見出し画像

利益を出すのは何のため?

企業というものは利益をあげるために存在している。

企業という組織で働く以上、我々サラリーマンの使命はいかに会社の利益をあげられるか。
昨年よりも1円でも多く利益をあげられるか、継続的に利益を稼ぎ続けられるかというのが仕事をする上で根本にあると思う。

そんな当たり前のことではあるが、企業はどうして利益を出さなければならないのだろう。
我々サラリーマンはなんのために利益を追求するのだろう。

株主への還元のため?売上獲得に向けた設備投資のため?従業員の待遇改善のため?

みなさんの会社はこのような利益の使い道を社員へ説明しているだろうか。

ぼくが思うに、日本の企業はここら辺の説明が圧倒的に少ない。
少ないというか、皆無に近い。

ぼくとしても15年ほどサラリーマンをやっているが、過去1度もこういった内容は説明をされたことはない。
転職や合併を経験してもなお、説明を受けたことがないのだからだいたいの日本企業で説明などされていないのだろう。

日本人は特に溜め込みやすい性格!?

実際、日本企業の内部留保(家計でいうところの貯金)は世界的にみても多く、そんな中さらに9年連続で過去最高を更新しているという。

つまり、社員たちが必死に稼いできた利益を企業はコツコツと溜め込んでいるらしい。

なぜそんなに溜め込んでいるか、とかを語りだしてしまうと一気にどこかの経済雑誌みたいになってしまうし、そんなの賛否両論あるのだろうからぼくのようないちサラリーマンがとやかく言う話ではないが、まあきっと「なんかあったときに…」みたいな感じで深い理由なんてないんじゃないかって思う。

企業からしたら、これまでだって真面目に働いて利益を稼いできてくれる社員たち。
多少の昇給やボーナスの評価を上げてさえいれば、いきなり利益を還元なんてしなくても十分よく働いてくれるし、業績が傾き始めたときにいざ給料が下がると一気に辞められてしまうのも困るから、経営者だってそう簡単に社員へ還元などはしない。

かといって、売上拡大を狙って大規模な工場などを作ったりして、それがコケたら経営者として責任を取らなきゃならないし、新規事業に注力するといって優秀な新たな人材を採用しようものなら、会社を乗っ取られるかもしれない。

と、まあそこまであからさまではないにしても”リスクを恐れてなにもできないからとりあえずとっておく”というのが正しいのではないだろうか。

当社においても毎年の利益をなにか目的があって溜め込んでいるというよりは、株主や親会社に対して業績が右肩上がりで安心できる企業であることを示すため、ただそれだけに毎年、前の年の利益をちょっとでも上回れるように計画を立てたりしているのではないかと感じる。

企業としての目的があり、そこに向かって行くためにはもっと規模が大きくならなければできないビジネスがあり、M&Aなどで企業を買収して行く必要がある、とかではない。
大規模な自社工場に投資する予定がある、とか新規事業を立ち上げるにあたってその分野のスペシャリストとなる人材を集めなければならない、とかでもない。

そんな意識高く社会課題を解決するだとか、日本からグローバル市場にうって出るみたいなそんな大層な決断にはなかなか踏み出せないのも理解できなくはない。

日本の企業では定期昇給や年功序列などがまだまだ残っているので、年々人件費は増加傾向にあるのは事実としてあるものの、その一方で定年退職を迎える人材も多く、新陳代謝がうまくいっている企業ではそこまで人件費の高騰が問題になることもないだろう。

社員たちの努力や工夫によって生まれた利益を社員に還元するわけでもなく、かといって自分たちの成長のための投資に使うわけでもない。

ただただ、それがなんなのかもわからない、そして本当にくるのかもわからないものが来たときに生き残っていけるように利益を溜め込んでいる企業が大半。

企業で働く我々サラリーマンにとって、果たしてこれはいいことなのだろうか。

家庭で考えてみる

共働き子供が3人いる我が家。
ぼくと妻の給料で年100万円を貯められる家計とする。

子供たちが成長するので毎年支出は増えるし、子供たちが大きくなってくると家が手狭になったり、車が老朽化を迎えたりもする。
でもそういった支出を含めて考えて、それでも貯金額を前の年より増やそうとぼくと妻はそれ以上の給料がもらえるように仕事に精を出す。

これがいわゆる前年超えの計画・目標ということになる。
なんのために貯金し続けるとかは置いといてとりあえず溜め込み続ける。

この計画・目標では翌年には101万円、翌々年には102万円のように年間で貯められる金額を徐々に増やしていかなければならない。
当然、前の年の貯金が残っているわけだからどんどん貯金額は増えていくことになる。

この溜め込んだ貯金を例えば株式投資に積立てて長期で運用すれば、年利5%程度の福利を得られる可能性が高いわけだが、株価下落のリスクを恐れて投資に踏み出せない。

一方で、毎年支出も増える中、貯金額も増やさなければならないのだからぼくと妻は仕事の質を上げていかなければならないが、子供たちがいる以上残業や休日出勤などは制約が大きい。

さらには家事・育児という労働も加わるわけだから、働き手であるわが夫婦はどんどん疲弊していくことだろう。

疲弊していけば当然ながらパフォーマンスは低下し、評価も下がる。
それに加えてなんのために溜め込んでるのかもよくわからない貯金を続けることがバカバカしくなり、モチベーションの維持も難しい。

結果として収入が減少し、こんな負のループに陥ってしまえば、当初の計画・目標なんてなかったかのうように赤字家計に一気に成り下がる。

赤字家計となってもこれまでの貯金があるから当面は心配いらないものの、支出が増えているのだから貯金を食い潰すのもあっという間だろう。

たとえば、ここで思い切って家事代行サービスなどを使って働き手のパフォーマンス低下を防止したり、整骨院に通うなどして体を整えるためにお金を使う。

他にも本を読んだり、勉強することにお金と時間を費やすことで働き手の単価を上げる努力をしてみる。

貯金の目的を明確にしたり、半年に1度も思い切って家族での海外旅行に使うことで定期的なモチベーションアップに使う。

そんなことをしているうちにいつの間にか、心身共に健康で仕事でのパフォーマンスが上がり、単価もあがって労働時間を増やすことだってできるかもしれない。

家庭であれば、夫婦が目的もなくストイックに毎年貯金額を増やし続けるなんてことにはならない。
どれだけ続けても喜びや幸福がないのだからそんなもの長続きしない。

お金は使ってはじめて喜びや幸福が生まれる。溜め込むだけでは何も生み出さない。

みんなそれを感覚的にわかっているから、家庭ではこんなことが起こらない。

それが通じない企業の論理

それなのに、不思議なことに企業となるとこれがまかり通ってしまう。

定期昇給やボーナスという目先のちょっとした利益でごまかされてモチベーションが維持できてしまっている。

新たなことにチャレンジしたり、成長していく過程の楽しみを知らずに日々をなんとなく過ごしてしまう。

極端な話、事業規模の拡大を目指さないのであれば年間の支出分だけの利益を稼げはそれでいいわけだから、たとえばそれが10ヶ月で達成できれば残りの2か月は休んでしまってもいいし、おなじ給料で週休3日にしてもいい。

毎年、黒字化しているならばひとまずそれでOK。
プラスα稼いた分は給料として還元してもいいし、上記のように時間として還元してもいい。

そうなれば社員に明確な目的意識が生まれ、一気に経営が自分ごと化する。

とはいえ、実際はそんな都合よく黒字化を継続できるかわからないし、黒字化するまでは給料を払わないでいい訳でもない。

なにより売上の拡大、事業の成長を目指さずに安定的に黒字を継続できるなら倒産する会社はないわけで、そんな単純なものではないのも事実。

あくまでも、業績が良いときだけを切り取れば…の話であるので、都合よく解釈して「会社に搾取されていた!」と騒ぐのはやめておいたほうがいいだろう。

会社の利益を自分ごと化してみる

結局何が言いたいのかといえば、われわれサラリーマンひとりひとりがもっと会社の利益に、そして利益の使われ方に興味を持つことが大切だということ。

これまで、何の疑問も感じていなかった人は、そもそも自分の会社が何を目指していて、その中で自分の業務がどう貢献しているのか、を考えてみてほしい。
そこで生み出された価値や利益を会社がどう使っているのか、それは会社の目指す方向とブレていないのか、などをいち社員の目で見定めてほしい。

そうしなければ、会社は社員が気づかないのをいいことに内部留保を溜め込んで、とにかく倒産だけはしないようにとチャレンジができない体質になってしまう。

当然ながらリスクが大きいほど当たればでかいが、どの範囲までそのリスクを許容できるのかは企業しだい。

そんなとき、社員ひとりひとりがしっかりと経営を考えられている企業とそうでない企業では大きな差が生まれるのは明らかだし、どちらが成功確率が高いかは言うまでもないだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?