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『伊賀牛の現実』についてです。

1.生産(肥育)体制

生産者数は、伊賀産肉牛生産振興協議会の会員30戸で約2,400頭の牛が飼育されています。
飼養頭数 2,400 頭のうち、約50%が個人飼育、残り50%が農協預託です。
生産者の年齢は、農家の高齢化、後継者問題が大きく、若い担い手による『伊賀牛青年部会』を結成するなどして、今後の伊賀牛の更なる品質向上を目指した活動を行なっています。

また、通常は月齢約9ヶ月前後まで飼養された素牛(もとうし)を市場で買い付け、その素牛を肥育するのが一般的でした。
しかしその場合、素牛の価格変動に左右され、経営に影響を及ぼす側面があり、併せて肥育頭数の維持も難しくなってしまいます。
これらの問題を解決するため、直近では次のような『地域完結の取り組み』が始まっています。

・地域内で黒毛和牛を繁殖することで、肥育頭数を維持・向上させる
・その素牛を月齢約3ヶ月まで飼養した後、肥育農家に販売することで
 イニシャルコストを抑え、経営面での影響を最小化する

2.流通と販売

伊賀牛の出荷頭数は年間約1,300頭で、その約80%が伊賀管内の『伊賀産肉牛生産振興協議会』認定の18店舗の精肉店にて販売され、地元伊賀市、名張市の精肉店および家畜商への生体取引でのみ流通しています。

※生体取引とは・・・
・肉用家畜を生きた状態で取引すること
・一般的には、屠畜されたあとの枝肉を流通・販売させるが、伊賀牛は
 屠畜前(生体)で売買が行われ、その後屠畜され流通する

生後 30 カ月齢以上で、生体重700kgで取引の対象となり、生体取引は、生産者・購買者の情報や要望が直接交換できる場ともなっています。
肥育牛の生体取引は全国でも非常に珍しく、「伊賀牛」の大きな特長でもあります。

伊賀牛の流通量の内約15%は、伊賀地域以外または県外の卸・精肉店へ出荷されており、この場合は通常の枝肉取引で行われています
残りの約10%は、生体セリ販売で取引されています。

3.「伊賀牛」ブランドとしての課題

高齢化・後継者不足が大きな課題となっており、会員農家戸数は、現在 30 戸であり、約10年で4戸が減少。
主に、小規模農家の廃業が要因ですが、立地条件の問題あるいは水田との複合経営存続の可能性が乏しく、農業そのものを廃業する農家も今後も発生する可能性があり、飼養頭数の維持も大きな問題となっています。

一方、伊賀地域は、古くから牛肉消費量が多く、牛肉文化が育っていたところで、精肉専門店も数多く存在していました。
しかし、こうした専門店も大型量販店との競争あるいは利便性から年々減少する傾向にあり、ブランド牛肉としての販売力も弱体化してきてしまっています。

伊賀牛の流通の特徴は、その多くが生体取引で行われている点で、生体販売は枝肉販売とは異なり、肉質が直接確認できない反面、個体差による価格変動が少ない点です。
また生産者は肉質にこだわって、必要以上にコストをかけたり、過度な肥育管理を必要としないてんもメリットの一つです。

無理のない売買可能な取引価格で値決めができる一方で、そのことが肉質の向上あるいは経営管理の習熟といった経営努力が希薄になりかねない、というリスクが内在しているのも事実です。

今後とも、牛肉販売のブランド化を推進し、ブランドメリットを追求するためには、ブランド牛肉販売チャネルである我々精肉店が、伊賀牛の普及に努力する必要があります

伊賀牛の販売先は主に地場販売ですが、地元に限らず、牛肉消費拡大を勧めていくことで、『伊賀牛』を『知って』頂き、『味わって』頂き、普及させていきたい、と考えています。


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