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ザ・メニュー ~ 不愉快と狂気を味わう変態映画の話

連休なのでアマプラで映画を観ています。「ザ・メニュー」というやつを観ました。面白かったんで2回観ました。

私は映画通でもないんで解説とか考察みたいな話じゃないです。面白かった映画の単なる感想文です。ちなみにこれって、この映画が含んでるテーマと関係があったりして。その辺は後ほど。

ネタバレを読んだところで面白さがそんなに損なわれるタイプの映画でもありませんけど、何も知らずに観たい人は読まないのが良いです。

▼こんな話
孤島に佇むレストランを訪れた若いカップル(アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト)。そこではシェフ(レイフ・ファインズ)が極上のメニューを用意している。しかし、レストランのゲストたちはこのディナーに衝撃的なサプライズが待ち受けていることに気づくのだった…。脚本 セス・レイスとウィル・トレイシー、監督 マーク・マイロッドが贈るダーク・コメディー。

アマプラの紹介文より引用

細かいことは気にしないで観よう

最初に言っとくと、あまりに荒唐無稽、リアリティもクソもない映画なんでそこまで深く考えない方が楽しく観れます。

設定の無理のなさとか、登場人物の行動原理とか、ツッコミどころが気になっちゃうタチの人には向いてないかもね。

最初から最後まで悪ふざけなんで、細かいことはどうでもいいの精神で観るのが良いです。かと言って雑に作られてる感じもしませんから、B級映画的楽しみというのとも違います。

いけすかなさを楽しもう

超高級店に集った金持ちと、料理に並々ならぬこだわりを持ったシェフっていう、観てるこっちからするといけすかない雰囲気なんですが、コース料理の順番が進むに連れてだんだん異様な感じが高まってくる感じがたまらんです。

シェフが実は金持ちの連中を「料理について何も知らないクセにグルメぶりやがって」って思ってること、客側は「高級料理を理解してる私ってグルメ偏差値高い」とか「こういう店で食うとハクがつく」みたいに思ってること、みたいなイヤな感じがだんだん濃くなっていくんです。

ボンボンとかグルメライターの知識ひけらかしとか、それを察した店側の言葉は丁寧だけどものすごい失礼な対応とか、たまらんものがあります。ゾクゾクします。

で、中盤の副料理長の拳銃自殺ですよ。ジワジワ来るイヤーな感じの中でいきなりの衝撃。そしてそれを見て逃げようとしたオジイがお仕置きに指切られるっていう、ここまで来るともう地獄。

そしてこの期に及んでもまだ「これは演出された芝居、これもコース料理の一部」とか言ってるグルメライターのいけすかなさ。面白い!

全員クレイジー、マーゴだけまとも

店側も客側もほとんど全員クレイジーなんですが、ボンボンの彼女の代役で急遽来てる、客の中で唯一金持ちじゃない娼婦のマーゴ。途中まではあんまりハッキリしないんですが、実はこの人が主人公で、唯一まともな人間。

金持ち連中は高級店だし、この良さがわからないとグルメじゃないってことになっちゃうから有難がって食べるみたいなことに対して、マーゴだけは素直にこんなもん食えるかって態度。これが痛快です。

シェフの最高傑作のフルコース

結局シェフは、料理に命を賭けて全力で取り組んだ結果来るのはそんな知ったかぶりみたいな客ばっかりとか、店のオーナーが料理に口出ししてくるとか、ストレスがたまって気が狂ってしまっているんです。

そこで、わかってないクセにグルメ記事を偉そうに書いてその結果酷評した店を潰してしまったグルメライターとか、邪魔なオーナーの会社の社員とか、しょっちゅう食いに来るクセに料理をたいして味わいもせずただ食って帰る客とか、シェフにとって不愉快な者たちをこの日の客として集めたんです。

そしてシェフ本人も、店のスタッフも、この日集めた憎らしい客も、全員の死をトッピングしたフルコースっていうのが彼の生涯最高傑作の料理で、それを完成させよう、というのがクレイジーシェフの計画。そしてそれは果たして実現してしまったっていう話。

それにしても、シェフの貴重な休日をつまらない映画で浪費させられたっていう理由でメンバーに入れられてしまった映画俳優は気の毒としか言いようがないです。

セリフでも言ってましたけど、監督したわけでもなく台本通り演じただけなのに。この辺はそんな理由で!?っていう理不尽さを笑うっていうタチの悪いブラックジョークですね。

ただし、イレギュラーで来てしまったマーゴは彼女の機転もあって唯一脱出に成功しました。

そもそもマーゴは庶民ですし、シェフにとっては死のトッピングに不必要な人物です。だからハンバーガーの持ち帰りを所望したマーゴを、一本とられたって感じで開放したんでしょう。

面倒くせえやつらへの鉄槌

とばっちり以外の何ものでもない映画俳優は別として、何十万もするフルコースを有難がったりする客とか、考えすぎてほとんど被害妄想みたいにおかしくなっちゃったシェフとか、こういう面倒くせえやつらはクソ喰らえみたいなことをメッセージとして含んでる映画なのかなって感じました。

彼らはまとめてドーンで全員死んじゃったけど、あくまで普通に自分の好き嫌いだけで判断するシンプルなマーゴだけ生き残る、この対比の面白さです。

映画全体のちょっと芸術的な感じの映像とか、パッと見難解っぽい感じ(実はシンプルで簡単な話だけど)こういう雰囲気を逆手に取って、逆にマニアックぶって小難しいことを言うようなヤツを小馬鹿にするっていう痛快さっていうのもこの映画の面白いところです。

マーゴ超美人、映画としてはド変態

ところで、主役のマーゴがとても個性的な顔なんだけど超美人で、画面を支配してしまっているほどなんですが、前に観た「ウイッチ」に出てたあの超美しい少女の役者でした。

映画としては、観ている間も観終わった後も、何なんだコレ?っていう感じなんですけど、不愉快さとか異様さをゾクゾクしながら味わうっていうタイプで私はずっと楽しく観れましたけど、リアリティとかを求める人には向かないかなあ。

変態映画ばっかり撮ってるヨルゴス・ランティモス監督の作品に近い、不愉快さや不安感を感じて楽しむっていうタイプだと思います。

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