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イムジチのコンサート

もう10月もすぐそこまで来ていると言うのに、東京の夜は、まだ蒸し蒸ししている。
9月27日、4年ぶりに開催されるイムジチのコンサートの為に山から下界のサントリーホールへ降りてきた。

こんなに日々音楽を聴いているのに、本物のコンサートを見に行くのは久しぶりである。
コロナが始まる直前のニューヨークで、デュダメルの新世界を聴いたのが前回だった。

やはり、本物を見て聴くという経験は、素晴らしい。一階の一桁列の、舞台を見て右側列、通路寄りだったので、マルコ・フィオリーニ、フランチェスカ・ヴィカリが目の前で、彼らの躍動する動きや表情をつぶさに見る事ができる好位置。そして、右手奥のコントラバス、ロベルト・ガンビオーリもこの角度からだと、指の爪弾きや弓の動かし方が手に取るように見える。

自宅のオーディオの世界では、五感の中の音に集中しているので、視覚である演奏は、想像の世界。音と映像、そして、会場の匂いや雰囲気を感じながら、本物を鑑賞するというのは、とても素晴らしく意味のある事である。この記憶というものが、また、私の人生の糧になってくれると思うと、やはり、とても貴重な体験だった。

初めから予定されていた演目もさておきながら、アンコールを演奏するたびに拍手が盛り上がり、日本人気質で、ブラボーなどの掛け声さえ無かったものの、拍手の喝采はアンコール二曲目、三曲目と衰える兆しがないどころか、さらに盛り上がるばかり。四年ぶりの来日という事もあったのか、徐々にスタンディングオベーションが増えて、結局、アンコールは、日本人の心を奏でた赤とんぼや、坂本龍一の曲などを含めて五曲に至る事になる。 

70年以上前のフェリックス・アーヨの強い意志が今まで続いている事に、感動し、地球の裏側にいる私が、その一端を体験できる事に感謝しつつ、先日90歳にしてこの世を去ったアーヨの冥福を祈るばかりである。