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『サバカン SABAKAN』友情と決心と、、、 vol.473

まさにセレンディピティ。

たまたま見た映画でしたが、大当たりでした。

非常に面白い内容、そして心温まる映画でした。

今、上映中の映画『サバカン SABAKAN』です。

1986年、夏。斉藤由貴とキン肉マン消しゴムが大好きな小学5年生の久田は、夫婦ゲンカばかりだが愛情深い両親や弟と暮らしている。ある日彼は、家が貧しく同級生から避けられている竹本と、イルカを見るため海へ出かける。溺れそうになったり不良に絡まれたりと様々なトラブルに遭遇しながらも友情を育んでいく久田と竹本だったが、やがて別れを予感させる悲しい事件が起こる。

https://eiga.com/movie/96302/

友達はどこから友達か

この映画では「友達」が一つのテーマになります。

友情かもしれません。

貧乏で周りからも揶揄われる竹本は夏休みの間に久田と長く一緒に遊びましたが、友達だという確信が持てないでいました。

これまで友達らしい友達を作れなかった竹本は久田が友達だと思っていなかったら申し訳ないという気持ちを抱いてしまうのです。

その言葉を竹本のお母さんからふと聞いた久田は、悲しみと怒りを覚えます。

自分は友達だと確信していたのに、竹本はそこに不安を感じていたのか。

自分と竹本の中はその程度だったのか。

そういうことでしょう。

しかし、竹本にはこれまで友達がいませんでした。

友達と認識してきた数が違うために、その判断を自信をもって言えなかったのでしょう。

そう考えると、人との関係もこれと同じなのかもしれません。

誰とどれくらい関わってきたかによって、他の誰かとの関係を決める基準が決定するのでしょう。

ともなると、相手と全く同じ気持ちで全く同じ感情でお互いに思うなどというのは難しいこと。

少しずつ擦りあっていくものなのです。

過去と決心

この物語、あくまでも回想式で幼い頃を思い出しながら物語が進行していきます。

主人公の久田が大人になり、さえない作家として小説を書きながらもなんとか文学を書きたいと決心しては諦め、決心しては諦めといったところで話が始まっていくのです。

この決心に毎回辿り着かせてくれるのが、過去の思い出の片鱗であるサバ缶。

何度諦めていたとしても、このサバ缶を見て再度チャレンジしようと思えていたのでした。

もともと久田は諦めの早い子。

回想の中でも何度か諦めてしまう場面がありました。

しかし、その中でも竹本に触発されて、自分でもできると決心して前に進んでいたのです。

そして、今回はそれがうまく回り始めた瞬間だったのでしょう。

おそらく離婚をしてしまって離れ離れに住んでいる奥さんと子どもにも、意を決して、馴染みの長崎へと一緒に行かないかと誘うことができています。

たった一つのサバ缶ですが、そのサバ缶に大きな意味があったのです。

少しのプライドと

それだけ仲の良かった竹本と久田ですが、離れ離れになってから30年近く会っていませんでした。

会おうと思えばいつでも会える時代。

おそらく、久田の中の小さなプライドが邪魔をしていたのでしょう。

竹本は自分の小さい頃からの夢である、寿司職人になりました。

一方で久田はなかなか売れないしがない作家。

成功とは言えませんでした。

竹本に小さい頃に作家になれると言われ、努力をしつつもなかなか成功しない自分を認められなかったのでしょう。

しかしそれが、サバ缶をきっかけに自分の過去を振り返って物語を書いたことで、吹っ切れたのでしょう。

いや、本人の中ではそれこそが作家として最も書きたかったことなのかもしれません。

現に、その本が成功しているのかどうかはこの映画の中では触れられていませんでした。

たった一夏の思い出でも、それがいつまでも人生の糧となって輝き続けることもあります。

今一瞬この時をどのように過ごしていくのか、そして過去の自分からの贈り物はなんなのか考えてみると、心温まる瞬間を体験できますね。

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