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カンヌ映画祭ってどんなところ?

カンヌ映画祭2020年イベント中止を発表

2020年5月11日に報道されたScreen Dailyのインタビューの中で、カンヌ映画祭ディレクターのティエリー・フレモー氏は、新型コロナウィルスの影響で延期が発表されていた第73回カンヌ映画祭について、今年は多くの人を会場に集めることが難しいことから映画祭の物理的イベントの実施を断念すると語っています。

公式上映作品にフランスでの劇場公開が義務化を課しているほど映画の映画館上映文化を尊重している映画祭の一つであるカンヌ映画祭ですが、今年の公式セレクションについては6月上旬に発表し、2021年の春にかけて映画館での上映イベントを組織していきたいそうです。

このカンヌ映画祭ですが、一般的に想像する映画祭とは少し異なります。

カンヌ映画ってどんなところなのか?今回はこちらを紹介したく『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー 経産官僚の暴走と歪められる公文書管理』の第7章 カンヌ映画祭と疑惑のクールジャパン補助金の一部を公開します。

『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー』第7章 カンヌ映画祭と疑惑のクールジャパン補助金 一部公開

まず、毎年5月にフランスのカンヌで開かれているカンヌ映画祭ですが、私たちが一般的に想像するような映画祭とは大きく異なります。
カンヌ映画祭が映画界にとって特別な場所である理由は、映画祭に参加できる人を、映画産業に携わるプロフェッショナルたちに限定している点にあります。
同映画祭へ参加するには、事務局への事前登録が求められます。この時「Accreditation Badge」という入場証を購入する必要があり、そのための資格が「映画産業に携わる者に限る」となっているのです。 
「映画産業に携わる者」とは、俳優や俳優のエージェント、プロデューサー、監督、脚本家、 作家、映画化権を売りたい出版社や出版エージェント、映画館経営者、大使館や国の公的映画 機関、映画の宣伝や広報、配給会社、フィルムコミッション、映画祭運営者、映画金融関係者、 映画学校および映画科の学生、映画音楽関係者(作曲家、音楽プロデューサー、音楽出版社)、 報道機関および記者、セールスエージェント、映画機材メーカー、テレビ局、ネット配信局 ......など、これらの業界カテゴリーに当てはまる人になります。
カンヌ映画祭が世界中の映画業界人から映画産業にとっての特別な場所として尊敬されてい る「格式」とも呼べるものは、参加者を業界関係者に限定したことによる、ある種の閉鎖性に よってもたらされています。
また、カンヌ映画祭といえば、公式上映作品の鑑賞にドレスコードがあります。
例えば夜の上映の場合、男性はブラックタイ、女性はイブニングドレスがドレスコードと決められています。この公式作品の鑑賞に必要なチケットも入場証が求められるので、参加者は 当然、映画業界関係者のみになります。
このように、カンヌ映画祭とは決して地元の映画ファンが集ったり、広く一般に開放された りするような映画祭ではありません。
また、映画祭では「Marche du Film」という映画の見本市の会場が併設されています。こ こでは映画会社がバイヤー向けに新作映画の試写会を行ったり、ブースを借りて映画の権利売買の商談などが行われたりします。
カンヌ映画祭のフィルムマーケットに参加すると、CINANDO というデータベースに登録することができます。このデータベースに、自分がどのような目的でカンヌ映画祭に来ているか、どういった人たちに会いたいかなどを登録しておくことで、世界中の映画金融関係者やク リエイターと出会ったり、その他のビジネスミーティングを設けたりできます。また、データベースを基に、自分の会いたい人にアポイントを取ったりすることも可能です。
さらに、同映画祭には公式上映会場や、フィルムマーケットの民間商業ブースが集まる会場とは別の区画があります。それが、2015年に日本がジャパン・パビリオンを出展した「ビ レッジ・インターナショナル」(Village International)になります。 
「ビレッジ・インターナショナル」は、日本語に訳すと「国際村」となるとおり、政府機関や フィルムコミッションなど世界の国や都市の公的映画機関がカンヌに集う世界の映画人に対し、 自国の映画産業をプロモーションする場所です。いわば、その国や都市の映画産業の代表窓口が集まる区画になります。 
例えば、各国や都市のパビリオンが海外のプロデューサーに対して、自地域へのロケ誘致を売り込みたいとします。その場合、その国や都市にあるロケ資源だけでなく、その土地でのロ ケにより得られるプロダクション・インセンティブ等の政府支援の紹介、撮影許可や滞在に必 要な便利な情報、地元の撮影所や制作会社、クリエイティブ人材などの情報を提供します。
また、中には地元人材と海外映画人とのネットワーキングイベントを開催する国や都市もあります。
もちろん、ビレッジ・インターナショナルの入り口にはゲートが設けられ、入場証を提示し ないと立ち入ることはできません。
このように、公的な機関が集うカンヌ映画祭の国際ビレッジのパビリオンの役割とは、自分の国や都市をプロモーションすることで外国からの投資を呼び込み、地元の雇用に繋げること なのです。

「度を超えたいたずら」の経産省支援事業

本書で問題視しているのは、こうした場所で行われたジャパンパビリオンで行われたジャパンデイプロジェクトと称された「経産省支援事業」のクールジャパンになります。

このイベントには経産省担当課長が来賓として招かれ出張していたのですが、映画産業支援の面から見ると、億単位の税金を使った「度を超えたいらずら」事業と直ちに判断できるほど的外れな事業でした。

具体的にどんな事業であったかについては本書で詳しく解説していますが、この事業を広告代理店とコンソーシアムを組み行ったのがNPO法人映像産業振興機構です。

このNPOについては以前の記事でも紹介しましたが、令和2年度補正予算で作られた経産省878億円のクールジャパン事業を1週間の短期公募、1件の応募、厳正な審査を経て、受注したNPOになります。

本書で扱う2015年のカンヌ映画祭で使われた税金の原資ですが、このお金こそ878億円新型コロナ緊急支援の原点とも言えるコンテンツ海外展開支援の第1段事業から出ていました。

私が、今回の新型コロナ緊急対策支援のクールジャパン事業の878億円が正く使われているのか心配する理由の一つは、日本の映画産業のためではなく、クールジャパンで税金を使いきることを目的化したような組織が、毎度のようにコンテンツ海外展開支援事業の受託している点になります。


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