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「消費者から愛用者へ」。モノ・モノが繋ぎ伝える秋岡芳夫の思想

ー 作り手

秋岡芳夫氏2

大量消費社会が日本に到来したとき、いち早く”立ち止まったデザイナー”を名乗った秋岡芳夫。彼が「グループモノ・モノ」を結成し、本格的に活動を開始したのは1970年。

秋岡芳夫が工業デザイナーとして活動していた1960年代は、急激な工業化が進み、手仕事で作られていた生活用品が機械で作られる大量生産品に取って代わられていく時代でした。

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「消費者をやめて愛用者になろう!」
という秋岡芳夫の提唱に呼応して集まったのは、デザイナー、クラフトマン、編集者、カメラマン、商社マンなど十数人。

場所は東京・中野にあるマンションの一室。別名「104会議室」と呼ばれていたこのスペースは「デザイナーの提案活動の無駄を省くためにも、デザイナーの主催する会議室を持とう」という提案のもと、秋岡氏が1969年に開設した場所です。

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会議室はやがて交流のための場となり、毎週木曜日の晩になると、どこからともなく作り手たちが集まり、「モノ・モノサロン」と称して深夜まで活発な議論がくり広げられました。

ー ものがたり

この「モノ・モノサロン」がきっかけとなり、モノ作りに関連するさまざまな先進的な試みが日本各地で行われました。その成果は『秋岡芳夫とグループモノ・モノの10年』(玉川大学出版部)や『DOMA 秋岡芳夫 モノへの思想と関係のデザイン』(美術出版社)など書籍化されているので、その一部をご紹介します。

今日のクラフト展

「今日のクラフト展」| 1971年
昔ながらの生活道具を現代的に使いこなす、スタイリング提案を展覧会方式で行う。職人が販売に立ち会う「展示即売会」は、いまではめずらしくないが、じつはグループモノ・モノが百貨店に先んじてはじめた販売手法。新聞でも大きくとりあげられ、グループモノ・モノの名前が全国的に知られるようになった。

1100人通信

「1100人の会」| 1975年
「作り手100人と使い手1000人。顔見知りの関係で “ 誂え(あつらえ)ごっこ ” をやろう」とはじまった実験的コミュニティ。2013年に休会するまで、38年もの間、作り手と使い手の密接な交流は続いた。具体的な活動としては、1月の新年会と6月の総会にくわえ、10月に地方の産地や工房を見学する「創会」が毎年開催された。

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「一人一芸の村構想」 | 1978年
生活者が生産に参加できる“コミュニティ生産方式”の復権を実現すべく、職人養成塾の開設、木の学校給食器の導入など、先進的な取り組みがなされた。拠点となった岩手県・洋野町や北海道・置戸町は、地域ブランドの先駆けとして1980年代に注目を集めた。


ー 想い

戦後クラフト運動の拠点となった歴史的な場所を再生し、ふたたび活気あふれる場所にしたい――。そんな思いから、モノ・モノは2015年に社長交代を行い、リニューアルオープンしました。

従来のモノ・モノが果たしてきた役割は2つあります。ひとつは「異世代・異分野の作り手が集まり、とことん意見を交わすサロン」としての機能。

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もうひとつは「もの作りを通じた社会的活動の拠点」としての機能です。これらのよき伝統は踏襲しながら、新生モノ・モノでは以下の3つのプロジェクトを進めています。

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(1)秋岡芳夫の理念を伝えるメディア活動
モノ・モノ創設者の秋岡芳夫は、暮らしやデザイン、木工に関する多数の著作を残しています。しかしながら、そのどれも絶版となり、入手困難となっています。当社では出版社や著作権継承者の許可のもと、書籍の一部抜粋し、ウェブサイトで定期的に公開しています。一定層の読者が見込める著作は復刊、もしくは選集や電子書籍として閲覧できるように出版社に働きかけています。

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(2)秋岡芳夫の理念を伝える木育活動

日本は世界有数の森林大国でありながら、木材の自給率が30%台にとどまり、大きな課題となっています。とくに戦後、全国的に植林された杉は伐採の適齢期を迎え、その活用がいま求められています。そこでモノ・モノでは、秋岡芳夫がKAKデザイングループ在籍時に仲間とデザインした杉のDIY家具を書籍やキット版として復刻。林業や木工関係者と連携しながら、工作の楽しさ、身近な杉の魅力を伝えるワークショップを行っています。

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(3)昭和期の名作クラフトの復刻・アーカイブ

インテリアや工業製品の世界では、ミッドセンチュリーとよばれる1940年代から60年代にかけて、多くの名作デザインが生まれています。日本のクラフト界も同様で、デザイナーの感性をあわせ持つ優秀なクラフトマンたちが、産地との深い関わりの中で、秀逸なモダンデザインを残しています。新生モノ・モノでは、こうした昭和期の名作クラフトを後世に残し、再販売する仕組み作りに取り組んでいます。

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ー 作り手情報

モノ・モノ





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