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Chapter6


 年上の女性に惹かれることが多かった。
 それは、性の初体験が年上の先輩だったことが原因なのかもしれない。
 緊張と羞恥心で動揺する心を必死で抑えているボクと対比するように先輩は落ち着いていた。これから何が始まるのかを知っていて、どんな結末を迎えるのかも知っている。まるで計画犯罪を一緒に実行するかのような緊張感が漂っていた。

 人間は欲望にまみれている。
 皆、そのことを隠したがることが不思議でならなかった。
 お腹が空くことに誰も不思議がることはなく、同様に眠くなることにも疑問を持たない。
 しかし、性欲だけがタブー視され、理解できないと煙たがられる。
 人間は決して純潔な生き物ではなく、結局のところ動物である。
 欲望がむき出しになり、肉体を重ねることにより、子孫を繁栄する。
 子を宿し、出産することは感動的だとされるのはどうしてだろうか。
 両親が愛しあい、体を交えて初めて命が生まれる。
 母は激痛に耐え、子は血の混ざった粘膜を体中につけて、この世に生み落とされる。
 このどうしようもなく生々しい現実こそを神秘というのだというのではないのだろうか。
 人が現れる時こそが、神秘的なのだ。

 藤野ハルは、ボクよりも8歳年上の女性だった。
 彼女はボクの会社の先輩で、営業部の孤高の存在。
 薄化粧から覗くプライドがありながらも、とても愛嬌があり、年配男性の心を掴むことが上手く、彼女が会社にもたらした貢献度は計り知れない。

 彼女は自分が女性に生まれたことを深く理解しているように見えた。
 

2時間3分・643文字

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