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トップセールスマンは寡黙である。

私は、ある業界のトップセールスマン数人を密着取材したことがある。彼らがトップであり続ける秘密を探るための情報誌の企画である。1日中張りついて、彼らの行動・言動・思考を観察した。

それぞれが、セールスの方法論としては独自のスタイルを持っているが、全員に共通するものを見つけることができた。私が思い描いていたセールスマンのイメージとは、真逆だと言っても良いほどの衝撃であった。

話術に長け、相手を引き込むようなマシンガントークを炸裂させるのかと思っていたが、まったく違っていた。どちらかと言うと、「寡黙」と言っても良いくらい、静かに喋る。

本題に入る前には、面白い世間話のネタを用意しているのかと思いきや、サラッと流す程度にしか、喋らない。

本題に入っても、ベラベラ喋るわけではなく、少し喋っては、聞く方に集中しているようだった。上手く相手の要望を聞き出し、それに対しこちらの提案を持ち出す、といった具合である。

とにかく質問が多い。相手から、より多くの情報を引き出そうとする。その情報をまとめながら、最終的に相手が望むものを確認しているようである。

時間を掛けて聞き出した要望なので、相手が本当に望むものを提案できる。もし、マシンガントークで一方的に売り込んでいたら、相手の望みとは違うものになり、ソッポを向かれてしまう。

売り込みに成功したとしても、トークに圧倒されて、仕方なく契約したのかもしれない。そうなると、相手は満足できない。次回以降は、話さえ聞いてもらえなくなる。これは、本当のセールスではない。

トップセールスマンは、絶対に売り込まない。相手の望みを知るために、時間を掛けて聞き出すことに徹している。例え、相手が欲しいと言った商品であっても、それが本当に必要なものかどうかを見極め、「それは不要です」「こちらの方が…」と、正しい選択を提案するものである。

私が出逢ったトップセールスマンたちは、みんな聞き上手だった。相手に話をさせ、頷きながら聞いている。これこそが、セールスの極意。

これは、仕事に限らず、コミュニケーションの必要な場で活かせる、高等テクニックなのではないだろうか。

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