躁うつ病時代を生き抜く創作術1-創作はメンタルヘルスに悪い時代-
まず、「創作」することはなぜ、こんなにもハードルが高くなってしまったのでしょうか。なぜ、こんなにも「つくること」を習慣化するのが難しくなってしまったのでしょうか。この本を読んでいる方は、少なくとも「つくること」に対して、何かしらの興味を持っているはずです。でも、なぜかつくれない。どうやって作ればいいかわからない。そうやって、ドツボにハマっている方も多いのではないでしょうか。思い返してください。例えば小学生の時、漫画を描いていた人も多いはず。例えば授業中にこっそり、ノートに物語を書いてみたり、鼻歌で曲を作ってみたり、オリジナルのキャラクターを作ったり、みんな、子どものころは、何かしら自然に創作に取り組んでいたはずなのです。休み時間、放課後、なんなら授業中にだって、創作に没頭していた人は多いはずなのです。
しかし、大人になるとなぜ、創作が難しくなってしまうのでしょうか。そして、大人になればなるにつれ、創作物を他人に見せることが難しくなってしまうのでしょうか。
創作はメンタルに悪い時代だと感じています。自己開示やストレス解消のための自己表現として、創作は本来自分だけの楽しみにできるはずなのに、創作することは自分だけの楽しみにできるはずなのに、そして、他者の評価を気にせず、自分だけの世界に浸れる、どこまでも孤独な時間のはずなのに、他人の評価が気になって、創作に集中できなくなっている。創作物をSNSやネットにアップロードし、他人の評価を気にしてしまう傾向が強くなっている気がします。それはメンタルがやられてしまいます。僕は双極性障害という障害を抱えながら生活しているのですが、メンタルを悪化させるのは、他人との比較ですぐに鬱になります。創作物をネット上にアップするということは、否が応でも、クオリティの土俵に上がるということです。全てが評価対象になるのです。それが今や創作する上でのベーシックですから、「創作」はメンタルに悪い時代なのです。ありとあらゆる事象に、他人の目があり、そして評価されている。そうでなかったとしても、評価されているように感じています。それが癖になると、どんどん「創作」から離れていってしまう。
ですが、一方で、メンタルを救ってくれるのも創作なのです。例えば僕のように、鬱になるときは、前向きに生きることが極端に難しくなります。本当に前を向けなくなります。まるで時間が止まったように、一日中、体が硬直している。気がつくと自分を責めてばかりで、やがて他人をも罰したくなる。これが非常に危険なのです。そんなとき、毎日の創作は、自分を責める気持ちを表現の力に変える大切な手段になります。しかし今は、創作物をSNSにアップして他人の評価にさらすことが当たり前になっているため、純粋に自分のための創作をするのが難しくなっています。つまり、せっかく「自分のため」の創作物なのに、わざわざネットにアップして、他人との比較で自罰的エネルギーを溜め込んでしまいがちなわけです。
と、いいつつも、僕もほとんど毎日パステル画を描いて、毎日Instagramにアップしています。「お前もSNSに絵をアップしてるじゃないか!」そうなんです。大きな声では言えませんけど、僕もSNSに作品をアップしちゃってるんですね。こんなことを書きつつも、僕も描いた絵をアップして、たまに他人と比較しちゃって、そして自罰的、自己否定に陥ったりしています。僕も皆さんと同じなんですね。
僕が絵を描き始めたのは、2022年の8月のことで、最初のきっかけは妻の帰りを待ている間の、ちょっとした暇つぶしでした。そこからパステル画を始めて、あれよあれよというまに、2023年はなんと2回も、2024年は1月から、つまり年の初っ端から、パステル画の個展を開催します。つまり創作が、根のように広がっていったんです。絵を描くことで、メンタルが回復した、とはとても言えませんが(今でも月に一回くらいは鬱になります)ですが、少なくとも自分の今日のメンタルを測る場にはなっています。それを「これが今日の僕の体調ですよ〜」という具合に、ネットにアップして、みんなに僕の体調を「見てもらっている」ぐらいの気持ちです。それが個展やら、作品集の制作やらに繋がっていったんです。
でも、最初はやっぱり他人と比較して、自己否定に陥っちゃっていました。パステル画なんて描いたことないのに、ものすごく上手い人と比べちゃって、その人の活動量と、活動範囲と、評価のされ方と比較しちゃって、メンタルが悪化しちゃうこともありました。つくづく、他人のことを覗き込めるSNS時代はメンタルに悪い時代だと思います。気がつくと他者との比較がはじまり、そして、自罰的になる。自分を死に追いやる危険性がある自罰は絶対に避けるべきだし、他人を死に追いやる可能性がある他罰も、絶対に避けるべきです。ですが、この自罰他罰に陥らないためにも、「創作」が必要なのです。躁鬱は、自罰他罰との戦いです。格闘です。そのために「創作」を習慣づけて、1日のエネルギーを使い切らないといけないのに、「創作」がメンタルを悪化させていく。この矛盾した時代、二律背反の時代に僕たちは生きています。
この行き場のないエネルギーは鬱のもとです。やり場のないエネルギーが僕らを鬱へ導きます。仕事じゃない、他人のためじゃない。自分だけの「創作」の時間が必要なのです。ですが、今は自分だけの「創作」の時間を持つことが難しくなっている。なぜなら、ネットにアップすることを前提として、他人に評価されることを前提として、「創作」する時代になっているからです。
では、大きな矛盾を孕んだ昨今、創作を続けていくための心構えとは何でしょうか。僕なりの創作に向き合う上での大切な思考法をお伝えします。
創作とは本来、自己表現の喜びを味わうためのものです。しかし、「上手くなりたい」「評価されたい」という欲求に振り回されてしまっては、その本質を見失ってしまうかもしれません。
内面の嵐、つまりうつ状態と向き合いながら創作を続けるためには、これらの欲求にとらわれ過ぎないことが大切です。自分の表現をありのまま受け入れ、創作のプロセスそのものを楽しむ姿勢を持つこと。そして何より、自分らしさを発揮する喜びを大切にすること。このようなマインドセットが、創作における不要な苦しみからの解放につながるのです。
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