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苦しみは決して悪いものではない

現在は飛行機の中。3カ国目ベトナムの旅を終えた。台湾、フィリピンと旅をしてきたが、自分が足を踏み入れたことがない場所、知り合いがいない場所は、このベトナムが初めてだった。焦りや不安から、AirPodsをタクシーの中に置き忘れ紛失。想像していたよりも、ベトナム人は英語が話せなかったため、コミュニケーションをとるのも難しかった。バイクで転倒し、結構な怪我をしてしまった(大人になってからの怪我は想像以上に治りにくかった)。そういった意味で、正直苦しい旅だった。自分が好きになれないものを、皆に紹介できないと感じ、Youtubeのショート動画も全く作る気が起きず、Instagramの写真のアップも気が乗らなかった。

しかし、中国との国境沿いをバイクで駆け抜けるハザンループに出かけ、4日間約370キロをバイクで走り続ける中で、色々と考える時間が取れ、自分の中でブレイクスルーみたいなものがあった。自分がなんとなく感じるベトナムに対する拒否感やネガティブさは、全て自分の弱さが作り出していたものだと。まず「ベトナムの文化や人のせいにするのはやめて、一度ベトナムを受け入れてみよう」と考え、苦手と「思い込んでいた」文化や人を、少しずつ楽しむように。半ば強制的だったが、見方を変えることで、ベトナムが好きになっていく経験は大きかった。きっとまた別の国に行った時も同じことが起きそうだが、そうやってどんどん国もどんな人でも、自分の偏見や感情に振り回されることなく、見れるようになってくるんだろう。

写真で振り返っていこう。ラジオでも語ったが、今回のベトナムはソンくんがいなければ非常に苦しい旅になっていた。皆がサッカーをやる中、僕が広場に来ると英語で話しかけてくれた。自分もサッカーしたいはずなのに、仲間と僕を繋いでくれた。ベトナムに来て、英語が伝わらない苦しさから誰かと繋がることに飢えていた僕自身は、ソンくんと英語で多く話ができたこと、彼を通して仲間たちと話せたことが非常に嬉しかった。またソンくんから学ぶことも多かった。そんなソンくんとの1枚は今回の宝物だ。

ソンくんと対照的に、僕を苦しめた存在は今回のホストファミリーだったナンシーだ。彼女は英語私塾の塾長でもあり、ホストファミリーでもある。彼女、というよりはベトナムの女性一般に言えることだが、基本的に声が大きく、パワフルな方が多い。彼女は抑揚が激しいベトナム語を元にした英語を話すので、言葉が強く全てが命令口調のように聞こえてしまう。加えて彼女の行う英語の指導が僕のそれと対照的で、それも非常に苦しかった。ある程度自分の英語指導の型というのがある中で、誰かの型に合わせて授業をやることは難しいし、それが「自分が否定して乗り越えたもの」であるがゆえに、彼女の指導法に乗っかり真似ることにかなり苦痛を感じた。正直に書くと、彼女と教えるのが苦しくなり逃げ出したくて、ハザンループに行くことにしたほど…。自分に嘘をつき上手く振る舞えない自分の弱さだと思う。
彼女から逃げ出し、ハザンループに行き、370キロの距離を一人バイクで走る中で、ベトナムやナンシーに抱いていた違和感や苦手感も含めて、一度受け入れてみるのはどうだろうかと思い始めた。ベトナムをあんまり好きになれないまま、この国を去るのは嫌だったのかもしれない。そう考えることができるようになったら、少しずつ彼女に対する見方も変わってきた。休みなく働き、貧しい家庭には授業料を半額、無料にして教育活動を続ける彼女のバイタリティーや思いを尊敬できるようになっていた。そしてベトナム出発の前に撮影した一枚は最高のものとなった。

苦しみは決して悪いことではない。苦しい時に助けてくれる人がいたら、その人は大切な人になる。自分が苦手な人が現れたら、自分の弱さや乗り越えるべき壁が見える。苦しいということは「生きている」ということなのだろう。

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