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雨と路線バス

雨の中娘を幼稚園へ送り、出勤。

いつもは自転車で送ったあとに駅に直行するけれど、雨の日はそうもいかず歩いて幼稚園、そしてバス停へ。

なかなか強い雨。
バス停に人が集まってくる。

朝のバスの時間なんて読めないのは承知の上だったが、にしても遅い。

時刻表を見ると7:56の予定。
結局来たのは8:16。しかも車内はぎゅうぎゅう詰め。

雨だし、多少の遅れは理解できなくはない。
しかし、これだけ待つとわかっていれば歩いたほうが早かったかもしれない。

強い雨の中、約20分も待っていればもう足もとはぐちゃぐちゃ。

それならいっそ歩いたほうが健康的だったかも、と頭の中でバス会社へのクレームを悶々と考えながら、そもそも路線バス業界ってなかなか古い体質なんじゃないかと勝手にビジネスモデルに思いを馳せてみる。

苦しいバス業界

おそらく、バス業界は例に漏れずコロナ影響を大きく受けた業界のひとつだろう。

やはり通勤・通学客が減ればそれだけ利用者も減少する。
コロナ禍のたまの出社日などで利用したときはガラガラで大体座れた印象だったが、最近はまず座れることはない。

徐々に通勤・通学客が増えてきているとは思うが、一定数の顧客は在宅ワークなどによって利用頻度はコロナ前から比べたら圧倒的に減っているのは間違いないだろう。

コロナ以前からテクノロジーの進化による在宅ワーク拡大の予兆はあったのだから、そこら辺の課題は持っていたのだろうがなかなかそう簡単に解決策は見当たらないのも事実。

そうなってくると徐々にコスト削減のための運行本数の減少や運賃の値上げなどサービスの低下に踏み出さなければ事業継続は難しくなってくる。

バスのビジネスモデルでは、1台のバスでできるだけ多くの人を乗せていくことが直接的に収益の拡大に繋がる。

その他の収益としてはバス自体や車内の広告収入、停車のアナウンス広告ぐらいなのではないかと思うが、インターネットが進化した昨今では、わざわざバスの乗客という絞られすぎたターゲットに向けた広告はなかなか集まらないだろう。

実際、バスに乗っていても広告はほぼないに等しい。

そんな、苦境に立たされている(と、ぼくが勝手に思っている)バス業界。
どう時代の変化に対応していくべきだろうか。

サービスレベルは悪くても仕方なし

荒天のときはテレワークが増えたりするかもしれないが、今の時代のバスの使われ方を考えてみると割と雨や台風など天候によって増える需要が高いのではないだろうか。

だから、冒頭のぼくが20分以上も待たされた超満員のバスでも、次々に乗客が乗ってくるわけだ。

晴天のときには比較的需要が少なく、荒天のときに需要が高まる。

需要が少ない時は車内も空いてるし、乗降に時間がかからないから遅延も少ない。
一方で、需要が多いときには車内はギュウギュウで、乗降に時間がかかるからどんどん時刻表の到着予定時間から遅れが生じる。

つまり、需要が少ないときはサービス品質は高く、需要が多いときにはサービス品質が劣悪になるということ。

これでは、顧客満足度はどう考えても低いままだ。

そう、バスのビジネスモデルは実は顧客満足度が低い方が収益性が高くなるという、企業としてなかなか売上の上昇を打ち出しづらい業界なのかもしれない。

そんな中で苦境に立たされている昨今。
顧客満足度と売上が比例しないこのビジネスモデルのままでは、いずれ淘汰されてしまいかねない。

いいサービスだからこそ、利用者が増えて、企業も売上が伸びていく。
企業活動としてはあるべき姿であり、当然目指すべきところ。

だが、バスのビジネスモデルでサービスレベルを高めようとすると、1台あたりの乗客数を制限して全員が座れるようにする、荒天時の運行本数を増やす、などが考えられるがどれも1台あたりの売上が減少する。

そして、それを実現するにはバスの台数も運転手の数も必要となる。
結果、コストが上昇し、値上げなどにも繋がる。

顧客としてはサービスレベルを取るか、金額を取るかの2択を迫られることになるが、こう考えると路線バスのような短距離移送の場合、サービスレベルはある程度のものでいいのかもしれない。

座れなくても駅までのほんの10〜15分程度なら立っていられるし、雨の日の混雑はイヤだけど濡れるよりはマシ、という人は混雑したバスに乗るだろう。

顧客が路線バスに対して何を求めているかを突き詰めると、必ずしもサービスではなく、適度な価格帯とある程度の時間の正確性だったりする。

結局は現行のビジネスモデルが一番、顧客のニーズにマッチしている可能性が高く、顧客もこれ以上のサービスを求めているわけではないということになる。

歩くには遠いけど、タクシーよりは安くて、電車ほど正確ではないけど遅延も少ない。そんな絶妙なニーズにお応えしているのが路線バスなのだろう。

ではこのままでいいのか、といえば決してそうではないハズ。

テレワークやオンライン授業などの浸透による通勤・通学自体の減少。

さらには、晴天のときにぼくが利用するようなシェアサイクルなど路線バスに代替されるモビリティが安価に手軽に使用できるようになってきている。

てはバス会社は今後どこに収益拡大の余地を求めていくのか。

他のシェアコミュニティとの提携

コロナ禍により、当社ではバス定期が廃止された。代わりに出社時の往復バス代は立替で給与と一緒に支給。

実はバス定期を申請しておきながらも、晴れの日は最近勢力を拡大してきたシェアサイクルを活用していたりもした。

時間通りに来ないバスだけを頼りに通勤するのは心許ない。急いでいるときだってある。そんなときはシェアサイクルを使う。

バス定期のときはしょうがなく15分70円のシェアサイクルを自腹で払い、駅までの道を颯爽と走る。

我が家の自転車にはない、電動付きなのでビュンビュン飛ばせてなかなか気持ちが良い。

定期が廃止され、実費精算になったためシェアサイクルを利用しても自腹にならなくなったのは実は良かった点だったりもする。

先程も少し触れたが、バスというのは複数ある交通手段のある中の選択肢のひとつとしては非常に有効なひとつであるが、バス単体となると一気に使い勝手が悪くなる。

シェアサイクルや健康のために歩くというときもあるかもしれない。しかし、雨の日ともなるとそうはいかないのでバスに乗る。

つまり、バスの使われ方としては、雨の日に濡れずに目的地まで行きたい人や足腰が弱く、歩いたり自転車を漕いだりするのが困難なご老人が利用者の軸だったりもする。

その他大多数の人には、他にも代替可能な交通手段となる。

逆に路線バスを普段は利用せず、自転車、徒歩の人たちがたまに使うようになれば新たな顧客の獲得に繋がる。

つまり、敵対するのではなく共存に道を探るという方が賢い選択なのかもしれない。

顧客のニーズが「駅までの移動」なのであれば、例えば路線バス、タクシー、シェアサイクル…などを全部まとめて月額料金で使用できるようなサービスがあれば利用者はその日の状況にあわせながら通勤手段を選べるようになる。

雨の日の運行本数を増やして、晴れた日はシェアサイクルの利用を促すために運行本数を減らす。
月額料金ではないが雨の日や朝など混み合う時間の運賃を上げる。

運転手やバスの台数の問題などもあるだろうが、例えば自動運転の進化により一気にその問題がクリアされるかもしれない。

最初から、バス一択と決めつけるビジネスモデルではいずれ破綻してしまうことは目に見えているわけなので、他の交通手段との提携や連携をすることで新たな近距離移動者のニーズに柔軟な対応が可能となる。

利用者の働き方や学び方が多様化する中で、当然交通機関にも多様化が求められる。

実際はすでにいろいろと考えているのだろうが、イチ利用者としてもっと利用しやすい形になればと勝手に無責任な妄想を繰り広げてみた。

利用者には見えないさまざまな課題は当然あるのだろうが、路線バスがなくなってしまうのは社会のインフラとしてはマイナスだし、ぼくとしても通勤手段が減ってしまうのは死活問題。

今後のバス業界の動向には注目していきたいと思う。




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