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「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」グレッグ・バーランティ

どんな映画か(ネタバレなし)

「アポロ11号は、本当に月に行ったのか」
世界の歴史的な出来事には、あらゆる陰謀論がつきものだが、その中の大きなものの1つがアメリカの月面着陸の映像に関するものだろう。
1969年7月20日、ニール・アームストロング氏と、バズ・オルドリン氏、マイケル・コリンズ氏の3名を乗せた宇宙船アポロ11号は、世界で最初に月面に着陸した。
しかし、その当時から現在に至るまで、あれはスタジオで撮影された映像なのではないかという陰謀論が噂されている。

そして、今回そのような陰謀論までもひっくるめて題材にした映画が本作である。
そのようなデリケートなテーマでありながら、NASAが全面協力したということで、本格的な映像に仕上がっている。

ストーリーの一部としては、陰謀論にまつわるような話もあるものの、あくまで宇宙を目指す人々の心熱くなるヒューマンストーリーだ。

映画の感想(ネタバレあり)

ストーリーの中心は、米ソが宇宙開発競争を繰り広げる時代、チャニング・テイタム演じる真面目一辺倒な宇宙飛行士が予算などの制約がありながら月を目指す物語と、スカーレット・ヨハンソン演じる嘘が大得意なPR戦略担当がNASAの宇宙プロジェクトを話題にするために奮闘する物語という2つの物語がリンクして進んでいく。

日本にもスカーレット・ヨハンソンのファンは多いと思うが、私も「ジョジョ・ラビット」などでのスカーレット・ヨハンソンの演技はすごく好きなので、本作のキャラにもすごく魅了された。
本当に当時モデルとなるような人がいたのかは定かではないが、映画映えする大胆な嘘をつきながらも、その演技力によって本当にこの人物が実在したのではないかと思わせてくれる

そして、何より本作はそのストーリー構成が素晴らしい
映画のラスト、アポロ11号が月に向かって飛ぶのだが、その裏でアメリカ政府の高官の命令で、月面着陸の擬似映像を撮影する
万が一、アポロ11号にトラブルがあった際に、アメリカの威信を守るためにスタジオに「完全なる月面」を作り上げ同時に撮影することで、そちらの映像を流すという狙いである。
そのどちらの映像をTV中継で月面着陸を見守る人々に流すか主人公たちが奔走するという場面なのだが、そこに向かって全てのキャラクター、物語が集約されていく

アポロ11号を打ち上げる裏側には宇宙を目指したNASAのスタッフたちの熱い想いがあり、擬似映像撮影の裏側には宇宙開発競争でソ連に絶対に負けられないアメリカ政府の思惑があり、本物の映像と擬似映像のどちらを流すかには主人公たちの自分の価値観と人生を賭けた大活躍があり、そして伏線回収するが如くかわいい黒猫ちゃんも登場する。
(黒猫ちゃんの活躍は、ぜひ作品を見て確かめてほしい)

随所で登場するかわいい黒猫ちゃん

全てがラストに綺麗に集約される分かりやすい物語と、NASAが全面協力した忠実に再現されたセット、人気俳優演じる魅力あるキャラクターとその人間ドラマ。
その全てが1本の映画として詰め込まれており、完成度が高い美しくかつ面白い
本作は、間違いなく今年を代表する1本だ。

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