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n叉路で会いましょう

-- 400字小説 --

「駅の北口を左に進むと交差点があります。そこを右折すると坂になっています。その先のn叉路まで来てください」

初めのお稽古の日、先生に教室までの道筋を教えていただきました。n叉路とは何でしょうか。先生は「来れば分かります」しか言ってくれません。

交差点を曲がると坂になっています。その先がn叉路。道が6つに分かれています。六叉路のようです。先生からの指示は「北向きの道から数えて右に3つ目を進んでください」です。

ちょうど正午です。人気はありません。自分の影でから考えると正面の道が北向きです。その道から1、2、3と数えました。道を数えていて気づきました。六叉路が九叉路になっています。背後の道が住宅街の谷底に落ちるように続いています。

慌ててもう一度数えると十二叉路。また数えると、数え切れないほどに道が増えています。時間がなくなり先生に電話します。「あれ? お越しになるのはn日ではありませんでしたか」

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