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あなたも夕日を?

山陰旅行三日目。
心はもちろん、なによりも身体の力が抜けていくのが分かる。

整体に行っても、美容院に行っても、マッサージ屋さんに行っても、「ずっと肩に力が入っていますね。」と言われる人生だった。
自覚がないものだから、「そんなことないと思うんだけどなあ」と思っていた。
必ず言わなくちゃいけない、身体を労わる接客のセリフなのかなとさえ思っていたくらいだった。
ところが、旅先で美味しいものを食べ、自然をずっと身近く感じ、ふにゃりと力が抜けた瞬間に、確かに今まで無意識に力が入っていたのかもしれない、と自覚したのだ。

夕日を撮る人と散歩中の犬

今日も一日、いろいろな場所へ行った。
ピザを食べ、プリンを食べ、お味噌汁を飲んだ。

ホテルへの帰り道、海沿いを走っている時に夕日が綺麗なことに気付いて、急遽浜辺で見ることにしたのだけど、そこにはたくさんの人が集まっていて、みんなそれぞれ、一緒に夕日を眺めていた。

ここにいる人はきっと心が綺麗な人たちばかりに違いない。
1人、虹やお月さまを見上げて見つめている人や写真を撮っている人を見つけた時にも、私はいつも同じことを思う。

映画のエンドロールを最後まで、静かに観ている時となんだか少し似ている。
話したこともない、知らない人たち。
他人と呼ばれる関係性。
だけど今日の夕日を同じように綺麗だと感じることができ、同じ場所で沈んでゆくまでずっと見つめた。
美しいものや心が動いた瞬間を、それぞれが、確かに一緒に、同じ空間で見ていた。
それは、お布団くらい柔らかく、温かい気持ちで心を満たしてくれる世界一優しい[共感]であるように思う。

夕日が海に沈んで、声をかけるでもなく、みんなそれぞれ家へ帰ってゆく。
犬の散歩中に立ち止まって夕日を眺めていたあの人は、今日の夕日が偶然に、一段と特別美しかったから写真を撮っていたのだろうか。
それとも、少しずつ違う表情の夕日を毎日撮って写真に残しているのだろうか。
どっちなんだろうね、と話しながら私たちも再び海沿いを走りホテルへ戻った。
夕日は海に沈み、辺りはもう暗くなっている。

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