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ウィッチ/The Witch~悪魔・魔女の概念を理解するとより面白い映画

正月休みの最後の日に、ウィッチ/The Witchっていう映画を観ました。これを書いている2024年1月の時点で、アマプラ特典で無料で観れました。

ネタバレなので、既に観た方向けのテキストになっています。

ウィッチっていうのは魔女のことで、敬虔すぎるキリスト教徒の家族に次々と不幸が訪れ、家族の中に魔女がいるんじゃないかと、一家全員疑心暗鬼になるという不気味な話です。

ちなみに、魔女っていうのは男性も含みます。WITCHの訳として魔女しかないんですが、男性の場合もWICTHだってことです。

・・・みたいな、聖書やキリスト教に関する予備知識があるとより楽しめる映画なんですが、そこまで深い知識はいらないです。私は、YouTubeの守鍬刈雄さんの動画を見て、楽しむにあたって必要な知識を得ることができました。

その後でもう1回映画を観たら、より楽しめました。

まず、日本人からすると悪魔とか魔女っていう概念がピンと来ないところです。「ローズマリーの赤ちゃん」を観た時も、同じことを感じました。

日本の文化において、悪魔や魔女にあたる存在っていうのがないんです。妖怪とも違うし、悪霊とも違うし。だからピンと来ないんです。

しかしキリスト教圏においては、悪魔や魔女は我々が想像するよりもずっと身近というか、彼らの心に深く根付いているもののようです。

神様と一対みたいなところがあって、神様がいるとすれば、当然悪魔や魔女もいるっていう。

そして彼らは生きてるだけで罪を重ねているみたいに考えるところがあるようです。財産が欲しいと思うことも罪、異性に性的に惹かれることも罪、嘘をつくことは当然罪。そしてそのたびに神に懺悔して生きるという文化みたいですよ。

そのような厳しい生活に耐えて神を崇め続ければ、死後に魂が楽園(天国)に行けるよっていう。

そこで悪魔ですよ。神様を崇めて生きることはとても堅苦しくて、厳しいんです。しかし悪魔という存在は財産をあげようか、うまい食事を腹いっぱい食わせてやろうか、高い地位をあげようかとあの手この手で誘ってくるわけです。

厳しくて堅苦しい神様と比べて、悪魔の誘いは実に魅力的なんです。その代わり、死後に魂をもらうよっていう。私なんかは、悪魔に簡単に魂を売っちゃいそうですけど。

・・・みたいな考えが、我々の思うよりもずっと深く根付いているみたいですよ。

ザックリすぎて、真面目に勉強している方から見たらちょっとズレてる話かもしれませんが、だいたい大づかみに言うとそんな感じらしいです。

で、映画の話に戻るわけですが、日本人的感覚だと、悪魔だの魔女だのなんてのは架空の存在に決まってるんだから、家族に起こる不幸な出来事も偶然に起こったとか、劇中でも言われているようにオオカミの仕業だとか、そっちに気持ちが行ってしまいます。

でも、キリスト教圏の人の感覚からすると、マジに魔女の仕業なんじゃないかという疑心暗鬼を持ちながら映画を見る感じが強いのかな。そして、その方が楽しめる作品だと思います。

物語の中盤で弟がものすごく美しいけど手だけ化け物みたいな魔女にモロに会ってしまって、それが原因で死んでしまうというところで、これって本当に魔女がいるっていう設定の映画なんだと気づきます。

最終的には怪しかった黒山羊が悪魔の化身だったことが明らかになるわけですが、ここまで来ると逆に、ショックで心神喪失となった主人公の少女が幻覚、幻聴を見聞きしているんじゃないかとも見えてきてしまうという逆転現象。

この世にも不気味で悲惨な話を淡々と見ることになる映画なんですが、それを表現する映像がすばらしいです。薄暗くて、彩度の低い色味がものすごく雰囲気を出してます。舞台となっている17世紀って、こんな感じの風景なのかなって思わせられます。

そして、ちょっとだけショッキングなシーンもありますが、陳腐な効果音で怖がらせるような安っぽい演出もなく、ただひたすら気持ち悪さ、不気味さを漂わせるという演出になっています。

基本的に説明的なセリフや表現はほとんどないので、実際に魔女の仕業なのかそれとも幻覚なのか、あるいは比喩的な映像表現なのか、みたいに観る人に解釈を委ねるような部分もあって、それぞれの楽しみができるし、2回目、3回目と繰り返し観ても面白い映画だと思います。

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