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【医療関係者向け】武漢最前線のドクター(7) 楊萌さん(中編):現場でみえてきたのはー「間近でじっくり観察すること」

前編はこちら

楊萌医師インタビュー続き。

――武漢で診察の初日はとても辛かったですが、2日目は自分の調子を整えることができ、気持ちは楽になりました。防護服を着用しても、私は普段通りの臨床医であるよう努めました。

バイタル、フィジカルなどルーチンの大切さ

ベッドサイドで、バイタルをよく観察し、病歴を尋ね、フィジカルなどを丁寧に行い、冷静に臨床的観察を行うことは、どれほど大切かは言うまでもありません

低容量、脱水から循環血液量減少性ショックを起こした患者に気づくことができるかもしれない。それなら液体補充で血圧を是正することで、盲目的な血管作動薬の使用を回避できるわけです。

またどのような患者が高血圧症、心臓病の既往があるかを事前に考えることも大切です。後に心不全が現れる可能性や、合理的に輸液や尿量をコントロールすることができます。

臨床で観察すること――、例えば患者の下肢や身体の低い部位の浮腫(右心不全の症状)があるかどうかをみます。患者との会話も大切です。患者が話したあとの呼吸の状態から、呼吸困難の症状の有無を、観察から読み取れるのです。これらの細部の「気づき」は病状の判断及び治療効果の判断に非常に役立ちます

重症患者の「間近での観察」は、常時モニタリングの各種パラメータ及び生化学検査も含まれます重症から重篤へと進展する可能性があるかどうかを観察します。新型コロナウイルスによる肺炎は、人体の免疫細胞を活性化させ、免疫細胞がウイルスを除去しようとしますが、過度の免疫反応を引き起こす可能性があり、いわゆる「炎症性の嵐(サイトカインストーム)」です。これは正常組織の過度の損傷をもたらし、深刻な場合は多臓器不全を招きます。我々はこうした患者をできるだけ早く判断して、人工呼吸器や高度な生命維持治療につなぐ先手を打つのです。それによって、致死率を下げる可能性があるからです。

私の仕事の中で非常に重要なことの一つは、重症患者の異常の有無を観察し、識別することです。重症患者の生化学検査では、私はみんなに「炎症性因子」によく関心を持つようアドバイスしています。例えばIL-6、IL-2、フェリチン、CRPなどのファクターです。また凝固・線溶系では、例えばD-ダイマー、フィブリノゲンおよび血液検査におけるリンパ球の絶対数(ALC)、心臓の指標ではNT-proBNP、トロポニン、ミオグロビンに注意し、これらはすべて心臓の損傷レベルを反映している可能性があります

重症患者に対しては毎日きちんと医療記録を確認し、主にバイタル、摂取量と排出量(食事の摂取状況を含みむ)、呼吸器・集中治療医学科の医師は患者の呼吸数、呼吸運動のパターン、酸素療法の条件、血液酸素化の指標(PaO2/FiO2)などにも注意すべきです。少しでも異常があれば、原発性疾患が悪化したか、または合併症あるいは併発症が起こる状況が存在するかどうかを考えなければなりません。

例えば、ウイルス性肺炎に細菌/真菌の感染が併発してるか、心不全、敗血症による多臓器不全などです。特に重症患者の病状は10-14日の間に変動する可能性があり、これらはすべて毎日患者のベッドサイドで密接に観察しなければならず、油断できません。

(本日ここまで。後編につづく

【一般の方へ】
体調が悪いときは、外出を控え、学校や会社に連絡して(これほど日本で休みを取りやすいチャンスはありません)、自分でも医療が必要と考えられる場合、近くの医療機関の相談窓口に連絡をしてみてください。


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