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【マーケ基礎】商売人の最後。

私は1枚の折り込みチラシに心が熱くなり、
泣いてしまいそうになりました。

ある婦人服専門店の「閉店のお知らせ」です。

高齢の店主が、一生懸命に考えたであろう文章は、
辿々しくも、「お客さまへの感謝」と「満足感」が、
とてもよく伝わってきました。

これをあなたにも読んでいただきたいと思います。


ここから▼(原文のまま)

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◎カナリヤがお店をやめます!
 売りつくします      (キャッチフレーズ)


閉店のご挨拶

長らく皆様からご愛顧を頂いて来ました
婦人服専門の「カナリヤ洋装店」が
創業五十八年の店を歳に勝てず閉める事になりました。

顧みますと昭和三十六年五歳の長男を連れて
縁故もない御坊の地に開業
八十四歳になる迄商いをさせて頂き
其の間お客様から励ましを頂いたお蔭様で
大儲けも大損もする事なく店を閉じる事を喜んでいます。

常にお客様を神様と思い
私共と一心同体になって縫製を手伝ってくれた
沢山の方々や御近所の皆様の暖かいご交誼と
取引メーカーの協力のお蔭と
大変喜ばしく感謝の気持ちで一杯です。

長い間本当に有難うございました。

今後の事は迷っておりますが自分の健康を考えて
第二の人生に進みたいと思っております

何卒今後共よろしくご鞭撻を賜ります様お願い致します。

皆様方の御多幸を心からお祈り申し上げます。
取り敢えず御礼の御挨拶とさせて頂きます。


            御坊市本町一丁目

            婦人服専門のカナリヤ洋装店

                     上山種次
                       初枝

◎新しい素敵な冬物・春物も入荷しています
 今暫く御礼のつもりで商いを致しております
 普段着風のパンツ・スーツ
 気軽に着られるジャケット
 お目出度に着るアンサンプル
 スーツ・ワンピース・ブラウス良い品を
 今ならこそお安く買って頂きます。

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ここまで▲


58年という長い歳月をがんばってこられた
店主の人柄が伺えます。

「大儲けも大損もする事なく」

この言葉の意味するところが、わかりますでしょうか。

人は、大儲けしたいし、大損はしたくないものです。

しかし、この店主は、
婦人服販売という商売を
淡々と穏やかに営んできたのです。

大儲けしたいと思ったこともあるかもしれません。
赤字が続いたこともあるかもしれません。

そんな苦労を乗り越え、
58年、営業を続けてきたのです。

人は、ひとつのことを信じて続けていけることが、
一番幸せなことだと思います。

やり遂げた満足感。
それを支えてくれたお客さまへの感謝。

あなたは、商売をやめる時、
こんな「ご挨拶」ができますか?

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