読んでない本大賞 2021
ええと、読んでタイトルのごとし、読んでない本です。
年末を迎えるにあたり、今年買ったけどまだ読んでない本を、自分へのリマインドを兼ねて、Amazonの購入履歴を見ながら振り返ります。
良さそうだと思ったから買ったわけなので(紙の本は日本からオランダに発送したりしてるので)ひとにもオススメできる本かもしれないし、でも読んでないので僕もじっさいのところは未知。という無責任なランキングです。
順位はつけようもないので、深い意味はなく、買って時間が経っているものほど上位にしています。それだけ読みたい気持ちが蓄積されているとも言える。
では早速。
(写真を載せてるのは紙で買った本、載せてないのはKindle版で買った本です。)
第10位
チームが自然に生まれ変わる 「らしさ」を極めるリーダーシップ
李 英俊, 堀田 創(著)
目次の見出しにあった
・「親分肌」も「いい人キャラ」もいらない
・「やりたいこと」よりも「やりたくないこと」に目を向ける
などに共感して購入。
あと英題の「EFFICACY-DRIVEN」も。
いわゆるリーダーシップらしいリーダーシップって、「リーダー風」的な、僕はどっちでも良いものだと思っている。
MISSIONドリブンとかいうとカッコイイけど「〇〇せねばならない」という責務感で仕事するのは楽しくないから続かない。
「やりたいこと」を探すよりも、「やれること」(得意なこと)を仕事にしたら誰でも最強になれるとも思っている。
MISSION(任務や責任)よりもEFFICACY(自分が自然にできることで役に立ってる感)のほうが大事である
・・・的な話が、理系的・データ的な観点で語られてたら愉しそうだなと思って購入して、まだ読んでいない本です。
AIスタートアップの起業家でもありフューチャリスト(って何?)でもある堀田創氏の本は、AIの話でありつつアナログ的、俯瞰的でありつつ本質的な視点を与えてくれるところが好きで、前著「ダブルハーベスト」に続いて今回も購入しました。
まだ読んでないけど既に満足している、堂々の第10位。おめでとうございます。
第9位
進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」
太刀川英輔(著)
NOSIGNERこと太刀川英輔氏の大作・力作。
実は僕は著者が学生の頃に一瞬だけお会いしたことがあり(ちらっとなので絶対先方は覚えていない)、その頃からNOSIGNERを名乗っていて、ちょっと面白いアイデアの名刺をもらったのを覚えています。
NOSIGNERの名前に込められた、いわゆるデザインをしないデザイナー、コンセプト重視的な考えには当時から共感したし、学生にしてそれをセルフブランディング的に打ち出してる戦略性に、すごい人だな〜と思いました。(当時僕は社会人のはじめの方)
NOSIGNERはノザイナーと読めばいいのだろうけど自然とノジナーって読み違えやすくないか?ということと、ノザイナーっていう音の響きがちょっとゾワゾワして気になるな、っていうのは、その名刺もらった当時に思って、今も変わらない僕の独り言です。
帯にある濱口氏のコメント「進化パターンの百科辞典」、柳澤氏のコメント「こりゃ3年かかる」が良いですね。
網羅的で辞典的、かつ3年かかった大作、となればそれだけで「読まなくても持ってるだけで満足」しやすく、積読の可能性もそりゃ高くなるでしょう、というアドバンテージも加味しての第9位。おめでとうございます。
第8位
生命海流 GALAPAGOS
福岡 伸一 (著)
大ヒットした『生物と微生物の間』で福岡氏のことを知り、著者の本を買うのはそこから数えて3冊目。きっと出されてる本の数からすると、僕は「あまり読んでないほう」の読者ではないかと思う。
『生物と微生物の間』は、読んだのですけど、みんなが言うほどヒビッと来ておらず(俺はわかってないのかな?という感覚)、2冊目は読まずに(オランダに引っ越す時に)人にあげてしまった。
なので3回目のリベンジを挑んでいる感じなのだが、やっぱりリベンジ・マッチはそれなりにこちらも準備が必要になったりするので、そうそう気軽に読み始められない。
そうなることは購入時点で予想できていました。
ということで、安定の第8位です。おめでとうございます。
第7位
コンセプトのつくりかた
玉樹 真一郎(著)
2019年の『「ついやってしまう」体験のつくりかた――人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ』のヒットも記憶に新しい、玉樹真一郎氏の、それより数年前に書かれた著作。
任天堂から独立された後くらいの本ですかね。
僕は『つい〜』出版の1年前くらいに、講演に参加して、玉樹さんを知りました。ゲームのUXの、とても面白くて興味深い話でした。
僕は自分がやっているのは業務システムやBtoBサービスなど、一見ゲームとは対局にあるUXが中心ですが、その内容にいたく共感したのを覚えています。
その講演でも、「いま話してるようなことを書いた本が、そろそろ書き上がるのでお楽しみに」と仰っていて、その後に満を持して出た『つい』は僕はすぐに買って(少しだけ寝かせてから)読みました。
この本は、基本的には『つい』と同じ考え方の、素晴らしい内容が書かれているだろう、と予測して買っているので、僕自身は急いで読まなくていいというか。
「だったら買わなくていいじゃん」とも言えるのだけど、僕は(小説とか映画とかでも)素晴らしい作品に出会うと、「安くて申し訳ない」みたいな感覚になることがあります。共感や感動、を与えてくれた感謝を作り手に伝えるためにも「もうちょっと払いたい」みたいな。
下世話だし、おこがましいかもしれないけど。
この本はそんな感じで購入したところもあります。『つい』の前の講演の感動から、本のことも含めて、続きの玉樹さんに対するサブスクリプションというか。
「最初から、読むつもりがない」まで言ったら逆に失礼ですけど、でもそんな感じもあります。
第7位、おめでとうございます。
第6位
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる
尾原 和啓(著)
これはもう、タイトルを読んだだけで満足というか。そこにお金を払ったと言ってもいい。
尾原氏の本は、(すごくたくさん書かれてますが)毎回タイミングとタイトルが絶妙だと思うんですよね。
『アフターデジタル』とか『アルゴリズム・フェアネス』とか。
「あ〜、それそれ!思ってた」とか(実際は自分では思ってなくても)「うまいとこに目をつけて本にしてくれやがったな〜」みたいな。センス良い半歩先の着眼という感じですかね。(いい意味で書いています。売れるってそういうことだと思う)
それこそデジタル、SNS時代の本らしく、買ったあと読まなくても、Twitterなどから事前にだいたいの内容や方向性は分かってしまうしね。
かつ、毎回タイトルが絶妙なので。
本当に、そのタイトルで本を出すことへの賞賛と共感、それを絶好のタイミングとスピード感で出すことへの尊敬を示すために購入している感じです。
なんかこの感じがそもそも「プロセスエコノミー的」で、僕も(読まずして)本書のコンセプトを体現してるのではないかと思っているが、読んでないので分からないです。
だから僕にとって尾原氏の著作の「積読率」は非常に高いです。
すでに連続防衛な感じの貫禄の第6位。おめでとうございます。
●
ここで、7位のところでも書いた「買わなくていいじゃん」は、買う理由があるとして、それを「紙の本で買う必要があるのか?」について。
奥さんにもよく言われます。「読まないなら、せめてKindleにしてよ(場所とるし)」と。
それに対する僕の答えは「ふっと読みたくなったら読みたいから」です。
Kindleのほうが、いつでもスマホやiPadに整理して持ち歩けるし、読みたくなったときに「あの本どこ行ったっけ?」と見つからないこともない。
むしろ「ふと読みたくなった」ときに便利じゃないか、という気もする。
でも、デジタルに納まった本は、文字通り「なんとなく手に取る」ということはないんですよね。
なんとなく書棚に目についたものを手に取る、パラパラとページを繰る、その感じは「読もう」と思ってタップするのとはやっぱり違う、紙の本が持つ良いところだと思います。
主にデジタルのユーザー体験を作るのが自分の仕事なのに、ノスタルジーなおじさんのようなことを書いてしまった。
第5位
イノベーション・スキルセット~世界が求めるBTC型人材とその手引き
田川 欣哉(著)
UXデザイン、コンセプトデザインの世界ではいま最も活躍されていると言っても良さそうな、タクラム田川欣哉氏の著作。
結構ウェブ記事とかポッドキャストとか、ウェブメディアで田川氏やタクラムのコンテンツに触れる機会は多いので、なんとなく理解しているような気になって、読むのも(買うのも)遅めになった本です。
この本に関しては「読まなくてもわかる(気がする)」ではなくて、表紙(オビ)に書かれた「BTC型人材」とかもよく分かってないし、早く読むべき本。
実力の第5位、おめでとうございます。
第4位
両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
チャールズ・A・オライリー, マイケル・L・タッシュマン(著)
入山 章栄, 渡部 典子, 冨山 和彦(訳・他)
この本は確か、仕事(に関する雑談)を加嶋さんとしている中で、紹介してもらった本。
自分たちのワークフローの中で、やっぱり「振り子を振る」ことが重要なようだ、という話になり。
振り子は、抽象と具象、計画と試作(プロトタイピング)、作ることと捨てること、などなど、僕たちの仕事の至るところに存在しています。
毎日それだけやってると言ってもいい。
たしかそんな流れから、このタイトルでもある「両利き」の考え方を聞かされたと思います。
ハイライトとなるコンセプトを聞いてしまったので、なかなか読み始めるきっかけが難しい。「多分なかなか読まないだろう」と思いながら買った本ですね。
必然の第4位。おめでとうございます。
第3位
リサーチ・ドリブン・イノベーション 「問い」を起点にアイデアを探究する
安斎 勇樹, 小田 裕和(著)
この本は、もはや買ったときの理由やきっかけも覚えていない。
購入日が第4位と同じ日(2021年6月)なので、同じく加嶋さんの紹介だったか、Amazonで「こちらもオススメ」的に出てきて購入したのか。
でもタイトルを見ると、今でも内容は気になりますね。
ちょうどこの頃は、自分達がUXデザインをする前に「リサーチをしている」と明確に認識したころだったと思う。
いまさら?って感じですけど。
それまでは、なんとなく僕は、単純にワードの響きの面で「リサーチ」を毛嫌いしていたかもしれません。
なんとなくリサーチというと「作らない人」がやる「面白くないこと」ことのような気がして。
いわゆるカスタマージャーニーマップの描画とか、そのためのユーザー観察やヒアリング、同カテゴリのサービスをヒューリスティック分析するとか。
こういうことを、ずっとやってきましたが、あまり表舞台には出してなかったです。
じつはそのリサーチ部分に、提案やデザインのコンセプトの元になる発見があるのですが、そっちの「タネ明かし」部分は、あまりプロジェクト上で語られることはなかった。
それが意識が変わったのは、オンラインでZoomで打ち合わせするようになり、MiroやXdで画面シェアするようになったせいはあると思います。
対面の打ち合わせやプレゼンテーションに比べて、Zoomのリモートのミーティングは、やっぱりダイナミズムが下がる面はあると思います。
例えば、大きく印刷したアートボードを見せることもなければ、細かいところでは、説明する側の音声が良いところで途切れたりとか。
完成されたプレゼンテーションの迫力、それによる感動、みたいなものは、やはりリアル対面には劣るでしょう。
ただその代わりに、リサーチの結果、ここに興味深い「問い」の発見があったという話が、時間をかけてキレイなプレゼンやカンプにまとめなくても、Miroでスピーディに共有できる。そこで挙がった質問や意見も、Miroのボードにすぐ落としたり、その場でリアルタイムに、XdやFigmaでデザインラフやプロトタイプに反映して見せることもできる。
そういう、リサーチからの発見と、そこから形を立ち上げていくプロセスを共有しながら進めるやり方が、もともとUX、コンセプトといった「そもそも」や「意味づけ、方向性」を、デザインやプロトタイプにつなげることを仕事の中心としている僕には、ちょうどよく働いたと思います。
これは『プロセスエコノミー』(第6位)的かもしれない。
結果的にそれが、オランダから日本の顧客にリモートで提供しやすいことだった、とも言えます。
というか、どちらが目的で結果なんてあるのか? 課題と解決みたいなところから新しいものは生まれるのか?
『進化思考』(第8位)には、そんなテーマも含まれているかもしれない、と思います。が、読んでないので分からない。
いっさい読んでないのに、これだけ語らせるタイトル。
圧巻の第3位です。おめでとうございます。
第2位
偉大な組織の最小抵抗経路 リーダーのための組織デザイン法則
ロバート・フリッツ(著)
これはもう、タイトルが何を言っているか分からないですね。
なのに読みたく(買いたく)なる。素晴らしいです。
今年の5月に「そろそろ日本から紙の本を買って送ろうかな」というタイミングで、「あとで買う」リストにいたこの本を注文。
その時点ですでに「なんでこの本が欲しかったのか」は全く思い出せなかったものの、「何かあるのだろう」ということで。
そういう「偶然の出会いに従う」みたいなこと、無駄使いみたいなことは、適度にするようにしています。
でも読んでないのでね。
無駄かもしれない可能性をさらに無駄にする、みたいな、なんだか分からないですね。
ひとまずこのタイトルは、相当に読み始めるハードルが高いことは間違いなく、5月に購入してからの7ヶ月だけでなく、積読期間はまだまだ更新を続ける可能性はある。
そんな期待も込めつつの盤石の第2位。
おめでとうございます。
第1位
エマニュエル・トッドの思考地図 (単行本)
エマニュエル・トッド
『エマニュエル・トッドの思考地図』というタイトルが、最高ですよね。
『ビートルズがやってくる、ヤァ、ヤァ、ヤァ』みたいな。著者や演者がタイトルに入っちゃってるパターン。
ちみに「ヤァ、ヤァ、ヤァ」は、ビートルズ『She loves you』などにも出てくる「Yeah, Yeah, Yeah」を翻訳したものだと聞いたことがあります。
音も違うし、意味も違う。
意図的なのか天然なのかよく分からないけど、翻訳時のコピーライティングとして、斬新ですよね。
Yeahをそのままローマ字読みしただけのようにも見えるし。だとしたら「この人(ビートルズなのに)曲聴いてないな?」みたいな。
でも、出てきた頃のビートルズなんて、翻訳やコピーライターの人からしても「流行りモノ、一発屋だろ?」みたいな感じもあったかもしれないない、とか。
・・・話が逸れました。
なんせ読んでないので、話を逸らすしかないとも言う。
こちらの本は、『偉大な組織の〜』(第2位)と同時に購入しており、同じくこちらも買おうとした経緯を覚えていません。
おそらく第2位と同様「偶然の出会いを期待して購入して、その可能性を封じ込めている状態」ですね。
封じ込めているというか、可能性を先送りしている。ペイ・フォワードです。
この本は、今回紹介した中ではちょっと他と状況が違って、奥さんは読んでいます。
まさにペイ・フォワードというか、ペイ・フォー・ファミリー。
その奥さんから「良かった」ということと、エマニュエル・トッド氏がどんな人で、どうしてこの本を書くに至ったか、などを聞いてしまったんですよね。
著者はフランス人なんだけど、日本に向けた書き下ろしということのようです。つまり、日本語翻訳は出版されているけど、原文は未発表なのかな?
めずらしいですよね。音楽だと海外アーティストの「日本向けアルバム」とかあるけど。
そんなわけで、とても面白そうだし、読みやすい(手に取りやすい)本なのだけど、概要も聞いてしまったし、積読の沈黙を破って読み始めるのは、かなり後回しになるかもしれない。
そんな奇跡の一枚、じゃなくて一冊が、栄誉ある第1位になりました。
おめでとうございます。
●
第一回「買ったけど読んでない本大賞」、通称「積読グランプリ」いかがでしたでしょうか。
読んでいないので、いかがも何もないんですけど。
人にものを紹介したりお薦めしたりって、案外むつかしいですよね。
まず、適切に紹介(魅力の説明)をできないといけない。
でも正確に全部伝えれば良いというものでもないし(本や映画の場合は、ネタバレにもなる)。
その上で、自分はこれをひとに「薦めたいのか」という点も問われます。僕なんかは「僕は好きだけど」(ひとが好きか、読むべきかは分からない)という風に考えがちなので。
そうすると、仮に魅力の説明はできたとしても、薦めてるのかと言われると…という、よく分からない感じになる。
今回は、「読んでない本の紹介」なので、その辺は気楽でした。紹介にも推薦にもなりにくい、そもそもが無意味な行いなので。逆に書きやすかったです。
こういう年末らしい「今年の10冊」「私の9枚」みたいなコンテンツを書くのは初めてでしたが。一度やってみたかったのもあり。
クリスマス旅行のドイツから、自宅オランダに帰る長い電車の中で書いています。
あと今回は、初めてスマホアプリ版のnoteで記事一本を書いてみました。
もちろんパソコンのキーボードに比べたら長文の文章は打ちにくい。
かつ、スマホの画面では全体を見渡しにくいので、文脈やバランスの見直し、推敲はしにくかったです。
一方で、その限られた視界と打ちにくさの中でのほうが、勢いで短時間で決断して仕上げられるのでは?と思い、トライしてみました。(いつもPCだと、わりと推敲し続けてしまうので)
スマホで書いた割には、じゅうぶん長文になってしまったので、その点では時短効果はなかったようですが、見直せない(見直しにくい)は効いていると思います。
タイポや文脈など、かなり粗いんだろうな。
と独り言的な言い訳をしつつ、公開してみる。
みなさん、良いお年を。
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