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自己紹介・雨の粥の11篇の詩集

自己紹介


皆様、はじめまして。
雨の粥と申します。

「雨の粥」読みは「あめのかゆ」で、これはたぶん、雨にさらされてふやけたお粥のこと……というのはウソ。
ちなみにアクセントの位置は「か」で、「雨の・粥」で名字・名前です。

関西在住。福祉関係のお仕事をしています。洗礼名はマリア。
主にnoteでは詩とエッセイ的なものを書いています。

最近は小説を書くことを再開しました。
賞に応募する長編エンタメ小説を執筆中です。

長らく詩を書いているけれど、雑誌に載ったことは数えれる程しかありません。
(あっ!あそこに載りました。ほら、カプチーノ公国?)

現在は同人誌などに参加していません。
何かしらお誘いや依頼等ありましたら、コメントやTwitterでどうぞ。

皆様、どうぞよしなに。




雨の粥の11篇の詩集

ピスタチオの殻

ピスタチオの殻を指で集めている
わたしの横に漠然とした紫色が浮かんでいる
友だちがみんな帰ったら
メガネをテーブルに置いて
手のひらよりも大きな葉のうらをそっとなぞった




声にならない

声にならない叫びを宿した
聖なる筆箱
部屋の隅で泣いている丸い影の
あなたを見かけては背中をさすったの
ふいの尿意のようにちりちりと燃える
交差点の真ん中
まるで漂う花園のよう




青睡蓮の絵

水泳教室に飾ってあった青睡蓮の絵の中で
砂まじりの陽光に目を細めている
あなたともう一度話すべきだったろうかと
通り過ぎていくパレードの
華やかな象たちをながめながら
手のひらのマグカップを弄んでいる




雨の匂いがする駅

雨の匂いがする駅で
あなたたちを待っていたと思う
エスカレーターのそばには私の抜け殻が置いてあって
風にあおられていた
どこか広場ばかりで道路のない
細長い街のなか
どこにもたどり着いてしまわぬよう
私は歩き続けた




エーデルワイス

真夜中に目を覚まして
窓の外、向こう岸のこどもが
歌詞も節もめちゃくちゃなエーデルワイスを歌っているけれど
あなたにはそれと分かる
きっと時差ぼけを直そうとしている
どうして、と考える間もなく
夜空であるはずの空は真昼のように明るい
起きてしまったなら
きちんと閉まらない戸棚を直そうかとあなたと話をした




髪を浸す夢

あなたにとって堕落とはなにか
人気のないテーブルでそういう話をした
あなたの云うどうしようもなさとは
傘を差して人と別れることであるか
ハンカチが眩しかった
手を洗ってから幾重にも扉を閉じる
青い光の中で布団の上に寝ている
髪が濡れている




ここから幾億光年

ここから幾億光年
遥かな河に捧げられたの祈りが
境界の曖昧な土曜日の午後
屋内プールの底で響いている
幼いあなたが流す涙で
世界が傾いでいる
ここから幾億光年
涙に飲まれたあなたの祈りは
遥かな河に届いただろうか




蝶の羽

真夜中に眠る蝶の羽を眺め
孤独な少女が秘め事のように
窓枠に滴る銀河の雫を舐めている
夜毎、夢うつつの頬に浮かぶ宇宙の痣が
愛おしいのだと、密やかに笑う




歪な愛(扉)

少女の部屋に歪な戸棚があった
それがとても美しい輪郭をしていることを少女は
五月の訪問者からの伝言で知った
扉の奥には埃を被った試験管が並んで
枯れた草花や蝶の羽を差して遊んだ
時には抜けた歯も床に落ちた髪も
指も、それから目も舌も耳も




鏡(その胸の中で)

汚れた鏡に映る
その胸の中で眠る墓標には
あなた自身の名が刻まれているの
なぜ、と思う間もなく
私の中のあなたが透けていくのが分かる
分からない、分かりたくもないものは
あなたが隣に映らない理由(わけ)
さっきから口もきいてくれない鏡に
私は唇を近づける




水潦

もう何年も前のある日のこと
曇り空の下で
水潦に映った私が祈っているのを見て
私は水潦に映っていた方の私になった
彼女と入れ替わったのだ
容姿も内面もすっかりそのまま
そうして私はあなたを愛する
あなたには私が私にはあなたがまぎれもない
ひとつの神秘だから
心細い少女と寄る辺ない少年であった季節に
神様のぬくもりがほしい幼い季節の幻に
あなたの私はあなたの雪だった

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