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面接官が教える面接対策

ちょうど先日、当社の来年度の新卒採用一次面接の面接官を行った。
あたりまえなのだが、面接をはじめとした選考に対しては、採用側のニーズに学生が応えられるかという視点が大事なのだが、学生のみなさんはそのことに気づいているのだろうか。
ぼく自身、就活ははるか遠い記憶だが、就活本を読んでいろいろと戦略を練って挑んだものの、そんなあたりまえのことも意識できていなかったのではないかと思う。
世の中に溢れている就活本に書かれていることはなどは、基本的には最低限の面接やESのマナーだったりテクニック論が中心で、それらの情報すら取得していないそもそも就職する気のない人たちを除くとそれぐらいの事前準備は誰もがしていることであり、選考の通過率が上がることには繋がらない。
そんな悩める就活生は是非、闇雲に選考を受け続けて場慣れするだけでなく、どうせならその場慣れのための面接を使って、面接官の目線でESや面接での他学生との差別化を意識して試行錯誤をしてみてもらいたい。
以前書いた記事では面接に挑むマインドを述べているが、今回はより具体的なテクニック編としてぼくが考える差別化戦略を紹介してみたいと思う。

エントリーシートに事業内容を書くな

選考の第一の壁が多くの場合はESの提出だろう。
企業にもよるだろうがESや一次面接はある程度応募者を絞り込むためのものである場合が多く、選考する側に対しては明確でわかりやすく伝えるだけでも好印象を与える。
なかなか書類選考や一次面接が突破できないという人は、自分自身のESを採用担当者の視点で読んでみることをオススメしたい。
そんな超重要なESだが、何故かそこまで学生のみなさんは重視していないようにも感じる。
ESはその後の選考に進んだとしても、1次でも最終でも必ず面接官は事前に必ず目を通すものなので、その内容が分かりづらかったり、ありきたりあだったりするだけで面接ではマイナスからのスタートになりかねない。
選考において唯一、最初から最後まで一気通貫で使用されるものなので、ESの内容を突き詰めることこそが、内定への最短距離なのではないかと感じる。

そんなESにおいて、やたらと同じような表現をしている学生が多いことに気がついた。これは今年に限ったことなのか、これまでは気づいていなかっただけで僕自身の経験値が上がって気づいたことなのかは定かではないが、自分のアピールそっちのけで、企業の事業内容を書いてしまう学生が非常に多い。

文字数の限られたESの半分ぐらいを受ける企業の事業内容や経営理念、その企業の強みの説明をご丁寧に書いてくれているのだが、これがなんとももったいない。
採用担当者としては自社のことなので事業内容や理念、強みなどは当たり前だがあなたよりもずっと理解しているに決まっている。
つまり、その企業の事業や理念の説明は最低限でも十分に伝わるはずだし、そんなことよりもあなたが何をしたいのかを企業は聞きたいのである。


【ありがちES例】
私は、人々の生活に寄り添い、毎日に彩りを与えるような仕事をしたいと考えています。学生時代から貴社の〇〇というサービスを利用しており、自分自身の毎日がより豊かになった経験からこのような考えを持つようになりました。
貴社の△△の事業は業界に類を見ない非常に先進的な取り組みであり、変化の大きい現代において挑戦し続けるチャレンジ精神に深く共感しております。
私自身、子供の頃からチャレンジ精神が旺盛で、新しいことに挑戦するとワクワクします。このチャレンジ精神を発揮して〇〇というサービスに携わりることで、自分自身だけでなくお客様に対してもワクワクを届けたいと考えております。(282字)

一見、よくまとまったESに見えなくもないが、よく考えると誰でも書ける内容。これで、志望者の人となり、経験が伝わるだろうか。
実際、この手のESは非常に多く、何人分ものESを見ているとかなりの確立で既視感を感じる。
悪いところを具体的にあげてみよう。

①企業と自分の繋がり(エピソード)が弱い
エピソードがあればそれを可能な限り具体的に書く。ほとんどの場合はそんなものないだろうから不要。ここに文字数は割かない。
②企業の事業内容に対する賛辞はアピールにはならない
先程も言ったが、採用担当や面接官はその企業の社員なので学生に言われなくてもそんなのとっくにわかっている。ここはあなたのアピールする場なのだから、あなたのことを書くべき。
③すべてがとにかく抽象的
①、②で余計なことに文字数が割かれていて肝心のあなたの考えや経験を具体的に書けなくなっている。他の学生と差別化するには、あなた自身の考えや経験を具体的に書くことが必要。企業のHPに書いてあることに自分を合わせても、誰でも書ける内容になってしまう。
④企業によって書く内容を変えなければならない
これでは受ける企業の数だけ、ESを書き換えなければならない。10社20社と受ける前に自分自身が疲弊してしまうのは明白。
それにしっかりと企業研究をしていることで志望度が高いことをアピールするのは良いが、志望度が高いことが採用に有利になるかというと必ずしもそうではない。

選考する側の立場で考えると、ES選考の際は当然ながら何十人、何百人のESの中からの選考となる。ESを通過したとしても、面接官であれば1日に何人もの学生と面接をする。
つまり、必ず他の学生との比較となり、どれだけ印象に残るかというのが分かれ道になるのである。
エピソードが抽象的で、十分理解している自社の事業内容が書いてある志望動機では、全くと言っていいほど印象に残らないし、他の学生も同じことを書いているので差別化は難しい。

中身はそんなに重要ではない

マインド編でも言っているが、面接で聞きたいことは大きく分けて”学生時代に力を入れたこと””志望動機”の2点。
それぞれ自分自身の経験と紐付けて話すということはもはや就活においては当たり前となっていると思うが、正直面接をしていて突出した経験やエピソードを持つ学生は年に数人もいない。
もちろんエピソード自体が希少だったり、なかなか他の人ができないような経験をしている人はそれを語るだけで印象に残りやすいだろうが、そんな特別な経験をしている人はESや一次面接が突破できずに苦労するなんてことはないだろう。
では、ごく普通の学生がどうやって差別化をしていくのか、であるが例えば以下のようなちょっとした工夫ができるかできないかで大きな差が生まれる。

【差別化戦略例】
簿記の資格を持っており、企業研究にあたって財務分析を行った。財務分析をして、貴社の利益率の高さ、その利益を積極的な設備投資につなげていることを見て、成長性を感じた。
希望業界の中でこれだけの利益率、設備投資ができる企業は少なく、より業界のシェアを広げる仕事ができるのではないかと感じている。
さらなる成長に向けて、利益率は下がるが売上規模の拡大を図るために〇〇の分野に事業を拡大するなどができないか、自分の学生時代の△△という経験をその分野で活かせると考えている。(254字)

・特技や資格の武器を最大限活用する
・自分の得意分野に視点をズラす
・自分なりのアイデアを経験と紐付けて提案する
・とにかく具体的な話に持ち込む
これらに気をつけて話すだけでも、企業側の印象は大きく変わるだろう。

また、最近ではリモートでの面接なども多いと思うので、例えばアカウントの画像をその企業の主力商品やキャラクターにしてみたりすると志望度の高さが伝わるかもしれないし、あなた自身の超どアップの笑顔など、人となりを表せる画像をアカウント画像に使用したりと、いろいろ工夫をしてみると面接での話の種にもなるかもしれない。

もはや都市伝説的な話であるが、「サッポロビール社の面接で、集団面接で全く話ができなかった男子学生が帰り際にジャケットを脱いで”男は黙ってサッポロビール”と書かれたTシャツを見せて合格した」などというように、突飛なアピールをして印象に残るという戦略もなくはない。
ただ、こういう類のものは企業側の受け取り方によっては一発アウトになる可能性も高いし、二番煎じは大体失敗するので、リスクが大きいことを覚悟でそれでも革新的なアイデアがあるのであれば、一発逆転を狙ってやってみるのもアリなのかもしれない。

ES/面接で話す内容は使いまわしでOK

結局採用側としてはあなたの人となりを見たいのだから、上述したように受ける企業によってひとつひとつ志望動機を書き換える必要はない。
むしろ企業の事業内容や薄いつながりをアピールしたところで相手の印象に残らないのだから、そこに時間をかけたところであまりメリットがない。

それであればより自分自身の強みや経験、やりたいことを深く理解することや企業選びに時間をかけたほうがよいだろう。
結局、世の中にある何十万、何百万という会社から受ける企業を選択するのだから、その時点で何かしら自分自身の強みや経験、やりたいことと紐付いているはず。
企業側に自分の志望動機を寄せるのではなく、自分自身の働く理由に企業の事業内容やビジョンを寄せた志望動機とするのが、本来のあるべき姿なのである。

ついつい自分に特別な経験がないからそれを隠すために、興味を持った事業や経営理念などをESに書き連ねてしまう。面接では、折角時間をかけて覚えた企業研究の結果を全てを言いたくなって、でも結果時間切れで何も伝わらない・・・なんてことになってはいないだろうか。
すべてを言おうとして何も伝わらないというのは就職活動に限らずとも社会人生活の中でもよくあることだが、そんな気持ちをぐっと堪えて自分自身の経験や知識をもう一度見つめ直し、最も伝えたいことに絞って研ぎ澄ましていくことができれば、唯一無二の印象に残るES/面接ができるようになる。


最後に、就職活動においてこのような創意工夫ができる人間であれば、たとえ第一志望の会社から内定がもらえなかったとしても、必ずやりたい仕事に出会うことができるだろう。
新卒でどの企業に入社するかということよりも、社会に出てから創意工夫を継続することができるかのほうがずっと重要で、それができる人は自然とキャリアは拓けてくるものだと思う。
今は新卒で入社した企業に定年まで勤め上げるという時代ではないので、転職や副業、場合によっては起業などの選択肢もある。
あくまでも就職はゴールではなく、社会人生活のスタートであるので就活も今しかできない貴重な経験として、後々役に立つはずだと考えて精一杯取り組んでみてもらいたい。

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