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勇敢な雄鹿

昨年の12月24日、クリスマスイブの夕刻、トナカイならぬ鹿の群れに出会った。

山…と言ってもそれ程の山奥ではない、市街地から30分程の高原で暮らすようになって40余年、リス、キツネ、タヌキ位は普通に、熊にも何回かは出会ったことがあるが、鹿に出会ったことは今までなかった。
その日、所用で自宅近くを車で走行中、西の空がオレンジ色に染まり始めているのに気付き、近くの栄峰と言う地区へ行ってみることにした。そこは西に北アルプスの峰々を望む美しい所で、夕焼けに浮かぶアルプスのシルエットを見たかったからである。

林を抜けカーブを2つ3つ過ぎてアルプスを望む開けた場所に出る直前、左手の雪の積もった畑で5〜6頭の鹿の群れがまるで舞い踊っているかの様に動いているのを見付けた。始め一瞬何の動物かは分からなかったのだが、次の瞬間それが鹿であることが分かった。中に一頭立派な角の雄鹿がいたからである。

私が路肩に車を止めると彼等はすぐに気付いた様子でこちらを注目、私と眼が合った。
そして少し間を置いた次の瞬間小走りに背後の森へ消えて行った。…が、立派な角の雄鹿だけは畑に残り、じっとこちらを見つめ続けた後間もなく仲間を追って森へ入って行った。
あの雄鹿が一頭だけ畑に残り私を見つめ続けたのは、群れの雌鹿を私と言う敵から守り、安全に避難させる為だったのだろうと後になって思った。
余りに突然の出来事で鹿を撮影出来なかったのは残念だが(上の写真は鹿が去った後の夕焼け空)、この時の情景はいつまでも心に残り続けると思う。

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