションは配信サービスの普及によってコンテンツの売り先が増えた事で成長が続いていて、特に東映アニメーションはアニメという海外展開もしやすいコンテンツを作っている事で大きく伸びています。

一方で日本テレビは広告収入のモデルだという事で、テレビ広告の伸び悩みもある中で売上は横ばいといった状況でした。

コロナの影響としては、リアルにも事業を展開する東映が最も大きな影響を受けていましたが、利益率の高い動画配信の好調などで利益率でみると下落幅は少なく済んでいます。

そして2021年の4月以降では、映像事業では各社とも利益面はコロナ前を上回るような水準となっています

ですがその要因としては、利益率の高い配信サービスやその2次利用による版権収入で増益となった東映と東映アニメーション、番組制作費の削減によて増益となった日本テレビと違いは出ています。

という事で今回はこんな感じです。

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