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夫婦間で一つでもビジョンを共有してると、そこにチームとしてのパワーが生まれる。ー塚田良一・千絵子夫妻(ROI’S TAILOR)

ニソクノワラジ スピンオフ企画「ニニンサンキャク」第2弾。

今回インタビューを行ったのは、大阪の塚田さんご夫妻。

塚田さんは『ROI’S TAILOR』というテーラーを、夫婦二人で経営している。

インタビューを通して見えてきたのは、お互いを思いやり、お互いを尊重し合いながら、ビジネスをしていく夫婦の形。

公私ともにパートナーとして長年ともに歩んできたお二人の言葉から、これからの夫婦象が浮かび上がった。

<Profile>

塚田良一さん・千絵子さん

大阪府出身。専門学校卒業後、服飾の道へ。東京でアパレル関係の仕事に従事した後、独立し、OEMの会社を立ち上げる。2011年に大阪へ拠点を移し、良一さんは『ROI’S TAILOR』千絵子さんは『Tsubara Tsubara』というブランドを立ち上げ、夫婦ふたりで会社経営を行っている。

もっと直接お客様と関わり合える仕事にシフトしていきたくて、ふたりの出身地である大阪に戻ることにしたんです。


ー塚田さんはご夫婦でテーラーを経営されています。もともとは東京でも会社を経営されていたとお聞きしましたが、なぜ出身地である大阪に戻られて、再びご夫婦で会社を経営することになったのでしょうか?

塚田良一さん 実は東日本大震災がきっかけなんです。

塚田千絵子さん 私たちはもともと、専門学校の同級生で、卒業後は東京のアパレルメーカーに就職しました。その後、結婚したんです。

良一 結婚してからも東京で、OEMという、バイヤーやデザイナーと話し合いながら一緒に商品を作っていく会社を経営していました。でも2011年の東日本大震災で、岩手や福島、それと新潟や山形の仕事がゼロになってしまって・・・。「このまま東京にいても意味がないな」ってなったんです。

千絵子 東京っていう場所はすごく忙しいところだし、自分たちもそこそこな年齢になっていて、生活自体を根本から見直したいという気持ちがあったんです。それまでは忙しさに追われて自分たちの生活についてゆっくり考える時間がなかったんですよね。それが震災をきっかけに考えざるを得なくなったんです。当時は計画停電だったり、物資が入ってこなくなったり、買い漁りがあったり。そんな現状を目の当たりにして、自分たちの生活について色々と思いが募っていって。東京は日本で一番人口が集まっているところだけど、消費しかしていない街に思えたんです。それで、根本から自分たちの生活を変えたくなったんです。当時は洋服を作っていても、お客様の顔が見える仕事ができていなかった。だから、もっと直接お客様と関わり合える仕事にシフトしていきたくて、ふたりの出身地である大阪に戻ることにしたんです。

良一 戻るにしても、自分たちで発信をしていかなければ食べていけないよね、って話になって、僕が『ROI’S TAILOR』というオーダーメイドスーツのブランドを。妻が『Tsubara Tsubara』というレディースの洋服のブランドを立ち上げました。震災後だから、それが約9年前のことですね。

千絵子 今はオーダースーツの仕事を生業にしています。オーダースーツの仕事を主軸にしつつ、私も自分で作りたい物を作っている、という感じですね。

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ー結婚前は別々の会社で洋服関係の仕事をされていたそうですが、夫婦二人で独立して自営をやろうと思ったのはなぜなのでしょうか?

良一 僕はサラリーマンだったんですけど、あまりサラリーマンである自分にピンと来てなかったというか、単純に合わなかったんですよね(笑)それで、「会社辞めて独立するわ」ってなった時に子供ができて、妻も会社を退職したんです。最初は一人でやり始めたんですけど、僕は経理とかはできないので、それを手伝ってもらうようになったんです。

千絵子 立ち上げ当初は経理とか雑務関係は私が担当していました。夫も一人でやってみる、とは言っていたものの、営業もやって、打ち合わせもやって、経理もやってって、全部はひとりでできないじゃないですか。それで、私はOL経験もあるので、「私やるよ」って手をあげたんです。最初は自宅でやっていたんですけど、量がどんどん増えてきて、しばらくしたら子どもを保育園に預けて会社に行くようになったんです。

ー現在はどのように役割分担されていますか?

良一 企画・生産・営業は僕が担当していて、妻は生産部分をフォローしてくれていますね。あとは、オリジナルの製品を作る時にアドバイスをもらったりしています。自分ひとりで考えていると、どうしても煮詰まっちゃうんですよね。そんな時に「こういうのどう?」って聞いたりして「イケてないなあ。却下」みたいな厳しい答えをもらったりしていますね(笑)

ー(笑)千絵子さん自身は消費者の目線を意識してアドバイスされているんですか?

千絵子 消費者の側に立った目線と、売り手側作り手側で見ている目線。両方ですね。

良一 第二の目が入ることで、ミスに気づくこともできます。どうしても量があると捌ききれない時がありますし、それを一緒にやってもらうことで間違いを防げるし、商品の完成度も上がりますよね。

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ーご夫婦でものづくりをする上で難しいな、と感じる部分はどんなところでしょう。仕事上で喧嘩したりとかはありますか?

千絵子 仕事のことで喧嘩はしないですね。でも、家でも仕事場でもずっと一緒なので、仕事と関係ないことで喧嘩をするとやりづらい時もありますね(笑)

ー(笑)プライベートと仕事は意識的にきっちり分けるようにしているのでしょうか?

千絵子 仕事場で作業をしている時って、ずっと考え事をしているので、何を言っても耳に届いていないんですよね。プライベートなことで何かを言ったとしても、あとで「聞いてないよ」ってことになるので、仕事場でプライベートな話題は出さないですね。お昼ご飯食べている時とか、休憩している時とか、頭の中に余裕があるタイミングを見計らって言うようにしています。

良一 僕はあんまり考えたことなかったなあ。

ー夫婦で会社を経営されていなかったら、今とはまた違った夫婦の形になっていたと思いますか?

千絵子 それはすごく思います。退職せずにずっと東京のアパレルメーカーで働いていたら独立して開業していたか疑問ですし、もしかしたら二人とも別々の仕事をしていたかもしれないし、子どもも0歳児の時から保育園に預けていたかも。だから独立しようってなっていたかどうかもわからないですね。

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ー自営業をしていると、体力的にも精神的にもしんどいことも多いと思います。そんな時、公私ともに一緒にいるパートナーはどんな存在なのでしょうか?

千絵子 一言で表すなら、「相方」ですよね。夫は会社の看板で、セミナーを主宰したり、とてもチャレンジングな人なんです。チャレンジが増えると、それに比例してどんどん忙しくなる。その中で私は私ができることを担っていると言う感じですね。

良一 同じ専門学校出身だし、業界のこともわかってくれている。だから「いざ!」って時には助けてもらえる。それはすごくありがたいですね。

同性にしろ、異性にしろ、同じビジョンを持った人と人同士が繋がれば、夫婦という関係に、もっと新しい形が生まれるんじゃないか、と思います。

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ーこれからの時代、「夫婦」という形には、どのような変化が訪れると思いますか?

良一 これからの世の中は、人と人とのフィジカルな繋がりがもっと強くなっていくんじゃないか、って思うんです。ネットを介さない、アナログな繋がりが濃密になる。その中で一緒にビジョンを共有して、そのビジョンを一緒に追いかけられる人たちの繋がりはより強固なものになると思うんです。将来に向けて「私たちはこうなりたい」っていう共通のビジョンがある人たちが、より強く繋がっていく社会になると思います。

千絵子 夫婦の関係も、そういったビジョンを共有した繋がりがないと、一緒に歩んでいけないんじゃないかな。

良一 人間は考える生き物なので、自分を成長させたいとか、自分はこうなりたいんだ!っていうビジョンがないと前向きになれないんですよね。だから、夫婦間で何かしら一つでもビジョンを共有してると、そこにチームとしてのパワーが生まれる。今はいろいろな情報が世の中に溢れていて、メディアもグッズも多種多様なものがあるけど、これから問われるのは、生活の目標だったり、将来に向けてのビジョンだったり、生きる上での基本的なことだと思います。そういった基本的なことが、生活の潤滑油になる社会がやってくるんじゃないかと。

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ーもっと多様性が認められる社会になって夫婦の形も変化していくと、夫婦で独立して仕事をしたり、公私ともにパートナーとなったり、より濃密な夫婦の関係も生まれてくると思います。

良一 SNSやスマホが出てきたことによって、良いもの悪いものが瞬時に判断されるようになりました。その中で、どうやったらこの社会を生き抜いていけるのか。その課題とビジョンを共有して一緒に考えていける人たりが、幸せになっていくんじゃないかなって。これからはSNSやネットの繋がりじゃなくて、ライブでの繋がりが重要になっていく。これからの時代は、同性にしろ、異性にしろ、同じビジョンを持った人と人同士が繋がって、夫婦やパートナーシップという関係に、もっと新しい形が生まれていくんじゃないかなって思います。

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