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僕は「ヒーロー」になりたいわけではない

フィリピンの旅も終えようとしている。カモテス諸島パシハン島、パングラオ島という田舎の島で大半を過ごし、現在はマニラにいる。マニラにいて、改めてフィリピンに行くならば田舎の島がいいことに気が付く。いや、どの国にいても同じなのかもしれない。新宿よりも逗子。海が見えて、のんびりした場所が好きなのだ。今回の旅を写真4枚で振り返る。

カモテス諸島、サンディアゴ・ベイ・ビーチに行くと、島の子どもたちが日陰で海を見ながら日常を送っていた。彼らの日常の中にふと迷い込んだように現れた異邦人を恥ずかしそうに、でもやっぱり嬉しそうに受け入れてくれた。カルロ(左)もリンズ(右)も決して積極的に僕に話しかけたわけではなく、むしろ恥ずかしそうに皆が楽しそうに話しているのを後ろから見ている少年たちだった。そんな子どもたちのことを気になってしまう僕は、彼らにこそ声をかけ、結局カモテス1日目の夜は彼らと一緒にメシを食べることになった。僕はビールを飲み、彼らは僕がアテで頼んだフレンチフライを、ニヤッと笑いながらつまみ食いする。そんな姿も可愛くて、笑顔を見せると、彼らも笑う。そうやって決して言葉は多くないが、共に食べるということは、互いの距離を縮めることなのだ。食べ終わったところで「写真を撮ろう」と提案して撮影した一枚には彼らの安心した笑顔が映っていた。
SOS Children Villageに縁あって行かせてもらえることになった。ここには150名近くの孤児が12個の家に分けられ、それぞれの家にいるナナイ(セブアノ語で「お母さん」という意味)と共に暮らしている。僕が以前訪れたのは4年前で、そこには病気を患って辛そうなナナイと自信がなく下を向きがちな少年ジョエルの姿があった。あれから年月がたち、ナナイがいるのか、あの時にあった子どもたちがいるのかもわからずに、訪問に至った。気温30度近くのセブで汗をかきながら、ようやく辿り着いたそこにはジョエルがいて、笑顔で迎え入れてくれた。彼に夢や大切なものを尋ねると、4年前とは異なる異なる自信溢れる顔で答えてくれた。ナナイは病気の進行は相変わらずだが、最近は精神的に満たされていることを嬉しそうに語ってくれた。僕が常に尊敬するナナイの愛はいつも通り。相変わらず "I love you" が口癖だった。
この世界一周旅行を始める前は、旅に合流する子がいてもいいかもしれないくらいで考えていたが、今回この生徒を受け入れて今後もこの「リアルに世界を旅する教室」は継続して募集をしたいと考えるようになった。今回参加した生徒は、学生の頃、受験期のストレスから学校を休んでいた時期もあり少し心配な子でもあった。今回二人で旅をする中で、二人で虹を見つけて大喜びし、美味しいものを食べて驚き、授業後は達成感を二人で感じた。寝食を共にし、喜びや悲しみを共有し、偶然起こることを受け入れて感謝する。そしてその日感じたことを語り合う。それらは彼にとってかけがえのないものになったと思う。少しずつ彼の中に自信が生まれ、夢を語るようになっていった。それは小さい時に語ったような大きな夢だ。大きな夢を語れるほど、彼は自分に自信を持ち、前に歩き始めている。写真は彼が夢を語ってくれた日に見たチョコレートヒルズでの夕焼け。
ボホール島にあるLourdes National High Schoolでの3日間の授業は幸せでしかなかった。写真は授業最終日でみんなで撮影したもの。日本語教師がいない環境の中で、突然現れる日本人教師とイケメン高校生に子どもたちのテンションも上がりっぱなしだった。学校を歩けば歓声が上がり、写真を撮ってとお願いされた。本当にありがたいと思った反面、「スター」や「ヒーロー」のように振る舞われる自分に違和感を抱いたのも事実。自分は誰かを喜ばせるエンターテイナーになりたいわけではないし、その器もない。自分ができることは、自信がなくて下を向いている子の頭を撫で、その子の目の輝きを取り戻させることくらいだ。

教育は色々な形がある。先生にも色々な形がある。どんな先生がいい悪いではなく、その先生が自分らしく正直に振る舞えているかどうかが大切だ。自分はどんな先生でいたいんだろうか、どんな大人でいたいのだろうかが、フィリピンでの2週間を通して明確になってきた。旅は自分の人生を歩むこと。歩めば新しい世界が見えてくる。

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