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捉えどころのない森『約束はできない』その2

捉えどころのない森

捉えどころのない森がある
それは雨傘のゆううつを感じさせる午睡の夢

窓の外の天気に気分を左右されてはいないだろうか
曇り空から天使が降りてくる瞬間に賭けていると言ってもいい
天空は歩行者たちの願掛け井戸だ
だが投げられたコインが落ちてくることはない
それらは世界を見守る星たちの卵なのだから
そして夢で見るその森の光景だけが、そのことを証明する鍵であるように思われる
木々の間から見上げる星空に人々の願いは息づいている

長い電話の暇つぶしに描く絵が示しているように、森は決まった形をもたない
長い年月の中で姿を変える森は訪れる度に初めて見るかのような印象を与える
後で思い返してやっと、それらがすべて同じ森であったことに気づくのだ

雨の日の午睡は、ありもしない城の存在を信じさせずにはいられない
夢の中の歩行者たちは、城の姿を求めて森の中を散策したものだった
あれは何かの見間違いだったのだと言う者もあれば、城の存在を信じ続ける者もある
どちらも城に魅入られた者であるという点で変わりはない
いつか城にたどり着く日を望んでいるのだ

突然の雨の中喫茶店に駆け込む歩行者たち
喫茶店のテラスの椅子に誰かが置き忘れた絵葉書はその森を思わせる
だが誰もその場所を記憶にとどめていない
忘れられた森の記憶には扉がない
置き去りにされた雨だけがその姿をとどめる




これを書いた当時、私はいろんな意味で、悩める学生ちゃんでした。

わりとこの時期、創作に新しい風を呼び込もうとして、何でもかんでも書いてましたね🍀

今見ると現代詩的な部分と、間口の広いポエム成分多めの部分と、小説のプロット的な部分という感じで現在の私のいろんな要素が混在してる気がします。

まだ未分化だったのですね。


森というのは私にとって、結構鍵となる要素でして。

なかなか尻尾をつかませない逃げる森をなんとか捕捉してやろうと思って書き始めました🌳

重ね塗りのように描写を積み重ねることで、自分でも自覚しきれていない水深まで潜っていきたい、という思いが十代の頃からありました。

私って結構、自分の本心を自覚できない傾向が強いのですよ💦

そういう部分って、誰しもがいくらか持ち合わせているんだと思ってます。

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