見出し画像

楽食探訪:やっと買う勇気が持てた! 小さな憧れ、磯じまん「山海ぶし」。

私のように古い人間なら、憶えているだろう。

♪いろはの いの字の 磯じまん
 とれとれ 生のり 味じまん
 うめに かつおの 山海ぶし
 まぁるい しいたけ ふくませ煮〜
 磯じまんよ〜♪

私はこの歌を間違って憶えていた。

「とれとれ 生のり」のところを
「味つけ 生のり」と唄っていた。

どうして、こんな風に憶えていたのか。

これは、私のクセだ。

わからない歌詞は、自分勝手に補ってしまい、
それをそのまま憶えて、数十年経ってしまっていた。

これは、まだ意味が通じるのでマシな方だ。

まったく意味をなさない言葉を入れて、
唄っている場合がある。

そんな話はどうでも良い。

これらの商品をすべて食べたことのある人は、
どれほどいるのだろうか。

磯じまんは誰もが知っていて、
冷蔵庫に入っていたお宅は多いと思う。

私もよく食べていた。

でも、「生のり」はどうだ?
「山海ぶし」は?
「まるしいたけ」は?

食べたことのない人は多いに違いない。

私もそのひとり。

「磯じまん」は、会社名やシリーズの名前でもあるので、
これは定番品として馴染みがある。

あとの3つは、
その存在さえ忘れられているのではないか。

私は歌を憶えていて、いまだに唄ってしまうので、
軽く愛着がある。

中でも「山海ぶし」は、
1年に一度は思い出すほどの存在だ。

その程度か? と思われるかもしれないが、
食べたこともない商品を年に一度も思い出すのは、
何とも不思議なことではないか。

しかも、「生のり」でも「まるしいたけ」でもなく、
「山海ぶし」。

私自身もよくわかっていない。

歌を唄った時に、
力を入れるフレーズだからなのかもしれない。

うめに かつおの 山海ぶし!!

とにかく、この商品だけは、長年食べたいと思っていた。

時々思い出しては、スーパーの棚を見るけれど、
買うことをためらってしまう。

小さなビンなのに、高い。

300円はする。

ご飯にのせるだけの、言わばフリカケのような存在に、
300円は躊躇する。

旅先のお土産としてなら、すぐに買うだろう。

なのに、日常の食べ物として考えると、
高いと思ってしまう。

貧乏性は、いつまで経っても直らない。

しかし、もう待てない。

私の人生も残り少なくなってきたので、
いま買ってしまわないと、後悔するかもしれない。

と思ったものの、冷静に考えれば、
人生を考えるほどのことでもない。

でも、でも。

少しでも気になることは、解答を得たい。

どんな味なのかを知りたい。
ちょっと勇気を出せば、体験できる。

やっとの思いで決意して、少しでも安く買えるように、
ディスカウントストアへ。

見つけた!
238円。

これは、安いじゃないか。
買えるじゃないか。
良かった、良かった。

数十年間の思いを果たす時がやって来た。

早速、ご飯を炊いて、山海ぶしをご飯の上に。

パクッ! といこうとしたけど、熱くてハフハフ。

冷めるのを待って、味わう。

やはり、と言っても
想像の世界で思っていた通りの味で、旨い。

梅漬けをたたき、かつお節をまぜ込んだ味。

歌のまんま。

食べたことのある味だけど、微妙に違う。

高級料亭の板前が、
ひと手間、ふた手間掛けているような味だ。

家で作っても同じようなものはできるだろうが、
明らかに山海ぶしには高級感がある。

貧乏人だから、高そうなビンに入っているだけで、
美味しいと感じているのかも。

いや、そうではない。
出汁のような深い味わいがそこにある。

これが、「似て非なるもの」なのではないだろうか。

とても旨い。
炊き立ての白いご飯が合う。

これがあれば、おかずはいらない。

こんなに旨いものだったのか。

買った自分を褒めてやる。

数十年間の小さな憧れをやっと実現させることができた。

こうなると、残りの「生のり」と「まるしいたけ」が
気になってきた。

この2つは、まだ健在なのだろうか。

ご存命なら、ぜひ味わってみたい。

よろしければサポートをお願いします!頂いたサポートは、取材活動に使わせていただきます。