「オッペンハイマー」クリストファー・ノーラン
はじめに
どうもIGです。
とある日曜日の昼下がり、映画レビューを書き始めようと思い始めました。
なぜかと言うと、たくさんの映画を見ているのに、なかなかアウトプットをする機会がないなと感じたからです。
とはいえ、日記も続かない私は、気合を入れて書きすぎると三日坊主で続かないので、気軽な気持ちで書いていきます。
ちなみに、なるべくネタバレなしで書いていきます。
ネタバレしそうになったら、警告入れます。
さて、記念すべき第1弾は本年度のアカデミー賞受賞作、クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」です。
どんな映画か(ネタバレなし)
「オッペンハイマー」は、日本人であれば様々な感情を持つであろう原爆の父オッペンハイマーを描いた伝記映画です。
監督は、インターステラーやインセプションなど手がけた作品を挙げればキリがない巨匠クリストファー・ノーランです。
クリストファー・ノーラン監督といえば、難解!というイメージの方も多いと思います。
(「テネット」には苦しめられました・・笑)
本作は、日本では2024年3月に公開されましたが、公開前にアカデミー賞作品賞を受賞しており(僕の好きなランティモス監督の「哀れなるものたち」は受賞を逃しました涙)映画ファンとしては期待の1本でした。
映画の感想(ネタバレあり)
本作は、カラーで描かれるオッペンハイマーの聴聞会と、白黒で描かれるオッペンハイマーの宿敵ストローズの公聴会を対比させながら、過去を遡る形でオッペンハイマーが原爆を完成させるまでを描いた伝記映画です。
オッペンハイマーがケンブリッジで心理的に病みながら研究を続けていた若き日から、アメリカに移り人気の研究者となり、世界大戦下で国家のマンハッタン計画に参加して原爆を作ります。
しかし、その過程での共産主義的な活動の疑いから公職追放され、最後には一転功労者として表彰を受けるようになるという一人の男の生涯です。(ざっくり)
この映画で私が一番感じたことは、「歴史を目撃している」という感覚です。
時間軸が多少入れ替わることはありますが、基本的にはオッペンハイマーの生涯をなぞって映画が進行していくため、クリストファー・ノーラン監督ならではの難解さもあまり無く見やすいです。
(ただし、登場人物は多く、分かってる前提で進んでいく感もあるので予習した方が楽しめます)
そして、その生涯が丁寧に描かれるだけでなく、一人の優秀な科学者が国家の思惑に巻き込まれ、人類とその後の科学の運命を変える巨大プロジェクトを推し進めていく、その栄光と苦しみを巧みに描いているので、偉人でも天才でもなく同じ人間としてのオッペンハイマーを痛いほどに感じるのです。
また、原爆が実際に完成するシーンは、その後の歴史を知っている人間からしても息を呑むほどの描写になっていて、大スクリーンで見ていると「ああ、今まさに歴史が進行している」という感覚をダイナミックに味わうことができます。
映画というのは様々な役割があると思います。
あるときは娯楽として、あるときは逃避先として、あるときは人生の教科書として。
そして、その1つの役割として、「歴史を記録する」というものがあると思います。
もちろん脚色やフェイクなど混じっているところもありますが、過去の歴史的事実をエンタメに昇華させ大衆に届ける、それができるのも映画の1つの大きな力です。
そんな映画の持つパワーを存分に感じさせてくれる「オッペンハイマー」。
クリストファー・ノーラン監督ありがとう、という気持ちになります笑
そして、最後にもう1つ付け加えるとすれば、人間が何かを成したとき、それが良いものであれ悪いものであれ、その評価を下すのは(時にあまりに自分勝手な)他人であるということです。
ラストシーンで、オッペンハイマーがアインシュタイン(アインシュタインは原爆を作るマンハッタン計画には不参加)と会話した際に、アインシュタインが次のようなことを言います。
「(オッペンハイマーが)自分の仕事と向き合った時に、人々から評価される(公職追放から許される)ようになるだろう。
しかし、それは(オッペンハイマーのためではなく、オッペンハイマーを公職追放した)人々が許されるためのものだ」(だいたい)
つまり、オッペンハイマーが原爆を作ったという事実に対して、それを評価するのも、その後に水爆開発に参加しなくなったことで公職追放するのも、一転その後に偉大な科学者として評されたことも、全てオッペンハイマーの意志に関わらず、他人(世間)が付けた評価に過ぎないということです。
それを、「良い」でも「悪い」でもなく、「オッペンハイマーという人間」100%で描いたクリストファー・ノーラン監督、アメリカ人としてその中立的(というよりメタ的か)な視点を持って描くことは簡単ではなかったかもしれませんが、その部分がこの映画の味わい深いところだと感じます。
ちなみに、クリストファー・ノーラン監督はご自身の子どもが原爆についての理解が薄れていることがこの映画を作るきっかけになったらしいです。
映画の歴史を記録するという側面を最大限に活かして、オッペンハイマーその人を描き切った、アカデミー賞受賞、そして後世に残っていく名作です。