カセットテープにまつわる話
以前に、ここ数年ちょっとシャレオツみたいな感じで若い人にカセットテープが人気みたいなテキストを投稿しました。
このテキストのテーマは、我々の世代からするとカセットテープはそんなシャレオツ感覚とは関係なく、それしかなかったので全力で使ってましたよみたいな話。
そんなことも含めて今回はカセットテープにまつわる話。というのも、若い人の中にはマジでカセットテープなんて全く知らない人もいるかもしれないのに、説明が不足していたと感じたから改めて1本テキストにしてみようと思った次第。
だもんで、知ってる人にとっては超当たり前のことも多くなりますが、あえてそういうところも含めて思い出せる限り書いてみました。
カセットテープ
カセットテープは音を磁気テープに記録できるもので、名前の通りカセット式になっており、薄い磁気テープに直接触れずに手軽に扱える録音再生メディアです。
値段はピンキリですが、我々世代が一番ヘヴィに使ってた1980~90年代当時、安いもので1本100円程度。そこそこのものでも200円以内くらいで買ってました。300円ともなると高級テープ。
カセットテープの種類
カセットテープには種類というかグレードがあって、ノーマルポジション、ハイポジション、メタルポジションっていうのがよく見かけるものでした。
安くて手頃なノーマル、ちょっと高いけど音が良いハイポジ、オーディオマニア向けの高級なメタルテープ。
ただ、今思うとノーマルとハイポジの音質の差ってそんなでもなかったです。メタルは、デッキが対応してなかったりするんで本当にマニア向け。私は買ったことないです。
録音できる長さは単純にテープの物理的な長さで決まります。10分テープ、30分テープ、46分テープ、50分テープ、60分テープ、74分テープ、90分テープ、このあたりの長さのものをよく見かけました。
46分とか74分っていう半端なものはなぜそんな長さなのかいまだに知りませんが、そういう専門的なことは各自が今これを読むのに使ってるデバイスを駆使して調べてみてくれたまえよ。
カセットデッキ
カセットテープを使うにはカセットデッキが必要で、再生専用のものと録音再生どっちもイケるやつの両方が存在しました。ウォークマンとか携帯用のものは再生専用のものが多かったです。
携帯用のものは別として、ラジカセ(ラジオつきカセットテープ録音再生機)やシステムコンポなどを使うのが一般的でした。
ラジカセはイラストのものみたいなやつはちょっと古いタイプで、80年代後半くらいになるとデッキが2つついていてダビング(コピー)に対応した「ダブルラジカセ」とか、図体がけっこうデカくて大きめのスピーカーを積んだ迫力のある音がでるラジカセも一般的になりました。
音質だけじゃなくて機能面でも進歩が著しかったです。例えば「オートリバース」。カセットテープのA面とB面は、古いデッキだとわざわざデッキからカセットテープを取り出して裏返す必要があったんですが、それを自動でやってくれるのがオートリバース。
システムコンポは、昭和の時代はこういうセットのことを指して「ステレオ」なんて言ったりしましたけどそれは置いといて。
画像は今現在売られてる令和のコンポですから、スピーカーとスピーカーの間にはおそらくオールインワンのアンプ内蔵機材が1個しかいませんが、カセットテープ時代のコンポは、アンプと各種デッキが多段に重ねられているのが普通でした。
アンプ+ラジオ部分、カセットデッキ、CDデッキ、レコードプレーヤーみたいな感じで。
そういったシステムコンポのちょっと小型のやつを「ミニコンポ」って呼んで、ものすごい流行ってました。シャレオツなヤングメェンの部屋には、中央にミニコンポっていうのが定番。
さて、ラジカセにせよコンポにせよ、再生機能と同等に重要だったのが録音機能で、レコードやCDの音源をダビングして小さなカセットテープに入れるっていうのもまた定番。そうすればウォークマンだったり車の中だったり、外へ音楽を持ち出せるんですから。
持ち出すため以外にも、むしろこっちがメインかもしれませんが、友達やレンタル屋から借りたレコードやCDをカセットテープにダビング。これって当時なんの疑問も持たずにみんなやってましたけど、法律的にはどういう感じ?
今回はその辺の話には触れないけど、興味ある人は各自調べてみてください。
ダビングにまつわる話
これこそが経験者しか語れない話だと思うんですけど、カセットテープにダビングするという作業は、失敗を経験したりしつつ誰もが身につけたやり方ってのがあったんです。
まず、ダビング(録音)したい元のCDがあったとしましょう。それが合計55分くらいのアルバムだったとしましょう。ということは選ぶテープは60分テープ。という当たり前に思えることが実は罠だったりするんです。
カセットテープというのはA面とB面があって、例えば60分テープだったらA面30分、B面30分、足して60分っていうものなんです。
ということは、アルバムの中程に超長い1曲があった場合、つまりアルバム開始から30分をまたいでしまう曲があった場合、A面とB面をもまたいでしまいますからダビングできないんです。
その辺を考慮して使用するテープの長さを選択せねばならなかったんです。プログレファンの人は苦労する機会も多かったのかな?知りませんけど。
AB面またぎ問題は面白い話ではありますが、ケースとしてはレアです。実際によくあったのは、だいたいこんなもんだろうで適当にテープの長さを選択して、最後の曲が入るか入らないかギリギリで焦るという展開。
録音中の回転するカセットのテープの残量を目視で確認して、どうだ?足りるか?ギリギリ駄目か?みたいな感じでハラハラするなんてのはカセットテープを使う上での日常でした。
曲が終わる前にテープが終わってデッキがガッチャンと止まってしまった悔しさ。また、ギリギリ間に合ったと思ったらテープのホントの最後の最後って録音できないんで(クリーニングテープになってたりする)、曲の最後だけ切れちゃったみたいなことも。
この時の焦り具合とその感情は独特なもので、どんな好きな歌手が歌っていようとも「早く歌い終われ」なんて思っちゃうんだから身勝手というか人間の悲しい性というか。
その他細かすぎる話
上書き
カセットテープっていうのは、既に録音してあるテープに最後録音すると後で入れた方が上書きされるというものでした。聞き飽きたものの上から新しいやつを入れるなんていうのは当たり前の使い方です。
ただし、上書きを繰り返すとどんどん音が悪くなってしまうので、なるべくなら1本のテープは1回の録音で済ますのが良いです。
カセットテープには消したくない録音をうっかり上書きして消してしまうというミスを防止する機能が備わってました。カセットテープの上部の爪を折ると録音できなくなるっていうのがそれ。
これは実にアナログな機構で、デッキの方にこの爪に対応した機能が備わっていたというのが正確な言い方かな。この爪の部分にデッキが出る突起的なものが当たらないと録音ボタンが押せなくなってるっていう、考えた人えらい。
カセットレーベル
録音したカセットに何が入ってるのかわかるように生テープには必ず紙のレーベルが入ってました。ここへアルバム名や曲名を書いたりして使うわけです。
マメな人は転写式のレタリングシートを使って活字印刷風のレーベルを作ってた人も。私もやってたことがありますが、Rの字がいつも足りなくなるんです。仕方ないのでPにKの足をくっつけてみたいな。こりゃ、経験者しかわからん話ですね。
また、ラジオ雑誌とかの綴じ込み付録としてちょっといい感じにデザインされたカセットレーベルが付いてたみたいなパターンも。
ヘッドクリーニング
画像のデッキはここ数年前に買った、カセットテープをUSBメモリに音声ファイルとして吸い出せるっていうデッキなんですが、再生部分の仕組みは昔のデッキと同じです。当たり前ですけど。
この画像の上部中央のシルバーのところがテープの読み込みを行うヘッドという部分で、ここは定期的に清掃してあげる必要がありました。音が悪くなるとか以前に、ここに汚れがたまるとテープの走行が不安定になってしまって、それが原因でデッキが壊れるんです。
清掃には、清掃用のアルコール的なものを綿棒につけて拭き取るみたいなやり方の他に、クリーニングテープっていうのが市販されてました。そのテープをデッキに入れて走らせるだけでらくらくお掃除みたいな。
クリーニングテープには乾式と湿式があって、湿式の方が清掃用の液体を入れる穴があって、そこへちょこっと垂らしておいた上でテープを走らせるっていう。
カセットテープの広告
当時って、やたらカセットテープの広告やテレビCMが多かったと思います。それだけみんな使ってたんだと思います。
ま~るいウィンドウのUD-Iとか、斉藤由貴のアクシアとか、印象に残っています。
車でカセットテープをかける
当時は車で音楽を聴くとなるとカセットテープでした。ハードディスクとかに音楽を保存してとか、サブスクでみたいな話じゃないですから、いっぱい聞きたかったらカセットテープをいっぱい積んどくしかなかったんです。
10本入るカセットテープケースを運転席に積んでおいて、トランクには同様のケースをいっぱい積んでおいて、時々トランクを開けて聴きたいテープを取り替えるっていうあの作業。
そのカセットケースがなぜかタバコの箱の柄。ラークとかセブンスターとか。
カセットテープの劣化
アナログ機構の磁気テープですから、どうしても劣化は避けられないんです。繰り返し聴いたり、巻き戻したりを繰り返すうちにテープが伸びちゃうんです。
80分テープとか90分テープみたいに長いテープは伸びやすいのでなるべく使わないようにしていました。
ちなみに職場ある地域で役所が夕方に街に流している「夕焼け小焼け」の音楽、多分いまだにカセットテープを使ってるっぽいです。
だってテープが伸びたあの独特な感じなんだもの。あれ、子供が怖がる不気味さだからそろそろデジタル化した方が良いと思います。
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カセットテープ、当時はレトロ感のオシャレ感を味わってたわけじゃなくて、それしかなくて全力で使ってたんで今となっては再び使いたいとは全く思いませんが、こうして思い出してみると確かに想い出としては良いもんだと思います。
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