日本製鉄の決算から日本の未来が学べるから見といたほうがいいよって話

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今日見ていくのは日本製鉄株式会社です。
鉄鋼の生産を主力事業としている会社で、日本製鐵と住友金属工業の合併によってできた日本最大の鉄鋼会社です。
かつては「鉄は国家なり」といわれていた時代もあり、製鉄は日本国内においても主要産業でしたが最近は目立たない業界になってきていますね。

こんなニュースがありました。

日本製鉄、資産売却1000億円上乗せ
設備費用、負債に頼らず

日本製鉄は政策保有株式を中心に資産売却を加速する。従来想定より1000億円上乗せし、現在の中期経営計画の期限である2021年3月末までの3年間で合計4000億円超売却する。新型コロナウイルスの感染拡大も重なり、世界景気の先行き不透明感は強い。財務悪化につながる負債には頼らず、資産売却で設備更新などの資金を捻出する。

どうやら設備更新の費用を借り入れなどの負債に頼らず、資産売却でまかなうようです。
つまり将来利息を付けて返せるだけの自信がないという事ですね、そんな日本製鉄の今後を探っていきましょう。

まずは、こちらの資料をご覧ください。

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純利益は2511億円から-4400億円の見通しへと大赤字へ転落の見通しとなっており、その大きな要因が減損損失のようです。
しかし減損の影響を除いても、事業利益が3369億円から540億円へと大きく減少する見通しのようですから非常に厳しい状況にいることが分かります。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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減損損失の要因が、鹿島・名古屋・広畑・呉の製鉄所による影響であることが分かります。

実は日本製鉄はこれらの製鉄所で高炉の休止を決定しており、その規模は生産能力の5%にもなります。
大規模な休炉によって多額の減損を計上する必要が出てきたのですね。

改めて先ほどの資料をご覧ください

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赤線部分を見てもらえれば分かりますが、そもそも減益となった大きな要因は、出荷数量の減少と販売価格の低下、原材料価格の高騰であることが分かります。

これまで日本の製鉄市場は高品質を売りにしてきましたが、最近では特に中国の製鉄能力も向上してきており日本の製鉄業界は高品質という競争力を失いつつあります。
さらに中国が鉄鋼の最大の輸出先なのですが、輸送費を考えるとどうしても販売価格は高くなりますから、同程度の品質であれば中国の国内生産との勝負は厳しい事が容易に想像できると思います。

また、他の業界と同じように低品質製品に関してはコスト面で考えて中国に勝つことは不可能に近い状態ですので、低品質、高品質ともに競争力を失っているのが現状です。

そんな状況ですから、販売価格も上がらず出荷数量も減り大幅減益。
さらに生産過剰の状況となり、在庫の評価損が440億円となって大きく利益を押し下げています。

そこで休炉という選択を取ったわけです、生産量を減らして供給量を調整しコスト削減したほうがいいよねって判断です。

作れば作るほど儲かるからとにかく長時間稼働しようという、昭和的なスタイルが製鉄業界でも明確に崩壊した事が分かりますね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

画像4

日本製鉄は①高齢化と人口減少による国内の需要減少②中国やASEANの生産能力の増強③製鉄所が50年経過し設備が老朽化、という3つの課題を挙げています。

この課題って完全に今の日本が抱えている課題と同じですよね。

①少子高齢化と人口減少で内需は縮小していく②中国を筆頭に各国は国力を増強していて、多くの産業で日本の強みであった高品質が通用しなくなっている③インフラは完全に老朽化しておりスマートシティなどの改革をしないとインフラの維持が出来ない、といった課題を日本は抱えていますよね。

さて日本製鉄は先ほどの課題にどのように取り組むのでしょうか?

こちらの資料をご覧ください。

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どうやら、①効率化とデジタル化を進める②規模を縮小して、生産量の最適化を図り高付加価値・高収益を目指す③成長分野・市場へ投資する④不採算部門から撤退する、というような戦略で行くようですね。

これも日本が国として目指しているものと非常に似ていますよね、課題も対策も非常に近いという事です。

日本製鉄と日本の未来!!

日本製鉄も含め多くの大企業、さらには日本という国全体として撤退戦を迫られる時期が来ています。
成長を目指す路線から、撤退すべきところではしっかり撤退戦をやって損失を減らそうよというフェーズになったという事です。

市場を取り巻く環境を考えてみても、日本製鉄が今後世界の主要な企業となる未来を考える人はほぼいないと思いますし、私も業績低迷が続くことを予測します。
しかし国としては製鉄能力を持つことは必要ですので、上手に撤退戦を行い収益体質を変化させ、持続可能な企業になれるかは非常に注目です!!

もちろん規模の小さいほうが結果が早く出ます。
つまり、日本製鉄の撤退戦のどこが上手くいってどこが上手くいかないのかを知る事は、同じ課題に対し同じ解決策で立ち向かおうとしている、より規模の大きな日本という国としての撤退戦を考えるうえで非常に学べるところが多いはずです。

なので日本製鉄の撤退戦には今後も注視してみると日本の未来が見えるかもしれません!!

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