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人の手でしかつくれない、ちいさくて善いものを届けたい。みずみずしい刺繍とレース編みで生み出される、hamada naomiのアクセサリー

—作り手

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手刺繍やレース編みの手法で作るアクセサリー。季節の草花や自然の中の情景をモチーフに日々のささやかな感動を形にしています。
穏やかに流れる時間の中で、丁寧に心を込めて紡がれる手仕事のぬくもりを、アクセサリーという形で、身近な日常にお届けしたいと思っています。

柔かな色合いと繊細な糸づかい。手のひらでじっくり眺めたくなるちいさなものたち。今回ご紹介する「hamada naomi」さんは、季節の草花や自然をモチーフにアクセサリーを制作されています。日々のささやかな感動を、刺繍やレース編みに込めていきます。

刺繍

刺繍の場合、糸を数本引き揃えて刺していくのが一般的ですが、私の作品では一本どりで刺すことが多いです。手間と時間がとても掛かってしまいますが、小さなものにできる限りの表現を込められるように、このような方法にしています。

あえて手間のかかる一本どりにこだわり、小さな面積の中に糸やビーズがぎゅっと集まる様子は、まるで手のひらに草花の豊かな野原が乗っているようです。豊かな表現を追求するため、どの作品も手間と時間を惜しまずつくられていることが感じられます。

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糸一本一本を蝋引きすることによって毛羽立ちを抑え、摩擦にも強くなり、自然な艶が出るように下処理しています。その糸を丁寧に揃えて刺していくと、飴細工のような艶や光などの質感を出すことができます。

さらに刺繍糸はそのまま使用するのではなく、蝋引きすることで艶や光沢を引き出しているそうです。見た目が美しいことはもちろん、ほころびや緩みを防ぐ効果もあります。細かな描写の一つ一つがふっくらと立体的に感じられるのは、こうしたひと手間を丁寧に施されているからなのですね。

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輪郭(境界)を描くことはその周りの空気を描くことと表裏一体なので、そのものの存在感を作り出すことになります。すっと手をのばしたくなるようなものになるように、見る方が違和感を感じずに率直に「良い」と思ってもらえるものを目指しています。
なかなか気に留められない、見えない部分かも知れませんが、少しでも怠ると雑音のように気になってしまうので、仕上げの作業として丁寧に行っています。

そして、輪郭や見過ごされがちな裏面の仕上げにも気を配ることで、優しくも凛とした印象が作品に与えられ “ 存在感 ” が生まれていきます。小さな作品だからこそ、些細な糸や見えない部分の処理が作品の印象を大きく左右します。こうした手を抜かない丁寧な手仕事から、『日々のささやかな感動を形に』という想いが隅々まで行き渡っていることを感じます。


ーものがたり

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幼い頃からものづくりのなかでも特に手芸が好きでした。お小遣いの使い道はだいたい布や毛糸、小さな人形を作ったり、マフラーを編んだり、というところから始まり、中学、高校生の頃には洋服を作ることが多くなった気がします。既製の服で気に入るものがなかったというのもあるかもしれませんが、どちらかというと作る過程そのものが好きでした。

ご自宅の隣には帽子の縫製をしていたお祖父様、お祖母様がいらっしゃったため、幼い頃から工業用ミシンや余り布に触れる環境だったそうです。自らの手で表現する喜びを経験し、私服の高校に通うことでおしゃれな同級生たちの姿からも影響を受け、美術系の大学進学を目指されました。

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美術系の予備校でデッサンや色彩を学ぶ中、出会った現代美術に強い衝撃を受けたそうです。

物事の捉え方、見え方や価値観を転換させるような現代の美術との出会いは、頭をハンマーで叩かれたような衝撃で、大学に入ってからは、そのおもしろさや魅力に引き込まれて制作していました。同時に自分自身のブレない軸を持って自分を見失わない強さのようなものがなければ、瞬く間に押しつぶされそうな感覚も常にありました。

表層的な技術を身につけるのではなく、自らの軸や価値観、どんな志を持ってものづくりに取り組むのか。その姿勢の重要さを意識するきっかけとなるご経験だったのではないでしょうか。

そして大学での学びの中で、現在のものづくりへの姿勢となる考え方に出会います。

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卒業が近づいたある時、恩師が私たちに「君たちは芸大を出たからってみんながみんな、アーティストにならなくても良いんだよ。ここで経験したことをもって“善い大人”になれば良いんだから。」と言葉を掛けてくれました。

最初は諦めの言葉かと捉えていたのですが、後になって思うと、ものづくりを続けるにおいて、確信的な言葉をくれたのだと思います。

在学中は無条件に制作に没頭できる環境がありますが、社会に出てからいかに作り続けるか。
ブレない軸を持って、善く生きるために。

『社会に出てからいかに作り続けるか。』
『ブレない軸を持って、善く生きるために。』
この、厳しくも現実的な2つのことばが、制作を続けるための大切な考え方になっているそうです。

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大学卒業後、専門学校で服作りを学んだ後に、あるブランドに就職されたhamada naomiさん。夢中で企画をし、素材や服作りについて学ぶ一方で、楽しむ気持ちがなくなってしまっていました。

自分の企画した服がコレクションでお披露目され、量産されてお店に並ぶことはとてもありがたいことのはずでしたが、自信や実感がありませんでした。ブランドの力がそうさせてくれているだけで、私の力が生んだものではないと感じていました。自分の手を動かさずに、生地屋さんや工場さんに作ってもらうのも、なんだか申し訳ない気持ちに思っていました。
働き方や時間も無鉄砲で、無計画なことをやっていて、企画を出し続けることで消耗してしまい、ものづくりを楽しめなくなってしまっていました。

速すぎる時間の流れ、体感を超えるスケールの大きさから『善く生きること』ができなくなっていたと気づいたそうです。その後、子育てによりものづくりからは一時離れますが、想いを温め続け、現在の刺繍とレース編みでの制作活動にたどり着きます。


ー想い

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刺繍の図案は最小限に留め、絵を描くように刺し進めて行きます。最初に決めすぎないことで、意識をずっと集中させることができ、作品と対話しながら、遊びや戯れのような表現が生まれるのを逃さないように、見守り育てるように刺していきます。

『作品と対話しながら、遊びや戯れのような表現が生まれる』、それは自らの意識と作品とが混ざり合い、変化しながら少しずつ完成へ向かっていく、特別な時間です。どの作品もあたたかで無邪気な印象を纏っているのは、何よりご自身が楽しんで制作されているからではないでしょうか。

一人で作れるものは小さくて、少しずつしかできないけど、今できる力を注いで「いいもの」を作りたい。それを誰か一人の人が見つけてくれて届けることができる関係を築いていければとても幸せです。

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今の日常を大事にしながら、自身の身の丈に合ったものづくりを粛々と積み重ねること。手を動かし、心にあるおぼろげで素朴なアイデアを感じ取りながら形作ること。

自らの手で温め育むことが必要であり、ものをつくる責任であると語るhamada naomiさんからは、つくることへの深い愛情と表現を怠らない強い意志が伝わってきます。丁寧な手仕事から生まれる瑞々しい輝き、手刺繍とレース編みならではのぬくもりをぜひ感じてみてください。


ー作り手情報



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