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愛と憎しみの半沢直樹(2020.10.1)

令和の視聴率オバケドラマ「半沢直樹2」(TBS)

たぶん、見てなかった方は、毎日のようにネットから流れてくる情報に「は?どういうドラマなの??」と半ば呆れていたのではないでしょうか(笑)

顔プロレス。
後ずさり土下座。
ほぼ歌舞伎。
コント走り。
撮影が間に合わず、ドラマ放映期間中にも関わらず1回生放送でしのぐ。

などなど、毎週パワーワードが飛び出す稀有なドラマでした。

私は欠かさず見ておりました(笑) 後半は、ほとんどリアタイ(リアルタイム視聴。録画ではなくテレビが放映される時間に視聴)してました。そのくらい好きでした。
でも、大キライでもあります(笑)

本日はスキでキライな半沢を徹底分析!!

▼まずは~半沢すごいところ

・主要キャストがほぼ舞台俳優と歌舞伎役者
 →演技力に不安がまったくなく、安心して見られる
  下手だなーとイライラしなくて済む
 →演技と顔ヂカラに見入ってしまい、
  ストーリーが追えない(笑)
・ドラマなのに映画並の照明
 →とにかく影が濃かったな(笑) すばらしい!
・ナレーションも説得力ありすぎ
 →元NHKエグゼクティブアナウンサー、山根基世さん。
  大河、Nスぺのナレもされてました。落ち着いた素敵な声音!
  たしか昔はラジオ深夜便にも出ていらしたのでは。

とまあ、とにかくすべてが「振り切った」ドラマでした。セットも豪華だったし~~~。どれが欠けても、あのハンパない説得力は生まれなかったと思う。

個人的には、名古屋の劇団「劇団B級遊撃隊」の佃典彦さんが重要な役で出演され、「後じさり土下座」をして全国的に有名になったことが、本当にうれしいです。

「いやみんな佃さん知らんのかい!」と思ったけど。
「何なら南野陽子のダンナ役(電脳雑技集団の社長)はMONO(京都の劇団)の土田さんだぞ!」と思ってたけど。
(※ご出演のことを全く知らずに見てたので、失礼ながら画面見て噴きました。すごいメイクだったんだもん…)

他にも、お茶の間(死語)に浸透してる俳優から
舞台好きにはおなじみだけどテレビにはあまり出ない俳優まで
ソウソウたる方々が出ていて
もう、何重にも楽しい思いをしました。

それは、言うなれば、演劇ファンとして「舞台役者が演技力でお茶の間の拍手喝采を得ていて私も嬉しい!」という思いです。

しかし。

あの会社、あのドラマのような組織が現実にあったとすると、、、
それは、フツーに、ヤバい。。。


▼ここがヘンだぞ半沢直樹①派閥争い

半沢が全仕事人生を捧げているのは「東京中央銀行」という、日本のメガバンクです。調べればどの銀行をモデルにしているのかわかると思う(が、あえてしない私)(マークの色味はU○Jぽいけど、み○ほ・・・??)。

大きな銀行同士で合併したため、相当しこりが残っています。

半沢のドラマの筋を要約すると

「派閥争い」

これにつきます。

つまり「内紛」です。

香川照之が演じて大人気になった大和田常務も、いろいろ理由はあるけど結局は内紛を助長しています。
市川猿之助(詫びろ詫びろ詫びろ)と古田新太(しゃべらない副頭取)も完全にそうです。みんな、自分と自分の派閥メンバーの出世のことばかり考えているのです。

【やりたいことがあるなら偉くなれ】

とはよく大きな組織で言われる言葉らしいですが、
一介のアルバイトからすると「え、内紛でしょ? お家騒動みたいなもんでしょ? 身から出たさびでしょ?(ちょっと違う)」と思ってしまいます。・・・幼稚ですか、そうですか・・・。

でもさ~~~! 「メガバンク」ということは世界にもそれなりに手を出しているということですよね。そんな組織の偉い人たちが(頭取以外)揃いも揃って内紛に夢中。

大企業の末期だよ、それ。

(でもありそうなんだよな。ああいう会社。実際。)


▼ここがヘンだぞ半沢直樹②おじさんがみんな半沢ラブ

部下と同僚からは慕われているが、ありとあらゆる上の人たちからは目の敵にされまくる半沢。

面と向かって「俺はお前が嫌いだ」と何度言われたことでしょう。なかなかないよね・・・大人になって直接キライって言われるの・・・。

それを見て私は、「男の好きってフクザツねえ」とため息をついたことでした。

脚本に一点だけ疑問を呈するなら「なんで半沢はこんなに嫌われるのか」ということがあまり示されていないことです。

え、みんな気にもしてない??(笑)

たぶん、欲にまみれた人たちからすると、正義を貫く半沢が眩しくてキラキラしていて好き・・・ううん!キライだもん!認めないぞ!みたいになるんでしょうか。

好きなら好きって言っちゃえよ☆

(※以下R18)BLドラマにしたら「おっさん○ラブ」を超える、ビジネスラブの超ド級愛憎ドラマになりそうです。いやだって公式に男の愛を描いたドラマでしょこれは!!!! だから女性がほとんど出てこないとか言われるのか(違) 全ての偉いおじさんと、真っすぐな部下たちと半沢に尽くす同僚:及川光博のド真ん中には半沢ひとり! 半沢総○け。あ、逆?(やめなさい)

▼ここがヘンだぞ半沢直樹③ハラスメント尽くし

毎週毎週、「モラハラとコンプラ違反の総合商社(古)」でした!

・軟禁と土下座の強要(強要罪は刑法犯です)
・怒鳴って脅迫(半沢も結構これやってた)
・書類の隠蔽(半沢も対抗して隠蔽)
・ハッキングぽいこと(うーん)
・男から男へのセクハラ(金融庁…)


そしてほぼ全員が部下を怒鳴る怒鳴る(半沢は上司を怒鳴る)。

見事なパワハラ・・・!!!!!!

オネエ口調で半沢をしつこく「ストーキング」する、金融庁の黒崎検査官(片岡愛之助)。「な・お・き♡」ですっかり有名になってたが、あんた、部下の股間を掴みまくる(そういうキャラなんです)のは、立派なセクハラだよ! 
でも黒崎は、政治家の闇に手を突っ込みかけて、上からの圧力と身内の忖度で検査官の第一線から外された。別れの日。部下はみんな泣いてる。そういう演出だった。なので視聴者は「部下たちが股間を掴まれても黒崎検査官のことをリスペクト」→「仕事にかける情熱はホンモノだったのかな」と善意に解釈。私もちょっと涙。

いやいやいや、仕事熱心でも仕事ができても、セクハラはセクハラだよっ! あぶねー。相棒だったら、大河内監察官(神保悟志)の監査が入るところだぜ!


▼ここがヘンだぞ半沢直樹④転職していいよ、直樹!

ぐちゃぐちゃの組織の中で、
おっさんたちに目の敵にされても
全くメゲない半沢。

真っすぐ正直! 公明正大! 気に入らないやつには倍返し。

いやーーーーー視聴者はもちろん復讐シーンが見たくて見てるんだが、
そんな腐った奴らに倍返しの計画するよりも
そんな銀行さっさと辞めた方がいいのでは。

気力と時間の無駄だよ・・・。

私は第一話から、「なんで半沢はまだ銀行にいるんだ?」と思ったぞ…。その手腕、そのガッツなら、他の銀行とか別の会社でも、いい線いくんじゃないの? そういうことじゃないの? 

最終回でようやく妻の花ちゃん(上戸彩)が
「辞めてもいいよ、直樹!」
って言ってたけど、もっと早く言ってやれよー花ちゃん(でも花ちゃんが本当に可愛かったので許す。デレ)。

※なお、半沢の家庭では、前作でいたはずの子どもが一切姿を見なくてちょっと(生存が)心配になった(笑) まあ、子どものシーン入れる隙がなかったんでしょうね…。

▼ここがヘンだぞ半沢直樹⑤誰も仕事してない

これが一番の問題だと思うんだが、銀行の主要なキャストが誰も本来の業務をしていない。

半沢はじめ、
部下の賀来賢人(賀来千賀子の甥。確かに似てる)と
半沢の同期で親友(出世頭)の及川光博(ミッチー)
たちは、半沢から頼みごとをされまくり、
そのたびに、電話をかけたり、偉い人を追跡したり
スパイまがいのことをさせられる。

さらに頭取や常務たちも、常にそれぞれの隔絶された静かな一室(一室一室が今私が住んでるワンルームより広くて豪華)で、座っているか部下の報告を聞いて「半沢め~~」と闘志を燃やすのみ。

え、なんか・・・ハンコ押したりしないんですか!
(銀行役員の仕事というものが想像つかないけど・・・)

半沢もいつも社にいない。たまに社にいる時は倍返しのための密談とか頼まれてもいない闇の調査とかしてるから席にいない。本来業務をしている事務さんたちから
「半沢次長って、テレビに出たりして派手なことしてるけど、
 全然ハンコ押してくれないの。決裁が溜まっちゃって」
とか嫌われていないんだろうか。

いや、半沢なら、『半沢』のハンコを渡して、「全部押しちゃっていいよ」とか言ってるんだろうか。それとも、律儀に早朝に出社して決裁しまくってるんだろうか?(サービス早出だよねぜったい。HR的にどうなのか)

ていうか、本当に必要な時以外、ハンコなくしてくれ!!!!!!!!
(日本の慣習全体への怒り)


▼ここがヘンだぞ半沢直樹⑥地方の出向先に失礼

ことあるごとに「出向」をちらつかせて
「出世できないぞ~」と脅す悪役たちなのであるが、
ちょっと待ったーーーー!

その言い方、出向先に失礼でしょ!
一度など「瀬戸内海の小さな島(だったかな)へ出向かもな!」とか言われてたが、瀬戸内海の小さな島、全然いいじゃん!!

あったかくて、玉ねぎとか(淡路島)オリーブとか取れて(小豆島)、美術館もある(豊島)、いいところじゃん。

半沢も「オレが出向するかはどうでもいい」とか言うけど、中央(本店)に戻った時は嬉しそうなんだよな。。。

でも、考えてみると、半沢ってあんだけいろいろやらかして
いろんな役員や支店長を逆に出向させたりして、
それでも「次長」にまで上り詰めるってすごい。

というか、それだけ銀行の闇を知っているんだから、
それをネタに役員たちを脅迫していけば
頭取にもなれるんじゃね? 

半沢って、倍返しするときは意外と汚い手も使うし。手段選ばないから。怖いよね。ああいう手合いが一番怖いのよね~(←お前はどこ目線なんだ)。


▼結論:半沢は時代劇+任侠=最強

作品自体は好きだけど
作品が体現しているものについて反発する
という作品はなかなかない気がする。


いや、半沢直樹自身はすごいと思うよ。

サラリーマンで、自分の生殺与奪を握る(とはいってもさすがに解雇はされず出向になるだけ)上司に対し、

「あなたは間違ってる!」「倍返しだ!」

とはなかなか言えないよね。

自分を思い返してもそうだった。

むかーし、ちょっとだけ勤めたところ。
「間違っています!」とは言えなかった。怖くて。やっぱりクビは怖かった。くそー。どうせ辞めるんだったら倍返し!とか言えば良かった
(でも倍返しできるほどのネタも力もなかったし、もう考えるのがおぞましくて退社しちゃいました)

やはり、面と向かってあそこまで言える人はそうそういないだろう。
だから、みんな半沢に仮託して見ているのだ。


半沢直樹は時代劇である。

いつの時代も、庶民がお上と闘う姿は痛快だ。
シーズン1から
「倍返しだ!」=「この印籠が目に入らぬか(水戸黄門)」
なんだろうなとは思っていたんだが、
2を見て、さらに思った。

「これは任侠なんだな」

突然ですが、私は、岩下志麻の映画・極妻シリーズを全話見ました

▼詳しくはコチラ
「極道の妻」あるある(2020.1.22)
https://note.com/iincho/n/n7078c3b5c569


そこで、日本の任侠(暴力団ではなく任侠ね)には
「筋目」が最も大事、ということを学んだ。何を学んでるんだ!(笑)

ヤクザはよく「マフィア」と対比されるが、
外国のマフィアと最も違うのはそこだと思う。
例えばイタリアンマフィアだと、大事なのは血縁とか家の利益とか復讐なんだと思うが、日本では「義理人情」「スジを通す」ことが一番大切なのだ(重なる部分はあるかもしれない)。

この「スジ」が何なのかというのは非常に難しく、
膨大な仁侠映画から演繹的に導き出す研究で
一生が終わっちゃいそうだが(楽しそうだけど)
半沢は「筋」という言葉を毎週のように口にしていた。

「いや、それでは筋が通らない」
「それが親会社のやることか。筋というものがあるでしょう」

市川猿之助はべらんめえ調(麻生大臣みたいな)で怖かったが、
実際、半沢の方が、性根はよほど任侠なのである。

で、日本でも外国でも
「任侠」「マフィア」ものには一定のファンがいる。

アウトローだからこそ(法律とは別の)正義が貫けるからね。

というわけで、半沢はやっぱりハグレ者なのであった。

筋をぜんぶ通してたら、それは一般社会ではハグレ者(異常者)なのであるよ。

とはいえ、私も(極妻の影響なのか)前に働いてた会社で
「それはスジが通らんだろう!」
とか、よく言ってました。。。

ちなみに私は怒ると名古屋弁に戻るので正確にはこう。
「何とろいこと言っとんだて! 筋が通らんがや!!!」(怖いヨー)

なんだろうスジって。
江戸時代の儒学からの、明治の(歪んだ)神道思想とイエ制度と昭和の軍国思想・・・あたりに何かあるような気がするんですが。

私の場合は「連絡不徹底で現場の人に迷惑がかかること」について「筋が通らねえ」と思うのでした。
事件は現場で起きてて、解決するのも現場なんだぞー! 


▼半沢に向いてる職業

今の若い人はこのドラマ見てどう思ったんだろう。
昭和ど根性ファンタジーだと思ったのかな。。。

私は、実際、あんな会社があったら、過激かもしれないけど、
「つぶれなさい」
と思う。
そこで一生懸命働いてる人がいたら、
「そんな会社からは一刻も早く逃げなさい」
と言います。

私がこれまで職場に愛着を感じたのは、
社会人として最初に働かせてもらった司法機関だったけど、
それは役所という組織自体への愛ではなく、
そこで働く人たち一人ひとりの真摯な仕事への向き合いへの尊敬だったと思う。
そして法を愚直に遵守する精神についてだったと思う。
もちろん、組織としては非常に大きな図体をしており、
ハンコ地獄でしたし、上意下達だし、いろいろ思うことはありました。

なんかね、半沢直樹で終わりにしてほしい。ああいう会社と、それに立ち向かう個人という図式は。

そして半沢直樹にはぜひ、その強い正義感と粘り強い調査能力をもって

特捜検事!

もしくは

政治家(というか総理大臣)!


になってほしいと思うのでありました。

続編はパラレルワールドで
総理・半沢直樹
やってほしいよ。

国会で倍返ししてくれー!(笑)


▼半沢に感動した者としてできること

そんな愛と憎しみの半沢直樹ですが、
最終回はテレビの前の視聴者っていうか国民に語り掛けるような熱い言葉もあり、涙、涙でありました(←結局好き・・・)。

そんな半沢に感動した人たちよ、
「ま、あれはドラマだから」と、リアルに戻っちゃ勿体ない(笑)

少しでも社会、会社が良くなるように、
一緒に、勇気をもって半歩でもいい、踏み出しましょう。

常に心に退職届。
頭の中は倍返し。

私はもうサラリーマンではありませんが、
せめてダークサイドに落ちないように、がんばりマス。

ね!



これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m